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歌集『バターロールがまた焦げている』(秋山ともす氏)を読む。

文学フリマで購入した歌集のうちの一冊です。


概要

帯と、帯の背に「第一歌集」とあります。

収録されている短歌は、
「さびしさ」や「不在」が軸になっている歌が多いように感じました。

喩やレトリックが上手く、内容のかなしさが客観的な視線で消化かつ昇華されているように感じました。

今回は特に喩や見立てが上手いと思った短歌をご紹介します。


五首選

この夏の最後に句点を打つ役として砂浜に残った浮き輪

44ページ


浮き輪の丸さと句点の◯を関連させて、なおかつ「終わり」という共通点で収斂させた一首です。

何気ない一首に、構造の複雑さや工夫を感じます。

クラッカーを放つ仕草で傘をさす子らに拍手で雨が応える

56ページ


「クラッカー」と「拍手」の喩が二つありつつも、内容が破綻していない上手さがあります。

その上、それぞれの喩が上手いです。


無果汁のジュースと同じ 優しさがなくても優しい人にはなれる

66ページ


内容に納得した一首で、無果汁のジュースを見る度に思い出しそうです。

「にはなれる」に含みもあって、良いと思いました。

朝焼けを引っ張る歯車のように回りはじめている観覧車

88ページ


観覧車の形と動作を活かした一首です。

夜景で詠まれがちの観覧車で、朝焼けとの取り合わせで詠まれている点も面白いと思いました。

あたらしい鍵は栞の役割でくらしの続きとしてドアが開く

108ページ

「栞」が喩で使われている点に惹かれて紹介しました。

ドアの四角い形が本のようだという点も、栞が喩で使われていることで暗に表現されています。

そして「くらし(という物語)の続き」という喩も、上手さと内容の良さがあります。


リンク

BOOTHで通販しているようです。

第一歌集『バターロールがまた焦げている』 | 秋山ともす

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