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そのサッカーを疑え!

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#久保建英

久保建英。トップ下より右ウイングの方が「ファンタジスタ」に見えるという現実

久保建英。トップ下より右ウイングの方が「ファンタジスタ」に見えるという現実

 チャンピオンズリーグ(CL)、ヨーロッパリーグ(EL)を軸とする欧州サッカーを眺めていると、ウイングの時代を迎えていることを実感する。サイドアタッカーがウイングバックのみの、5バックになりやすい3バックが占める割合は全体の3割弱。サイドアタッカーを両サイドに各2人、置いて戦うチームは7割強を占める。その中で目に止まるのは、サイドバック(SB)ではないサイドアタッカーが、サイドハーフと言うよりウイ

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大卒の三笘薫〔25)と高卒の久保建英(21)。4学年差の両者に見る、大卒選手が急増する日本の問題点

大卒の三笘薫〔25)と高卒の久保建英(21)。4学年差の両者に見る、大卒選手が急増する日本の問題点

 ブライトンはプレミアで現在8位。勝ち点は52だ。5位で勝ち点54のトッテナムホットスパーより消化試合が2試合少ないので、実際の順位はもう少し上である可能性がある。チャンピオンズリーグ(CL)出場(4位以内)は難しそうだが、ヨーロッパリーグ(EL)出場は見えている。

 UEFAランキングで首位を行くプレミアに対して、スペインリーグ(ラ・リーガ)は2位だ。そこでレアル・ソシエは、現在5位のビジャレ

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「久保建英」に学べ。慎重さが求められる少年選手の報じ方

「久保建英」に学べ。慎重さが求められる少年選手の報じ方

 久保建英が正念場を迎えている。今季途中、マジョルカの監督にハビエル・アギーレが就任したとき、その出場機会は増すと思われた。日本代表監督を半年間、務めた経験があるアギーレに、スペインでよく見かける日本人選手への偏見はないはずだ。久保にとって歓迎すべき監督であるかと思われた。

 ところがアギーレ就任以降、久保の先発は8戦中わずか2試合に終わる。ルイス・ガルシア・プラザ前監督時代より出場機会を大きく

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コメント力の高いアギーレの久保評を耳にすると、日本代表監督復帰を願いたくなる

コメント力の高いアギーレの久保評を耳にすると、日本代表監督復帰を願いたくなる

 マジョルカは先月末、降格の危機にあるチームの立て直しを図るため、ルイス・ガルシア・プラザ監督を解任。後任にバスク系のメキシコ人、ハビエル・アギーレを迎えた。

 チームには日本人が期待する久保建英がいる。元日本代表監督が、日本メディアにサービス精神を発揮したとしても不思議はない。現地から送られてくる監督の久保評は確実に増えている。日本のメディアにとっては歓迎すべき話である。久保が、ページビューが

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久保建英の成長スピードはなぜ鈍ったのか。輝ける三笘薫と比較してみた

久保建英の成長スピードはなぜ鈍ったのか。輝ける三笘薫と比較してみた

 バルセロナの下部組織でプレーしていた久保建英が、FC東京、横浜F・マリノスを経由して、レアル・マドリーへ移籍したのは2019年6月。日本代表にデビューしたのも、同時期に行われたエルサルバドル戦だった。

 いまから3年近く前の話になる。ほどなくしてマヨルカにレンタル移籍。思いのほか出場機会に恵まれないその姿を見て、こちらは時のマヨルカの監督を恨んだものだ。

 とはいえ一方で、その時18歳になっ

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久保建英に傾けたくなる現実的な視線

久保建英に傾けたくなる現実的な視線

 レンタル元であるレアル・マドリー戦。久保建英は先発出場を飾ったものの、前半の終わりに故障したようで、ハーフタイムでピッチを後にすることになった。しかし、この怪我がなかったとしても、後半早々に交代の憂き目に遭っていたのではないか。前半45分間のプレーを評価するならば、10点満点で6点に届かない低調な出来映えだった。レアル・マドリー復帰に向け、存在をアピールするまたとない好機だったが、それはまた一歩

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久保建英。「フィジカル面の改善」より重要なチェックポイント。目指すはチャナティップ

久保建英。「フィジカル面の改善」より重要なチェックポイント。目指すはチャナティップ

 フィジカル。サッカー界で最近、頻繁に使用されている外来語を挙げるならば、この言葉が一番ではないか。とりわけ好んで使用しているのはテレビに出てくる解説者。指導者講習会等で普通に使われているのだろう。実況アナ氏も、それにつられるように一緒になってフィジカルを使う。影響力の強い人が発すれば、流行が広がるのは当然だ。ネットの記事でも頻繁に見かける。見出しやタイトルにまで使われる。フィジカルを見聞きしない

