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【目印を見つけるノート】243. デヴィッド・ボウイとリアリティ

きのう、顔写真を撮りに行ったのですが、珍しくアイメイクをしました。しながら、「トランスフォーマーみたいだ」と微笑しました。
メカの方ではありません。ルー・リードです。どちらにせよ、そこまで変わりはしませんが😅

きょうは音楽です。
いいえ、デヴィッド・ボウイです。
私の思うことは後ろの方に書きますので、ご存じの方は途中飛ばしてください。
※折々の曲をYouTubeから引用します。
※💿はアルバムタイトル、🎵は曲、🎦は映画です。

この前、『Moonage Daydream』をたまたま聴きましたので、
まずはそこから行きましょう。
🎵David Bowie『Moonage Daydream』(1972)


⚫デヴィッド・ボウイというアーティスト

デヴィッド・ボウイ(1947~2016)をモデルにした映画、『Stardust』の告知記事をきのう見ました。そして、京都新聞の記事。
同期しました。リンクは末尾に。

デヴィッド・ボウイは有名なので、あまり紹介しなくてもいいのかもしれませんが、簡単に。でも長い長い😅お覚悟を。

彼は1960年代、生地イギリスでミュージシャンのキャリアをスタートしました。そして、有名なダンサー、リンゼイ・ケンプに師事します。おそらく、それがなければTHE KINKSかあるいはPink Floydの路線を行ったのではないかと私は思いますが、舞台芸術家のもとで学んだことで、彼は演劇的な、フィクションの要素を多く取り入れる方へ進みます。
💿『DAVID BOWIE』、『スペース・オディティ』、『世界を売った男』『ハンキー・ドリー』

🎵David Bowie『Space Oddety』(1969)

ちょうど1960年代から、アメリカで月面着陸がなされた頃で宇宙というのが身近なテーマになっていたのですね。この曲にも『Major Tom』(トム少佐)という架空の宇宙飛行士が出てきます。

私などはこの辺りから入ったように思います(リアルタイムではありません)。
🎵David Bowie『Changes』(1971)

それから、彼はイギリスで出会ったギタリストのミック・ロンソンとともにアメリカに乗り込みます。彼はニューヨークで活躍していたアンディ・ウォーホルとその周りの人々に大いに興味を持っていました。アート(シルクスクリーンの作品群)もヴィデオも映画も音楽も巻き込んでいた、ウォーホルのファクトリーが煌めいて見えたのでしょう。すでに音楽では、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドというプロデュースの実例もありました。
しかし、ウォーホルとの対面はあまり芳しいものではなかったようです。その代わり、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのルー・リードとは親しくなりました。

そのアメリカで、ボウイはさらなる変容を遂げます。
自身を火星から来た宇宙人、『ジギー・スターダスト』に模して、いやそのものになりきって全米ツアーを行います。当時のミュージシャンにはあまり一般的ではなかったメイクにキラキラの衣装、中性的なイメージは人々の注目を集め、彼らは一躍人気を博します。そして『グラム・ロック』と呼ばれるようになります。
💿『ジギー・スターダスト』、『アラジン・セイン』など

🎵David Bowie『Ziggy Stardust』

映画『Stardust』はこの頃のボウイを描いているとのことです。

このあと、ルー・リードのソロ・アルバム、『トランスフォーマー』のプロデュースをボウイとミック・ロンソンで行ったりしています。
これはもう、超絶有名なナンバーですね。U2もライブで同じアルバムの『Satelite Of Love』と合わせて一節歌っていました。
🎵Lou Reed『Walk On The Wildside』

ただ、日夜ジギーになりきりすぎてしまったのでしょうか。ボウイは興業の看板を下ろすように、ジギーを止めます。

そこからボウイのさまよう日々が始まった、というと言い過ぎでしょうか。

💿『ダイヤモンドの犬』、『ヤング・アメリカンズ』、『ステイション・トゥ・ステイション』

音楽的には斬新なものも見られるのですが、イメージに関してこの辺りでは試行錯誤しているように見えます。盟友のミック・ロンソンもボウイのもとを去りました。
ジョン・レノンも参加したアルバムのこの曲を。後のトーキングヘッズを思い起こさせます。そうですね、彼の原点回帰への試行錯誤は、はからずも少し後のニューウェイブの先頭を切っていたように思います。

🎵David Bowie『FAME』

この頃のボウイはドラッグに耽溺して、ボロボロになっていました。彼はアメリカを去って、ベルリンに向かいます。ルー・リードもいっときベルリンに滞在していましたが、それも行く理由だったのかもしれません。
そこで物議を醸す政治的発言をしたこともありましたが、ベルリンが旧東ドイツで複雑な情勢だった背景もあります。私は判断しません。

💿『ロウ』、『英雄夢語り』、『ロジャー』

🎵David Bowie『Breaking Glass』(1976)

壊れるガラス、というのはボウイの心境をよく表しているように思えます。自分が創り、人々に増幅された像を壊すような気持ちがあったのではないかと思うのです。

この頃のベルリンをよく表している映画に『クリスチアーネF』があります。檻だらけの動物園のようなベルリン。文字通りツォー駅=動物園駅というのが出てきます。閉塞的な空気の中でドラッグに溺れる少女を描いていますが、その中でボウイはクールでヒップなヒーロー=スターとして出てきます。
閉塞空間の中のきらめく星。

🎵David Bowie『Heroes』(1977)

この曲は「1日だけならヒーローになれる」という歌詞がとても印象的ですが、曲調はあとあと続くオルタナティブへの流れの、やっぱり先頭にありますね。

彼は、「大きな流れを作ろう」とか「先駆者になってやろう」と狙っていなかったと思うのです。彼なりの表現活動の試行錯誤や葛藤が新しい波の種になったのだろうと。
特に創造について言えますが、狙ったものは長続きしない気がします。

