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【目印を見つけるノート】150. ニューヨークのロミオとジュリエット

きょうは、パリの本屋さんに触発されてか、階段の一角に本を積むことに決めて、ああでもない、こうでもないとやっていました。

というか、また図書館で廃棄本をいただいてきたのでした。きのうはシェイクスピア全集(白水Uブックス)を10点です。
10点までなのです。→それはそうでしょう。
この前の分もそうですが、置き場所を作らないわけにはいかなくなったのです。

タイトル、見えますか。
メジャーではないタイトルが残っていたのです。それは私も望むところですので、よかったです。『リア王』、『ハムレット』、『ロミオとジュリエット』、『真夏の夜の夢』、『ヴェニスの商人』あたりは既読です。原文訳ではなく、絵本・演劇・映画・テレビの劇などで読んだつもりになっているものもありますけれど(苦笑)。


⚫ルー・リードを訳してみました

そこからがたいへん。
『ロミオとジュリエット』からルー・リードの『Romeo Had Juliette』という曲を思い出したのです。1989年の『New York』というアルバムに入っている曲です。訳してみようと思いました。

……挫折寸前でした。

出だしはよかったのです。アレン・ギンズバーグの『吠える』みたいなのかなって。Twisted starsとか、ちょっとそんな感じで。しかし、甘かったです。スラングはあるし、古語もあるし、主語も飛ばすし、訳しながら「うわあ、やらなきゃよかったかも」と何度思ったことでしょう。

アレン・ギンズバーグさんを訳した諏訪優さんはとてつもなかった。
でもここで止めたらルー・リードさんに申し訳が立たない。
シェイクスピアさんにも叱られる。
などと妙なゼンマイを巻いて、何とか訳しました。

ギンズバーグさんに敬意を表して、改行を極力なくしました。

このアルバムを何気に聴いていた頃は、ロマンティックな歌詞なのだろうと思っていました。それはまるっきり見当違いだということが訳していくうちに分かりました。

こんな感じです。


Romeo had Juliette

ねじくれた星たちの間にある 間違った地図の 計画された航跡をつかまえて ニューヨークにコロンブスがやってきた 東洋と西洋の間の そのまた狭間で 彼は 革のベストを身にまとった彼女を求める

大地が軋んで 身震いしている

彼の耳のダイヤモンドの十字架は 恐怖を免れるお守り 誰かのレンタカーに魂を置き忘れてきたから 彼はズボンの中に なくしたはずのごちゃごちゃを きれいにするモップを隠している やわらかなジュリエット・ベルの人生のなかへ

そして ロミオはジュリエットを乞い求めた
そして ジュリエットもロミオを乞い求めた

ロミオ ・ ロドリゲスは肩をいからせ 主に罰当たりなことばを吐いて 束ねた黒髪をくしけずり ひとりぼっちの部屋で思いをはせる 彼のベッドの脇にある洗面台は鼻をつまむような匂い それからまぶたの裏で 彼は彼女のかぐわしい香りを嗅ぐ よく通るその声はまるで鐘の音のよう


外の通りは蒸し風呂だ クラックの売人は 誰かがものにしたウージー機関銃の夢を見る 
賭けてもいい 利き腕を背中で操っても その照準の光を打ち抜いてやれると

小柄なジョーイ・ディアスは言うんだ

兄弟 もうひとつくれよ ダウンタウンのやつらは まるでおよろしくないぜ あのイタリア人たちに思い知らせてやらないと ハーレムで警官が命を落としたが やつらはそれが警告だと分かっちゃいない 彼が頭をぶっぱなされたとき俺は小躍りしたぜ

そして ロミオにはジュリエットがいた
そして ジュリエットには彼女のロミオがいた

マンハッタンをごみ袋に詰め込もう そこにはラテン語でこう書かれている "日々たわごとを並べるのは厄介だ"  マンハッタンは岩のようにずぶずぶと 汚れたハドソン川に沈んでいく なんてことだ それを本にした人びとは まるで古代ローマのようだという

香りの主は 彼をしっかりと太ももに挟んで 彼の眼を燃え上がらせる
そして何かがぱっとちらつく
次の瞬間には消えて なくなった

(曲紹介のための引用 意訳さわ)


あれ……物騒でした。

これは、ギャングの男性が惚れた女性に裏切られて殺されてしまうという歌詞でした(おそらく)。『勝手にしやがれ』(映画)のようだと思いましたが、おそらくこのような事件が当時本当にあったのだろうと推察します。それを視点を変えて淡々と詩に描いていくルー・リードさん、ストーリーテラーだと改めて感じ入りました。

実は、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのときからクールでカッコいいところが好きでしたが、テンション高くは聴けなかったのです。何を歌っているのかおぼろげに分かることがたまにあって、それがヘヴィなのです。
ただ、ご本人もわざと暗くしてやろうというのではなくて、痛いリアルを詩的に表現しようと思われていたのでしょう。
詩人だということです。

8月の最後の日、宿題を徹夜でしている学生のようでした。ふさわしい課題でしたが、難しいのはしばらくはいいかな。


⚫お籠りクラフトとばら

『Romeo had Juliette』の歌詞にある、ダイヤモンドの十字架ですね。本物ではもちろんないですが。


歌のなかには、結構なヒントがあるものです。

ばらはこの辺りを剪定する予定です。

それではまた、ごひいきに。

おがたさわ
(尾方佐羽)

追伸 これもスワンプというものでしょうか。

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