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久保建英に望まれる「トップ下幻想」からの脱却

久保建英に望まれる「トップ下幻想」からの脱却

 右ウイング、左ウイング、真ん中(トップ下)。たとえば4-2-「3」-1なら、「3」のどこでもできる多機能性が、久保建英の魅力の一つだ。それがなければ、出場機会はその分、減っていた可能性が高い。多機能性が久保の成長を後押ししている印象だ。

 その中でも一番やりたいポジションについて久保は、何日か前にWOWOWで放送された、彼自身の特集番組の中で、こう述べていた。

「トップ下」。

 しかし、一

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久保建英。目指すべきは左右両刀遣いの強シューター

久保建英。目指すべきは左右両刀遣いの強シューター

 レンタル移籍先がビジャレアルからヘタフェに移った久保建英。1月11日に行われたエルチェ戦がデビュー戦となった。登場したのは後半19分で、ポジションは右ウイングというかサイドハーフだった。評価するならば、10段階で6.5と言いたくなる、上々のプレーを披露した。

 昨季プレーしたマジョルカは2部に降格。今季移籍したビジャレアルは現在4位と、チャンピオンズリーグ出場圏内を堅持する。そして年明けに移籍

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久保建英は他のウイングとどこが違うのか。いっそう評価を上げるために必要なものは

久保建英は他のウイングとどこが違うのか。いっそう評価を上げるために必要なものは

 久保建英は、開幕2戦目のエイバル戦、3戦目のバルセロナ戦で、サムエル・チュクエーゼと交代で右ウイングの位置に入った。

 内(真ん中)に切れ込み、あわよくば左足でシュートを狙うか、タテに進出し、折り返しを狙うか。「左利きの右ウイング」が選択するプレーは、大きく分けて2つある。

 どちらかが苦手なら、プレーはどちらかに偏るものだが、久保はそれぞれを均等にこなす。つまり進行方向に偏りがない。対峙す

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ビシャレアルの元大エース、リケルメと久保建英。サッカーの変化を語る格好の題材だ

ビシャレアルの元大エース、リケルメと久保建英。サッカーの変化を語る格好の題材だ

 レアル・マドリーとバルセロナ。アトレティコ・マドリーが続き、セビージャとバレンシアがそれを追う。スペインリーグでその次に位置しているのがビジャレアルだ。今季の成績は5位。チャンピオンズリーグ(CL)では、2005-06シーズンのベスト4が最高位だ。

 その時、準決勝を戦った相手はアーセナルで、第1戦(アウェー)の結果は0-1だった。第2戦は後半終了間際まで0-0。合計スコア0-1で推移していた

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久保建英。右足を鍛え「両利き」のアタッカーを目指せ

久保建英。右足を鍛え「両利き」のアタッカーを目指せ

 日本サッカー界にとって、ここ最近で一番、喜ばしいニュースは、レアル・マドリード戦で魅せた久保建英(マジョルカ)のプレーだろう。

 6月24日。ソン・モッシュで行われたこの一戦。ハイライトは後半17分に訪れた。

 相手陣内に入ったところで、ガーナ代表歴のあるMFイドリス・ババから横パスを受けた久保は、2、3歩ドリブルを交えながら、スペイン人の右ウイングバック、ポソの鼻先にパスを送ろうとした。こ

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R・マドリー戦。レガネスのアギーレがマジョルカの監督だったら久保建英はもっと活躍した

R・マドリー戦。レガネスのアギーレがマジョルカの監督だったら久保建英はもっと活躍した

 レアル・マドリーに0-2。マジョルカは現地時間24日に行われたこのアウェー戦で、順当負けした。身贔屓するわけではないが、0-2のスコアで済んだ一番の理由は、久保建英の存在と関係する。彼がいなければ、試合はもっと一方的になっていたと思われる。

 マジョルカのビセンテ・モレーノ監督は、シーズンのある時まで、そんな久保を先発で積極的に使おうとしなかった。その通算1753分という国内リーグの出場時間は

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“ファイナリスト”への道険し。欧州組増加も喜べぬ、日本サッカー界が憂慮すべき誤算

“ファイナリスト”への道険し。欧州組増加も喜べぬ、日本サッカー界が憂慮すべき誤算

 リバプール対アトレティコ・マドリー戦が劇的な展開だっただけにチャンピオンズリーグ(CL)の中断は惜しまれる。しかし、アンフィールドで行われたその第2戦を振り返るならば、こちらの観戦モードは、延長後半8分、南野拓実が出場したことにより一転することになった。

 瞬間、日本人であることを意識してしまった。大舞台に日本人選手が立つ姿を見て、誇らしい気持ちになったものだが、複雑な思いも去来した。

 近

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