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さよならモンスター

『おやすみなさい』 

ボクにとって恐怖の時間がやってきた。 

一年生になったら一人で寝るとパパと指切りをしたせいだ。

ボクはもう一年生だから、このくらい平気だと思ったけど、ちっともそんなことはなかった。 

怖くて仕方のないボクは、
布団をかぶり、声を震わせながら歌った。

おばけなんてなーいさ
おばけなんてうーそさ
ねーぼけたひーとが
みまちがえたのさー
だけどちょっと だけどちょっと
ぼーくだって こわいな
おばけなんてなーいさ
おばけなんてうーそさ

こんな歌を歌ったって、怖いものは怖い。

だって、子どもだもん。

あちこちで音はするし、
体はガクガクするし、

けど、パパと約束したんだ。
強い男になるから、我慢するんだ。



キシキシ ギシッ 

ベッドの下には、仮面をして斧を持った大男がいるかもしれない。


ピキピキ ピシッ

天井の裏には、マントをつけた吸血鬼がいるかもしれない。


カサカサ ガサッ

カーテンの向こうには、大きな口と鋭いキバの狼男がいるかもしれない。

ピューピュー ビュー

屋根の上の空には、ボクの家より大きなドラゴンがいるかもしれない。

きっとあいつら、
ボクが眠るのを待ってるんだ。

ボクが眠ったら、食べにくるんだ。


『うわあぁぁぁ…こわいよぉ』 

『パパ! ママ! 助けてぇ…』


ボクが大声で泣き出すと、パパとママはすぐに来てくれた。

すると、なにも言わずすぐに抱きしめてくれた。

『ボクの家にはモンスターがたくさんいるよ』
『あいつら ボクが眠るのを待っているんだ』


そう言うと、
パパは大きな手で、ボクの頭を撫でてくれた。
ママは優しい眼差しで、ボクの話を聞いてくれた。

まだ、心臓がドキドキしている。

二人ともボクが眠るまで一緒にいてくれると約束をしてくれた。

ボクはウトウトしながら、
スタンドライトに照らされた二人の顔をもう一度確かめた。

どんどん、二人の姿がぼやけていく。

こんな時間、早く終わればいいのに。


『おやすみなさい』


パパとママにはさまれながら、 
深い…深い…眠りについた。















『あれ、そういえば、
 パパとママは出掛けていないんだった…』





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