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『運命に、もがく』【映画『天気の子』レビュー】

※作品の根幹のネタバレはありませんが、若干ネタバレがあります。まだ見ていない方はまずご覧になってから読んでください。




いてもたってもいられずに書いてます。

『君の名は。』から3年。新海誠作品最新作『天気の子』を見てきました。


『秒速5センチメートル』『言の葉の庭』そして『君の名は。』と、新海作品はどれもすごく好きで、今回も楽しませていただきました。


「あの、《君の名は。》の新海誠監督最新作」といったプロモーションが各所でなされ、新海誠作品に異様なまでの期待感を抱かせての今作。


確かに、大ヒット作品の後の作品ということもあり賛否は分かれているようですね。

しかし僕自身、この映画を見た後に胸がキュッと締め付けられるようなそんな感情を抱きました。



『秒速5センチメートル』が「生きる速度」

『言の葉の庭』が「大人と子ども」

『君の名は。』が「運命に抗う」

そういった感触ならば、この『天気の子』は「運命にもがく」そういった物語でした。


舞台は今回も東京。新海監督はほんとに新宿が大好きで、いつも新宿駅やモード学園のコクーンビル、そして代々木のドコモタワー。どこを切り取っても美しくきれいな「東京」が舞台。

今回は、それに足して六本木ヒルズや神宮外苑、お台場、田端の尾久車両センター周辺、そして東海汽船のさるびあ丸、神津島…さらにフィールドを広げた東京が見れて、それもどの場面でも美しい情景でした。

さらに、雨や水、海や雲。まるで現実世界にいるような画がスクリーンに映し出されていました。アニメじゃないみたい。

さらに、数多の現実世界にある商品やサービスとのメディアミックスによって、SFなんだけど実写で、今世界でこんなことが実際に起こっているんじゃないか。そういった感情に引き込まれました。


作品のキーセンテンスは、タイトルにもあるように「天気」

晴れや雨、雲や雪、そういった自然現象を「運命」としてとらえ、それらを主人公らにオーバーラップさせる。運命は変えられない、そういったことのように。


『君の名は。』においては、「運命」によって引き裂かれた三葉と瀧が「運命に抗う」ことで二人のハッピーエンドへとつながっていく。

だが、今作『天気の子』ではそれとは真逆「運命にもがく」陽菜と帆高にクローズアップさせて、そこに「天気」というこれまた人智ではどうしようもない「運命」を重ねる。


さらに、そこに「人生」「死生観」「宗教」「歴史」「東京」「子どもの成長と大人になるということ」といった、さまざななエッセンスを加え、一つ大きなストーリーを描いていく。


さまざまな人間の思惑とストーリーを交錯させながら、ストーリーは進んでいく。「運命」は変えることはできないけど、「運命にもがき、与えられた運命の中から最適解をみつけることはできる」そういったことをこのストーリーは言いたかったのではないのかな、って邪推します。



『君の名は。』と比較して、「前の方がよかった」と思う人も多いと思いますし、確かに『君の名は。』にはあって『天気の子』にはないものもあったように思います。


ですが、私はもし3年前、『君の名は。』ではなく『天気の子』が新海監督の出世作だったとしても、僕は新海誠はやっぱり世間に認知され、たくさんの人の支持を得ていたと思う。それぐらい素晴らしい作品でした。



最後に、

新海作品には英題がつけられることが多いのですが、今回の『天気の子』の英題『Weathering With You.』

「Weather」には、”天気”という意味がありますが、動詞にすると"(嵐・困難などを)乗り越える"という意味もあるようです。


『Weathering With You.』を訳すと『あなたとともに、困難を乗り越える』


すごくすごく素敵で、この映画にぴったりなタイトルだと感じました。僕自身、この話を映画を見終わった後にネットで知りましたが、身震いがしました。


まだまだ見たいし、わからない点も多いので、とりあえず『小説 天気の子』を買いました。

この小説を読んで、気づいたことがあればまた記事にしたいです。そしてもう一度、今度は大衆にストーリーが広く伝わったらもう一度劇場に行き、この映画を見たのちに、ネタバレをしたいなって考えています。



陽菜と帆高は、一緒に困難を乗り越えたのでしょうかね。

季節は代わり、明日からは全国的に晴れ。梅雨明けも近いようです。