OBLIVION編集部

架空のHR/HM専門誌OBLIVION編集部の公式noteです。文責:紀伊真(Kii …

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架空のHR/HM専門誌OBLIVION編集部の公式noteです。文責:紀伊真(Kii Makoto)

最近の記事

#017. シンガポール出身のWORMROTが紡いだグラインドコアの灯火。

はじめに今回紹介するWORMROTの新作だが、そのアートワークが清々しいほどの稲川淳二師匠(以下、最大限の親しみを込めて敬称略、淳二)のアレだったので、嬉しいやら楽しいやら、見るたびに身悶えしている毎日だ。 加えて、中身のサウンドも最高だったので棚ぼたもいいところである。 とっても気分が良いので、まずは敬愛する淳二の話からはじめたい。 皆さんは淳二が全国を廻るミステリーナイトツアーに1度でも参加したことがあるだろうか。 これは我が国では国民の義務みたいなものなので、未体験の

    • #016. 摩天楼オペラが体現した「もののあはれ」とビジュアル系の歴史。

      はじめに日本独自の音楽カルチャーと言えば、ヴィジュアル系(以下、V系)だ。 今さら説明するのも恐縮だが、その語源については、以下に引用する。 要は、X JAPANによってもたらされた音楽カルチャー、それがV系である。 そして彼らが日本市場で売れたからこそ、LUNA SEAやGLAY、L'Arc〜en〜Ciel、そして黒夢といったバンドがチャートを席巻したのだ。 一方で、賛否両論渦巻くムーブメントであったのも事実であり、ここでほんの少しだけ、V系の歴史を紐解いてみようと思う

      • #015. 1989年、VIPERがメロスピの価値観をアップデートした件について。

        はじめに1989年と言えば、日本では平成がスタートした年だが、世界的なトピックとしてはベルリンの壁が崩壊したことがまず挙げられるだろう。 また、中国では天安門事件が発生し、その負の歴史に未だ箝口令を敷く中国共産党の歪な姿も記憶に新しい。 ちょうど今、夏の参議院選が真っ只中の日本だが、本来政治とは、弱者を救済するために作られたシステムである。 そもそも人間は生物学的に強くない。 古来より、気候条件や貧富の差によってその生死が左右されてきたが、果たしてそれは今も似たようなも

        • #014. SEVENTH WONDERがSEVENTH WONDERであるべき理由。

          はじめに画家のフィンセント・ファン・ゴッホは1853年3月30日にオランダの小さな村で生まれた。 晩年は精神を病んでしまったとも伝えられているが、幼少期は家族間の齟齬もなく、ゴッホ本人も真面目で思慮深い少年だったそうだ。 世界的にも有名な画家であるし、すでにご存知の方も多いと思うので、彼の人生を事細かに書き綴ることは控えるけれども、少年期~青年期という多感な紆余曲折を経て、彼が32歳の頃に描いた「ジャガイモを食べる人々」には面白いエピソードがある。 当時、ゴッホは色彩理論

        #017. シンガポール出身のWORMROTが紡いだグラインドコアの灯火。

          #013. まんまとMORS PRINCIPIUM ESTの術中にハマってみるのも悪くない。

          はじめに巨匠、手塚治虫の作品には「W3」という曰く付きの漫画がある。 ちなみに、カワサキのバイクのことではない。 「W3」は「ワンダースリー」と読む。 まずはそのあらすじを紹介したい。 よもや現代の世相にも相通じるような内容だが、何が曰く付きなのかというと、この漫画には2つのバージョンが存在するということだ。 時系列としては、1965年の3月から「週刊少年マガジン」で連載が始まったのだが、諸事情によりたったの6回で打ち切りとなり、同年5月より「週刊少年サンデー」にて改め

