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『一度きりの大泉の話』(大泉本)に衝撃を受けて、それ以来萩尾望都批判をやっていますので…

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『一度きりの大泉の話』(大泉本)に衝撃を受けて、それ以来萩尾望都批判をやっていますので、『一度きりの大泉の話』をお読みになってない方はピンとこない記事もあるかと思います

最近の記事

「宝石の国」完結によせて

(ネタバレ全開です) 本当に巷の予想通り108話で完結しましたね 第九十九話「始まり」でフォスと石ころが語り合うシーンがあるのですが という会話が唐突に始まるんです あまりに脈絡がなさすぎて、これはフォスの未来の暗示、つまり、フォスは最終的に太陽と合体し白色矮星になって、宇宙の終りまで石たちに歌を聞かせることになるのだろうと私は考えました。だから最終回でそのシーンが描かれると推測していたのですが、まったく描かれなかったですね(笑) 代わりに、新フォスの欠片が別の宇宙に入

    • 「BEASTARS」のラストがああなった理由

      (「BEASTARS」のネタバレ全開です) 「BEASTARS」の件はマンガについてネットであれこれ語るという、私が何十年も細々と行ってきた中で、衝撃度が最大の事件なので、「ポーの一族」の連載が終わったら書く予定だったのですが、諸事情から、今書いちゃいます 「BEASTARS」もアニメから入ったマンガでした。「宝石の国」のアニメを制作したオレンジが作っていたため、とりあえず観てみようと思って視聴したら、たちまちのめり込んだという、「宝石の国」と同じパターンです。 当時、先

      • 「イムリ」(三宅乱丈)

        (「イムリ」のネタバレしてます) X(旧Twitter)をいろいろ漁っていたら、コミックビーム展に行った方の記事が目に入って、おおおっ!!!と感動したので、これ書いてます 萩尾望都作品目録の管理人さんが載せている画像ですが、差しさわりがあるようだったらコメント下さい、すぐ削除します コミックビーム展では各漫画家さんたちがお勧めする本のPOPが飾られているようで、これは三宅乱丈さんが描かれたもののようです ここで、「ワン・ゼロ」と「Sons」を挙げてくるあたり、三宅乱丈さ

        • 「ぱふ」三原順評論小特集

          (ポーの一族「青のパンドラ」の続きが月刊「flowers」最新号に載ったのですが、たったの10ページで、エドガーもアランも登場しないため、何も書く内容がなく、しかも次回は来年の初夏ということなので、半年以上前に書いてお蔵入りにした記事を手直ししてアップします。長い上に非常にマニアックな内容となっています) 昔、「ぱふ」という、まんが専門誌がありましたが、ここを読まれているような方はご存知の方も多いと思います。例年、「ぱふ」の4月号は年間マンガベストテンが発表されるので、4月

        「宝石の国」完結によせて

          「宝石の国」雑感

          今朝noteのビュー数を見たら、なぜかいきなり「宝石の国とスターレッド」の記事が2000を超えてたんですよ。最初は何かのバグかと思ったんですが、よくみると、スキの数もそれなりに増えてるんです 確か、前日までは、この記事の累積ビュー数は100くらいだったと思うのですが、どこかに貼られたのか?インフルエンサーが紹介してくれたのか? 夕方には4500を超えていて、「宝石の国とポーの一族」も週間ビュー数で1000を超えてました。他の萩尾望都関連の記事の週間ビュー数はせいぜい20なの

          「宝石の国」雑感

          宝石の国とスターレッド

          (宝石の国を未読の方は読まない方がいいですよ) 「宝石の国」(市川春子 講談社)は現時点で105話まで連載が進んでます。巷の予想だと108話で完結らしいので、多分あと3話で終わるのでしょう 今は地上に残された生き物は、フォスと兄機と石たちという状況になってます。石は岩石生命体(!)ということで、宝石たちと違って手も足も口もありません。輝いてもいません。本当にただの石ころです。作者の市川春子さんは、すべてが救われる極楽浄土ですら宝石は装飾品という扱いしかされない……というこ

          宝石の国とスターレッド

          宝石の国とポーの一族

          (「宝石の国」を未読の方は読まれない方がいいかと) 現在はだいぶテンションが落ち着いてきたのですが、少し前に私がめちゃくちゃはまった漫画が「宝石の国」(市川春子 講談社)でした。この漫画が話題になり始めた初期に一巻だけ買って、当時はキャラの見分けはつかないし、話はよくわからないし、少女戦隊モノ?って思ってすぐ読むのをやめたのですが、その数年後、アニメ化がきっかけで、一気にひきこまれることになりました。とにかく言葉のセンスがイイ!んです 繰り返し読み込んでみると、当初は見分

          宝石の国とポーの一族

          新「ポーの一族」と人間の愛その4

          (注意:現在連載中の「ポーの一族 青のパンドラ」のネタバレがあります) 「flowers」11月号が出たので、早速電子版を購入したのですが、「ポーの一族」は13ページと今回も少なかったです 内容は、人間になった(?)アランへのエドガーの嫉妬が全開でした エディスの娘や孫って……? いったいいつからエドガーはそんなことを気にするようになったんでしょう? エディスとそのきょうだいはエドガーの血縁にあたりますが、エディスの姉シャーロッテの死に傷ついたのは、エドガーでなくてアラ

