運命という名のもとに第4話

~妄想という名の短編小説~

第4話 『飾られた噂話』

あの日を境に……、私たちは毎日、登下校を共にする程に……いわゆる仲良しになった。周りの同級生が珍しく声をかけてくる。最近、美咲とつるんでいる私を見て、心配した装いを繕ってくる同級生がやけに増えた。私はいつも決まって言った。『大丈夫』

ちょうどあの日から1週間が過ぎた時だった。同じクラスの聡子が心配そうに駆け寄ってくる。

『空ちゃん。最近ね?美咲ちゃんと一緒に居るみたいだけど、大丈夫?』

またいつもと同じ会話だ。今まで気にかけてすらなかったくせに……。それらに、またいつもの言葉を発しようとしたその瞬間だった。

『美咲ちゃんってさ?実はね…。』
延々と続く美咲についての話は、あまりにも酷かった。友だちの恋人を何度も奪い取った話。やばいバイトをやっているらしいという話。仲良しだった友だちを死に追いやったという話。親から見捨てられ、今は家出をしている。等など。

そして、私は段々と……意識が遠のくような気分になっていった。その時だった。

『・・・っるさい。』
『うるさいよ!もういいから、ほっといてくれないかな?今まで、気に掛けてもなかったくせしてさ?私が美咲ちゃんと仲良くなった途端、何で、引き離すようなこと言うかな。それから、美咲ちゃんのこと、勝手なこと言ってんじゃないよ!美咲ちゃんの、何を知ってんの?それらの話ってさ?美咲ちゃんから聞いた話なの?違うでしょ!!勝手に噂話信じて、楽しんでるだけじゃん!!酷いよ。酷すぎるよ。次、私の前で、美咲ちゃんのこと……悪く言ったら、絶対に許さないから!』

さっきまで、ざわめいていた教室がシンとなるのを感じた。そして、その瞬間……自分が発言してしまった言葉たちに我ながらに動揺を隠せなかった。

『ご、ごめん。ちょっと、動揺して……。言い過ぎた。』

何故、謝っているんだろう。何も悪くないじゃない。なのに。。。

『いや。こっちこそ、ごめん。心配して言ってあげたつもりだったけど、迷惑だったよね。』

そう言って、聡子はやや冷やかな目をしたまま…、教室を出ていってしまった。そして、更なる冷やかな目たちがこちらに向いていることに気づきながらも……私はただ、ただ…立ち尽くしていた。

「何あれ?」「怖ぇーわ」「人がせっかく心配してやってんのにさ」……ざわめく声たちだけが…教室中を包み込んだ。

すでに……私はそれらに耐えられそうになかった。帰りたい。もう、嫌だ。だから、嫌だったんだ。こんな学校。粉々に崩れていくものを感じていた。そんな中で、一つの声が全てを打ち砕いた。

『黄昏ソ~ラちゃーん!来ちゃったよォ!!』

シルバーアッシュの髪を靡かせた美咲が、ざわめいていた教室の人をどけよ!とばかりに掻き分けてやって来た。

『美咲……ちゃ…ん。』

泣きそうな声に聴こえたに違いない。いや、むしろ、すでに泣いていたのかもしれない。私の逃げ出しそうなくらいに完全に折れた心にヒカリが射した瞬間だった。美咲の手が私の頭を撫でていた。

そして、周りの空気を感じた美咲が口を開いた。

『何があったかのか、知らないけどさ?もしも、今度また、ソラを泣かせるようなことした奴いた時は……あたしがマジで許さねーから、覚えとけ!!』

『おい、わかったのか?わかってんのか???って、言ってんだよ!』

美咲のキレた姿に、完全に教室ごと凍りついた。皆が小さく頷いている。その姿を見つめながら、美咲は私の手を引いて…教室から連れ出してくれた。

『ありがとう。美咲ちゃん。』
『いいって。』
『ほんと、ごめん。何か、私のせいで…。』
『何で、謝んのよ?何も悪くないじゃん。・・・むしろ、ありがとう。聴いてたし!わ・た・し♡嬉しかったよぉー♡』

完全に硬直した私を他所に……、美咲はこの上ないくらいの笑顔で私の頬を両手で挟んで笑ってみせた。その瞬間……、耐えていた涙が溢れ出した。久々に、嗚咽が漏れるほどに泣いた。そんな私の背中を優しく擦りながら…美咲は小さく「ありがとうね」と、何度も呟いていた。

こうして、私は流れていく青春という時間を感じていた。紛れもなく…今、私は凝り固まっていた心が徐々に雪どけしていくのを感じていた。突然の出会い。それは、私にとってかけがえのないものへと変わっていった。

詩を書いたり、色紙に直筆メッセージ書いたり、メッセージカードを作ったりすることが好きです♡ついつい、音楽の歌詞の意味について、黙々と考え込んで(笑)自分の世界に入り込んでしまうけど、そんな一時も大切な自分時間です。