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あしがつめたい、よる。

真冬の夜のあるあるだけれど。

うとうととはしているけれども、
足先がキンキンに冷えてしまって、全然寝付けない。

あしが、つめたい。

ベッドのなかで
足と足をモジモジと絡ませたり、足先どうしをスリスリと擦らせたり、グーパーグーパーと足の指たちを動かしてみたりしても、びくともしない。

あしが、つめたいよぅ。

お風呂上がりでぽかぽかとしていて、それでも厚めのルームソックスを履いてはいたけれど。明日の準備だ、グラス洗ってなかった、髪の毛乾かさないと…と家中をうろうろ、うろうろ、ちまちま、ちまちま、としているうちに足先が廊下の冷たさを引き揚げて、そのままになってしまった。

足先が冷たくて眠れない、といのは存外に辛いものがある。
『さみしさ』にジンジンと噛みつかれているみたいで。
気になって気になって、仕方がない。

つめたい、ねれない、さみしい。

たまらず体育座りのように、足を抱えるように折り曲げ、手のひらで足先をさする。つめたい。ほんとに床みたいな冷たさだ。

さすったり、揉んだり、足指と手指を恋人つなぎしたりして、なんとかして温めたいのだけれど、びくともあたたかくならない。

眠れないから何度も寝返りをうってしまう。
足先の冷たさを引っ張って、手先も冷たくなってきた。
いったん足先はあきらめて、両の手のひらを擦り合わせる。

新聞配達のバイクの音が聞こえる。
寝付けないまま、もう、かれこれ。

「あしがずっと、つめたい」
頭までベッドに潜り込んだまま、声に出してつぶやいた。

そうしたら、

「かの地で暮らす人々は、毎夜こんな思いなのだろうか」

考えが、ぽつ、と湧いた。




インフラが使えず、真っ暗で、防寒具にくるまって足を、手を、肩を、身体とこころをさすりながら、眠れぬ夜を抱いているのだろうか。

いいや、
東京よりもずっと寒い地、冷たさは比ではないだろう。

何を哀れんでいるんだろう、何様だというの。
何もしてあげないくせに。

つむったままの目から、じわり、と涙が溢れた。
あしがつめたいよる、つめたいまま、それでも眠るのだろう。
安心なんかできないはずだ、あしがつめたいままで。

涙がしおしおと湧いて、枕に向かって流れていく。


ごめんなさい、と思ってしまった。



涙を流したからなのか、眠れない焦りが薄れていった。
すう、すう、と寝息に近いリズムでの呼吸をしている。


足先はまだ、つめたいまま。

だけど、手が伝えた熱が、ほんのりしている。
熱って、伝わるものなんだ、と思う。


あたたかくはないけれど、さみしさに至る冷たさはほぐれた。
ああ、このあたたかさ、涙のそれとおなじかも。


そう思ったところまで覚えている。



-20230111-

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眠れない夜に

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