          新「ポーの一族」と人間の愛その4

          萩尾さんと田村由美さんの対談

          今月号の「flowers」10月号が先日発売されて、萩尾さんと田村由美さんの対談を読んだのですが、私がここでネタにできるような内容は語られませんでした とにかく田村さんが萩尾さんのことを褒めまくり、それは予想通りだったのですが、萩尾さんですら「いやぁ、すごいな~。こんなに良く言って下さって、ありがとうございます。私のお葬式ではこのテープを流してください(笑)。いや、半分くらいあなたの妄想ではと思いつつ…(笑)」「せっかくの40周年企画なのに、私の話ばかりでいいのかしら(笑)

          萩尾さんと田村由美さんの対談

          萩尾望都と雰囲気マンガと森薫

          萩尾さんは雰囲気マンガに徹していたほうが良かった、というのが私の持論なのですが、雰囲気マンガと言えば、森薫さんも外せません (以下、「エマ」のネタバレ全開なので、未読の方はお読みにならないほうがいいかと思います) 私は森薫さんが「エマ」を連載していた頃から注目してました。というのも、イギリスの作家ジェイン・オースティンの小説で「エマ」というタイトルの作品があるのですが、この作品を、同作家の「高慢と偏見」より完成度の高い、洗練された凄い小説だと思ってるんです。 舞台は一つの村

          萩尾望都と雰囲気マンガと森薫

          「ポーの一族」と自由

          先日、知人と、「ポーの一族」がいかに自由であるかという話題になりました この知人は超理系人間で、細かい感情の機微についてはそれほど得意ではないのですが、本質を見る目が鋭く、私もたびたび彼女の意見を参考にしています 知人は、「秋の旅」は良く出来たストーリーだという意見(もちろん皮肉)もそうですが、他には「毛糸玉にじゃれないで」について、自己中な中学生の現実逃避という夢をリアルに描いている(ただし萩尾さんはそれを意図したわけでない)説、「イグアナの娘」はそもそも「物語」として

          「ポーの一族」と自由

          新「ポーの一族」と人間の愛その3

          (注意:現在連載中の「ポーの一族 青のパンドラ」のネタバレがあります) 前回、新「ポーの一族」における重要なポイントとして ・過去に人間を殺したという罪悪感 ・「ピュア」「無垢」への憧れ ・「子ども」を産むこと の三点を挙げました 今日、月刊「flowers」9月号が発売され、「青のパンドラ」の続きが掲載されました。この号が出たら何か書こうと待っていたのですが、この三点に関しても「人間の愛」に関しても、とくに新しい展開はありませんでした しいて挙げるなら、吸血鬼は相

          新「ポーの一族」と人間の愛その3

          新「ポーの一族」と人間の愛その2

          (注意:現在連載中の「ポーの一族 青のパンドラ」のネタバレがあります) 前回、仮にエドガーが人間に戻ったとしても「人を殺した過去」なんて追求しないのではないか?(だってめんどくさいから)と書きましたが、ポーの一族「春の夢」から一通り読み返してみて、それは間違いだったことに気がつきました ところで「春の夢」ではこんなやりとりがあります この時点で、既に、「人間にもどる」ことを語っていたのですね。それにしても、この会話の流れでエドガーが「人間にもどれるの?」と質問するのは不

          新「ポーの一族」と人間の愛その2

          新「ポーの一族」と人間の愛

          (注意:現在連載中の「ポーの一族 青のパンドラ」のネタバレがあります) 2016年の月刊「flowers」7月号に「ポーの一族」の新作が載った時は凄かったですよね。私も発売日に購入しました。あっという間に売り切れて、Amazonでかなり高値がついていた記憶があります。結局、その号だけ後から電子書籍になったのですが、だったら、毎号電子書籍にしてよーと、当時恨めしく思ったものです。他のマンガ雑誌は続々と電子書籍化する中、「flowers」が電子書籍化するのは2018年4月号とか

          新「ポーの一族」と人間の愛

          萩尾望都が編集の山本氏に送った絶縁状と「メッシュ」

          大泉本の中で「排他的独占領域」に関して と書かれているのですが、竹宮さんと「同じ雑誌に描かない」ってどういうこと?と長い間疑問でした というのも「プチフラワー」でも「ASUKA」でも、萩尾さんと竹宮さんは同時期に描いてるし、「ASUKA」なんて創刊号の表紙に、二人の名前が並んで載っているんですよ? で、萩尾さんの何を言ってるんだか意味がわからない記述は、大抵、「言い訳」もしくは「他者への批判」である場合が多いのですが、これはどうやら「言い訳」のほうで、山本氏が初代編集長

          萩尾望都が編集の山本氏に送った絶縁状と「メッシュ」

          萩尾望都の「11月のギムナジウム」

          萩尾さんの初期の作品の中でわりと評価が高く、文庫本のタイトルにもなっている「11月のギムナジウム」ですが、大泉本によると、この作品は「肉体の悪魔」(ラディゲ)からヒントを得て作られているそうです 竹宮さんの好きなコクトーの「恐るべき子どもたち」は自分も昔から好きだったという主張を入れてくるあたり、とても萩尾さんらしいなと思ってしまいます ここでの疑問は「※注」の部分です。竹宮さんは「少年の名はジルベール」で「暖炉」について こう書いています。本当は「兄嫁」じゃなくて、一

          萩尾望都の「11月のギムナジウム」