鎖国と呼称問題~映画『LIFE』解説4
さて、映画『LIFE』(邦題:ライフ)の登場人物紹介シリーズも残るは二人。
今回は、生物学者のヒュー・デリー(英国)と、エンジニアのショウ・ムラカミ(日本)を解説しようかな。
待ってました、真田広之!
ちなみに他の搭乗員たちはコチラ!
登場人物紹介シーンも、観といたほうがええな。
エカテリーナ司令官は、エアバイクをしていたデヴィッド・ジョーダンとランニングマシーンで走ってたミランダを踏まえて、地上の子供たちにこんなことを言ったね。
「これを見てるあなたたちは、宇宙トライアスロンの目撃者ね」
待てや。
トライアスロンっちゅうのは「ラン・バイク・スイム」の3つやろ。
2つしかないやんけ。
その通り。
だから7歳のレイラちゃんはエカテリーナ司令官に突っ込んだんだ。
「トイレはどうしてるんですか?」
へ?
なんでトライアスロンとトイレが関係あるの?
エカテリーナ司令官は「溺れて水死」するよね?
しかも「トイレ」みたいな宇宙服の中で…
と、トイレ!?
確かに背中のパックが貯水槽みたいだけど…
もうこの自己紹介シーンの時点で、彼女の運命は決まっていたんだ。
というか…
「エカテリーナ」という名前が付けられた時点で彼女の最期は定められていたんだよね。
彼女のモデルとなったエカテリーナ2世も、トイレの最中に心臓発作で倒れているから…
な、なんですとォ!?
自分から「トライアスロン」という言葉を出して「水場に関する事故」を想起させたエカテリーナ司令官に対し、レイラちゃんは鋭く突っ込んだ。
前回のアラン君同様、この小さなインタビュアーたちは油断ならないね。
そしてまたしてもエカテリーナ司令官は笑顔のままフリーズしてしまった…
そこで代わりに答えるのが、日本人のショウ・ムラカミ。
ショウ・ムラカミは、実際の「宇宙トイレ」をカメラに向かって説明する。まさに「ショウ・タイム」だ。
「漏斗(じょうご)、管(くだ)、吸引器…。ここISS(国際宇宙ステーション)でのやり方は、地球上にいる君たちのやり方とほとんど同じ」
ウケるよね。もうわかったでしょ?
モデルになった人物と、真田広之演じるショウ・ムラカミの役割が…
ぜんぜんわかりませ~ん!
「SHO(ショウ)」とは「SHOGUN(ショウグン)」の「SHO」なんだよ。
そして彼が紹介してみせた「宇宙トイレ」とは、彼の「死に様」の暗示であると同時に「長崎の出島」の比喩でもあるんだ。
「出島」というシステムは、西洋文明の「吸引器」みたいなもんだからね。
「扇形の制限区域」が西洋文明を集める「漏斗」で、本土とつながる唯一の通路である「橋」が「管」にあたる…
しょ、将軍!?出島ァ!?
長崎の出島を作ったのは第三代将軍「徳川家光」だ。
扇形のデザインも家光の指示だったと言われている。
第三代将軍 徳川家光(1604‐1651)
長崎に出島を作り…
日本での布教活動を目論むイエズス会を追放し…
カトリックを国体への脅威とみなし、スペイン・ポルトガルと断交し…
異民族への布教にこだわらなかったカルヴァン派のプロテスタント国オランダとの貿易体制を確立し…
キリスト教を禁教としてキリシタンを厳しく処罰した徳川家光が、真田広之演じるショウ・ムラカミの役割なんだよ。
そういえば…
ショウと将軍徳川家光って「ヒゲの形」がそっくり…
真田広之がロン毛だったのも、チョンマゲを意識したものだったんだ…
ホンマやな。
せやけど家光の治世って、メイフラワー号によるピルグリム・ファーザーズのアメリカ入植の時期と重なるんとちゃう?
その通り。
家光の鎖国体制の確立と、カルヴァン主義のピューリタンによるプリマス植民地の設立は、まったく同じ時期なんだ。
だからISSの乗員6名の中に日本人が入ったんだね。
将軍家光はカルヴァン主義のオランダ人と手を結んだ。だけどキリスト教自体は厳しく弾圧し、国内へ入って来ることを徹底的に拒んだ。
この背景がショウ・ムラカミというキャラクターの行動原理となっている。
確かにそうだ…
出入口を閉鎖してエイリアンが入って来ないように頑張ってたもんな…
せやけど、防ぎきれんかったんや…
ひとつだけ残った出入口から侵入を許してもうた…
彼がカプセルに籠るのも象徴的なシーンだよね。
あれも「鎖国」のメタファーだ。
オランダとの交易は認める傍ら、キリスト教だけは絶対に国内へ入れないようにした徳川家光の姿だったんだよ…
うひゃあ!
あの時カルビンがカプセルの中へ侵入できなかったのも歴史通りじゃんか!
そして「ショウ・ムラカミ=徳川家光」説を決定づけるのが、彼に子供が誕生するシーンだ。
奥さんである「カズミ」が「メイ」を出産するところが中継されたよね。
実はあの「カズミ」とは…
<続きはコチラ!>
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?