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九州河童紀行


九州河童紀行

 九州の河童について書かれた本です。
 葦書房【あししょぼう】という、九州の出版社が出しています。

 河童は、日本全国に分布する妖怪です。
 中でも、九州は、河童の伝承がダントツに多いです。ですから、九州の出版社が河童の本を出すのは、自然な流れだと思います。

 九州の河童伝承について、たくさん載っているかと思いましたら、予想より、少なかったです。
 けれども、他の文献では、あまり見られない伝承もあります。村上健司【むらかみ けんじ】さんの『妖怪事典』―妖怪好きのバイブルですね(^^)―にもない伝承が、載っています。
 河童マニアや、妖怪マニアを自称するなら、持っていてしかるべき本でしょう。

 貴重な本ですが、評価の星を付けるとしたら、満点は付けられません。理由は、二つあります。

 一つは、前記のとおり、予想より河童伝承の紹介が少なかったからです。
 この本が出た時点(一九九三年)では、九州の河童伝承を紹介する本が、他にあったようです。しかし、二〇一〇年現在では、それらの本は入手困難です。
 現時点で、九州の河童伝承についてまとまった本といえば、本書しかないでしょう。

 もう一つは、文章が下手な部分があり、読みにくいことです。偉そうなもの言いで、すみません。
 この本の著者は、「九州河童の会」です。この会は、プロの書き手ばかりが集まっているわけではありません。河童に対する知識や情熱はあっても、残念ながら、文章が、それに追いついていないところがあります。

 欠点はあっても、この本が知られないままでいるのは、惜しいです。
 そのため、このレビューで紹介することにしました。地方の出版社を応援もしたいですし。

 以下に、この本の目次を書いておきますね。

民俗の中の河童伝説
河童とは何者?
河童ブームとその背景

|福岡
 福岡・博多の河童たち
 福岡市の河童伝説
 太宰府の河童
 宇美【うみ】の民話
 糸島・カッパの刀
 久留米・河童まん荼羅【だら】
 浮羽【うきは】地方のカッパ
 田主丸【たぬしまる】・荒五郎大明神と河童
 三井・中学生が掘り起こした河童の民話
 日本でただ一つの「河童」駅舎と駅名

 数多い河童の類似伝説
 九州河童文献小史

|佐賀・長崎
 伊万里・水神河伯ミイラ由来記
 北波多【きたはた】・徳須恵川【とくすえがわ】水系の河童伝説
 長崎の河童伝説
 対馬の河童

 河童を愛した作家たち

|熊本
 九州河童王国万歳!!
 河童渡来は中国人児童の集団疎開
 彦一に利用された河童の噺【はなし】
 河童九千坊が伝えたもの
 残党河童こぼれ話

 探訪! 河童の手

|大分
 豊後・大分の河童
 上浦【かみうら】・カッパの伝説と地蔵踊りの由来
 耶馬渓【やばけい】・雲八幡宮【くもはちまんぐう】の「あ・うん河童」

 世界初! 河童の結婚式

|鹿児島・宮崎
 私の河童研究から
 川内川【せんだいがわ】のガラッパのルーツ
 宮崎県の河童

 九州河童アーティスト
 九州の河童王国の紹介と閣僚名簿

あとがきにかえて



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