          #013. まんまとMORS PRINCIPIUM ESTの術中にハマってみるのも悪くない。

          #012. ハンガリー出身、STARDUSTが目指したメロハー桃源郷。

          はじめに僕が敬愛する筒井康隆先生の作品に「最後の喫煙者」というものがある。 あらすじとしてはこうだ。 当初はあまり問題視されていなかった煙草が、やがて禁煙嫌煙として世の中から排斥されるようになり、果たして主人公は地上最後のヘビースモーカーとなってしまう。 ついに国会議事堂の頂きまで追い詰められた主人公だったが。。。 もちろんこの後はネタバレになるので止めておく。 ちなみに結末は相当なブラックジョークが効いていて痛快無比である。 このような「笑えるけど、笑えない」という厭

          #012. ハンガリー出身、STARDUSTが目指したメロハー桃源郷。

          #011. イタリア代表、LIONVILLEが体現したAORの伝統。

          はじめにイタリア人で知らない人はいないと言われるジュゼッペ・ガリバルディ。 簡単に言えば、1860年に赤シャツ隊という私設部隊を率いて両シチリア王国を滅ぼした功績により、イタリア統一を果たした英雄とされている。 恐らく、彼がいなければイタリアの統一はもっと遅かったかも分からないが、母国では空母の名前に使われるなど、歴史上の偉人としても名高い。 時は2022年、同じくイタリア出身のLIONVILLEが発表した5作目「So Close To Heaven」を聴いて、彼らこそ現

          #011. イタリア代表、LIONVILLEが体現したAORの伝統。

          #010. 34年前、QUEENSRYCHEは確かに革命を起こしたのだ。

          はじめに世の中には革命的と呼ばれる作品が多々ある。 音楽、特にヘヴィメタルに限定すれば、真っ先に思い浮かぶのが今回紹介するQUEENSRYCHEによる屈指の名盤「Operation: Mindcrime」である。 今から34年前の1988年に発表された本作は、コンセプトアルバムの金字塔としても知られており、何度も映画化の話が出ては消えていった傑作だ。 HR/HMファンにとっては、あまりにも有名な作品ではあるものの、こうして30年以上の時が経ち、改めてその重厚な物語を文字に

          #010. 34年前、QUEENSRYCHEは確かに革命を起こしたのだ。

          #009. 突如としてインドに現れたヘヴィメタルの化け物、BLOODYWOOD。

          はじめに日本列島にはいくつの島があるのか、ご存知だろうか。 政府の公式発表では、北海道、本州、四国、九州、沖縄本島を含め、その数、なんと6,852島である。 領土は先人の努力の結晶とはいえ、この数は半端じゃない。 ちなみに、本土を除いた6,847島については、全て「離島」としてカテゴリされている。 その中でも、人が住んでいる有人島はたったの416島。 それ以外の6,432島は無人島と呼ばれている。 無人島。 ああ、無人島よ。 これほどロマンを感じさせる日本語が他にあった

          #009. 突如としてインドに現れたヘヴィメタルの化け物、BLOODYWOOD。

          #008. アメリカンAORの大ベテラン、MARK SPIROが紡いだ音楽と人。

          はじめに本日紹介するMark Spiroは御年64歳の大ベテランだ。 日本で言えば65歳の定年を間近に控え、このまま定年後再雇用か、はたまた無職の年金生活か、老後の身の振り方を考える時期でもある。 そうして顕在化するのは、居住地域における自治会への関わりだろう。 Mark Spiroが住むアメリカ合衆国にそういった地域の町内会的な活動があるのかどうかは分からないが、日本では古くから組織化され、令和の今でも慣習化している。 今回は前書きとして、この自治会の問題に踏み込んでみた

          #008. アメリカンAORの大ベテラン、MARK SPIROが紡いだ音楽と人。

          #007. 北欧産クラシックAOR代表、HOUSTONがついに日本国内デビュー。

          はじめにHOUSTONのような、1980年代を起点とするクラッシックスタイルのメロディック・ロック、つまりは広義のAORを聴くと、思わず自分の人生がフラッシュバックしそうになってしまう今日この頃。 人生40年を越えてくると宗教者の名言も自然と胸に刺さってくる。 例えば、仏教のお釈迦様は次のような言葉を残しているので紹介しよう。 また、イエス・キリストも同じようなことを仰っている。 別にここで自己啓発をやろうとか、宗教的な話をしようってわけじゃない。 要するに「取り越し苦労