それから、彼はアメリカに戻り今度は電子楽器もフューチャーしたポップなチューンで世に打って出ます。1980年に入ろうかという頃です。
💿『スケアリー・モンスターズ』、『レッツ・ダンス』

🎵David Bowie『Ashes To Ashes』(1980)

このボウイはもう宇宙人ではありませんね。これ以降、彼は精力的にアルバムを発表しますが演劇的(シアトリカル)なものではなく、シンプルに音楽へシフトしました。

🎵David Bowie『Let's Dance』

『レッツ・ダンス』は、当時の洋楽ファンには結構な衝撃でしたよ。芸風が変わったのかぐらいの変化でした。ただ、当のボウイはMVを見ても楽しそうでした。音楽の大切な要素です。分かりやすい曲でもボウイ節は健在でしたし、いろいろなアーティストとの共演もして、20世紀末までは彼の最も豊かな時代だったと思います。
💿『ティン・マシーン』、『ティン・マシーンⅡ』、『ブラック・タイ・ホワイト・ノイズ』、『アウトサイド』、『アースリング』など

ジギーは去りましたが、過去に彼が創った世界、試行錯誤した道筋はフォロワーやファンによって熱烈に愛されていました。
そして、映画という媒体で異なるキャラクターを演じる機会が増えました。シアトリカルな部分はそちらで生かせたでしょう。

🎦『地球に落ちてきた男』、『戦場のメリークリスマス』、『眠れぬ夜のために』、『最後の誘惑』、『ビギナーズ』、『ラビリンス/魔王の迷宮』、『ハンガー』、『バスキア』、『ツイン・ピークス-ローラ・パーマー最期の7日間』

21世紀に入って2枚のアルバムを出してから、ボウイの活動にはやや長いブランクが空きました。
💿『ヒーザン』、『リアリティ』

🎵David Bowie『Reality』

この動画だけ、公式でなくてごめんなさい。
2004年、最後の来日公演ではないかと……😢
このツアーで体調の異変が起きて、そのあと長い休養に入るのです。

2013年、彼は沈黙を破ってアルバム『The next day』を発表します。
🎵David Bowie『Where are we now?』(2013)

センチメンタルな曲ですね。ちょっとさびしい。

2016年1月10日、デヴィッド・ボウイは亡くなりました。享年73歳。
次のアルバムのために、曲を書いていたとのことでした。


⚫フィクションとリアリティ

"ぼくは正しかったし、ぼくは間違っていた
いま、ぼくは自分が始めたところに帰ってきた
現実という肩越しに
見たことは決してなかったんだ"
(『Reality』より一部引用、意訳さわ)

ボウイは途中まで、フィクションをいちばん大事にしていました。
それはどうしてだろうなって、ずっと考えていました。それはメイクや衣装という表面的なことではなくて、自分をまるごと変えてしまうような作業でした。

私たちはイメチェンをします。
化粧を工夫したり、アプリで写真を加工したり、髪型や色を変えたり、着るものを変えたり、カラコンを付けたり、ピアスを開けたり、整形したり、タトゥーを入れたり……ボウイはそれらのいくつかはしていたかもしれませんが、それは本筋ではありません。

彼には表現したいものがあって、上のようなことはその手段でした。

彼はフィクションをリアリティにしようとしていました。

ここで私はボウイがアンディ・ウォーホルとすれ違ったことを思うのです。

それはたいへん象徴的でした。

なぜなら、ウォーホルはリアリティをフィクションにするアーティストだと私は受け止めているからです。
有名な『キャンベル缶』をはじめ、ハイヒール、プレスリー、マリリンなどをウォーホルは『イコン(アイコン)』に変えてみせました。イコンは象徴、フィクションです(★)。
私はウォーホルのフィルムをいくつか見たことがありますが、やはり現実をデフォルメしてフィクションにしている面があると感じましたし、ファクトリーの女性たちにしてもそうです。彼女たちは生身の人間だけれど、ファクトリーではイコンだったように思います。

何より、当時アメリカはベトナム戦争で殺伐とした空気がありました。いつ徴兵になるか志願するかというのが切実な問題でした。
その空気が、ウォーホルの作品にはあまり見られないように思います。逆に、リアリティをコラージュしていたともいえます。ベトナム戦争は切り取られていたのかもしれません。

リアリティをフィクションにする。
フィクションをリアリティにする。

ボウイとウォーホルがすれ違ったのはその交差点だったのかもしれませんね。

どちらが上などではないですが、フィクションをリアリティにする方がよりキツイのかなと、ボウイを見ていると思います。そこから脱皮するのにもたいへんな労力が必要だった。でも音楽にシンプルに向かい合って、演じることもして、たどり着いたのが『Reality』だったのだと思うと、私は少し晴れ晴れした気持ちになるのです。

現実を肩越しに見ていませんか。

最近は特に響いてきます。
ボウイはスターダストではなく、スターです✴️

けさから、生活しながらガーッと打ちましたので不備があるかもしれません。これから小説も打たなければいけないのに、やっちまったな~😱

他のコーナーはお休みします。

それではまた、ごひいきに。

尾方佐羽
(おがたさわ)

リンク
『デヴィッド・ボウイを描いた映画『Stardust』 本編クリップ映像3本公開』
http://amass.jp/141926/
『デヴィッド・ボウイ「京都に家」説はウソだった 「都市伝説」の真相 世紀のスターが通った謎の師とは』
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/429512?page=2

★象意がもたらすものについては、記号論であるとかボードリヤールの『シミュラークルとシミュレーション』を紹介した方がよいかもしれませんね。

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