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学校の怪談―口承文芸の研究〈1〉 (角川ソフィア文庫)


学校の怪談―口承文芸の研究〈1〉 (角川ソフィア文庫)

 学校という場で、生徒たちによって語られる怪談について、書かれた本です。
 民俗学的な視点から、解説されています。

 著者は、有名な民俗学者の常光徹【つねみつ とおる】さんです。
 この人の、この本から、「学校の怪談」ブームが始まりました。常光さんは、学校の教員だった経験を生かして、実際に、子供たちから、「学校の怪談」を聞き取り調査しています。

 とはいえ、怪談を読んで楽しみたい人にとっては、本書は、「違う」と感じられるでしょう。
 本書は、単に怪談を紹介するのではなく、民俗学の視点で、分析した本です。

 学校という日常の場で、なぜ、怪談が語られるのか?
 学校の中で、怪談の舞台になりやすいのは、どこか?
 子供たち自身は、怪談と、どう付き合っているのか?

 そういったことについて、解説されています。

 第二章以降では、学校の怪談に限らず、広い世間で語られる怪談や、笑い話について、解説されています。
 普段、気にとめることのない「世間話」が、遠い昔からの民俗につながることが、わかります(^^) 「世間話」も、研究の対象になるんですね。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

はじめに――学校の怪談のこと

第一章 学校の怪談
 一 よみがえる民俗的感覚
 二 トイレと怪異
    赤い紙・青い紙
    赤いはんてん
    便器からでる手
    のぞいていた顔
    トイレの非日常性
 三 特別教室と移動教室
    夜の校舎と怪談
    恐怖の心的体験
 四 学校周辺の異界的空間
    辻・墓地・踏切
    口さけ女のうわさ
    家のなかの不思議
 五 うわさとしての怪談
    妖怪さわぎの行方
    校長先生の死
 六 子どもたちにとっての怪談・妖怪・異界
    文化装置としての妖怪
    伝承の背景とひろがり

第二章 現代のハナシ
 一 予兆譚【たん】と事実
    カラス鳴きとハナシの創造
    むしの知らせ
    死の同時体験
    予兆の構造と意味
 二 異人殺し伝承譚の創造
    タクシーの怪談から
    近世の異人殺し
    因果応報の原理
    現代の異人殺し
 三 ハナシの変容と現代性
    山小屋の怪
    人面犬と件【くだん】の予言
    噂ばなしの現代性

第三章 笑話と世間話の背景
 一 笑話の主人公
    能登の三右衛門【さんにょもん】
    意味のコントラスト
    笑いの機能
    巧みな話術
 二 世間話の担い手
    二人の話し手
    情報を求めて
    はなし上手の本領
 三 ツッパリと学級共同体
    制服のなかの個性
    ツッパリの深層

文庫版あとがき
参考文献



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