          #007. 北欧産クラシックAOR代表、HOUSTONがついに日本国内デビュー。

          #006. ANNIHILATORが「METAL」を再録して「METAL II」を出したワケ。

          はじめに音楽に限らず、映画やドラマでも、続編というのは製作側に大きなプレッシャーがかかるものである。 というのも、すでに前作でストーリーやキャラクターが確立しているので、必然的にそれを活かしていくしかなく、むしろそうでなければ続編とは呼ばれないからだ。 特に作品プロデュースの世界では、いかに続編を良いものにして人気シリーズ化していけるかというのが命題にもなっており、それがコンテンツの価値を高める常套手段でもあることは、紛れもない事実である。 果たして製作側が続編にどれだけ

          #006. ANNIHILATORが「METAL」を再録して「METAL II」を出したワケ。

          #005. 崇高にして孤高、YNGWIEの名演がもたらした旧ソ連の崩壊。

          はじめに本日はパナソニックの創業者であり、経営の神様とまでいわれた松下幸之助の名言から始めたいと思う。 日本全国津々浦々、21世紀の今になっても速弾きに憑りつかれているギターキッズには、あまりにも耳が痛くなるような言葉ではないだろうか。 さらに同じく実業家兼作家でもあったキングスレイ・ウォードによる名言も合わせて載せておく。 これは音楽に限ったことではないが、1つの作品が高く評価されるだけで、その人自身の評価もうなぎ上りになることなど、古今東西の歴史を紐解いても枚挙に暇

          #005. 崇高にして孤高、YNGWIEの名演がもたらした旧ソ連の崩壊。

          #004. ノルウェーの新人バンド、ZELBOが目指すAORプログレ摩天楼。

          はじめにイタリアの老舗モーターサイクルメーカーと言えば、MOTO GUZZIだ。 その歴史は第一次世界大戦直後の1921年まで遡る。 我が国のHONDAが初めてバイクを市販したのが1947年なので、いかにMOTO GUZZIの歴史が古いかお分かり頂けるだろう。 しかし、第二次世界大戦下では自社工場が軍需生産に切り替わり、主力製品であるオートバイを製造出来なくなるなど、歴史が長い分、MOTO GUZZIは紆余曲折を経て今に至っている。 代表モデルは、やはりV7ということにな

          #004. ノルウェーの新人バンド、ZELBOが目指すAORプログレ摩天楼。

          #003. よもやよもや、SOLSTICE RIDERがメロデスを再構築するかもしれない。

          はじめにさて、今日は僕の好きな短歌を紹介したい。 短歌はいいぞ。 解説すると、目を閉じて口づけを交わしたその瞬間は、周囲の音が聞こえないほど、2人だけの時間が流れていたけど、口づけを離した後は急に周りの音が一斉に聞こえ始めた、という初恋や恋愛の瞬間を詠んだ歌である。 この歌の作者は、京都大学名誉教授で細胞生物学者、永田和宏の妻。 驚くべきことに、永田一家は家族全員が歌人であり、すでに発表されている歌集も多いので目にしたことがある人もいるかもしれない。 特に僕はこの河野裕

          #003. よもやよもや、SOLSTICE RIDERがメロデスを再構築するかもしれない。

          #002. なぜVOLBEATはデンマークの至宝と呼ばれているのか。

          はじめに貴方は連立方程式を憶えているだろうか? ちょうど僕達が中二病を発症しかける頃に、学校の数学で習うアレだ。 やれ二元一次方程式だの、加減法だの、代入法だの、すでに忘却の彼方に記憶が吹っ飛んでいる僕のような大人もいるかも分からないが、定義としては以下のような内容である。 申し訳ないが、ナチュラルボーン文化系を自認する僕の脳では、いまいち理解が追い付かないのが実情である。 しかし要するに、連立方程式とは「互いに相関性がある式」というふわっとした解釈でもって、この場のお茶

          #002. なぜVOLBEATはデンマークの至宝と呼ばれているのか。