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歳時記を旅する29〔立秋〕中*立秋や宙に名を書く名付親

佐野  聰
(平成五年作、『春日』)
 子供の名前は、胎児の頃に女の子だとわかったときから考え始めた。
まずは姓名判断の本で、苗字の画数に相性の良い画数を知る。
候補の名前を選んだら、苗字に続けて縦書きや横書きに書いてみて、バランスを見る。
名前は個体識別の記号であるから、誰もが一読して明解にわかるものでなくてはならない。
声に出して苗字から何度も読んでみて発音の調べも確かめる。
去来が残した芭蕉の教えにある「先師の、句調はずんば舌頭に千転せよと有しは、ここの事也」(向井去来『去来抄』一七〇二)の如くである。
 娘が誕生してから、顔を見て、その名でよいか句のようにもう一度推敲した。誕生は八月七日、立秋の午後だった。

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和四年八月号「風の軌跡ー重次俳句の系譜ー」)


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