見出し画像

トゥルーロマンス/TRUE ROMANCE

 学生時代に、映画というかサブカル的なもの全般に詳しい先輩がいて、彼女は日本の音楽なら、ミッシェルガンエレファントとかブランキージェットシティなんかが好きだったのだけれど、そんな彼女が『キャバクラ嬢が好きな映画はだいたいトゥルーロマンス』というようなことを言っていたのを今でもなぜか憶えている。どんな根拠があるのかは判らないし、もう訊ねることもできないけれど。当時の僕は、ふーん、くらいにしか思っていなかったけれど、確かに観てみると、そうかもな、と思えたりもした。ただそれも十数年も前の話で、いまだったら通用しないかもしれない。でも、そんなこととは関係なく、観たことがないのなら、観てみると良い。誤解を恐れずにいえば、多分これは『完璧な映画』の一つだ。タランティーノの初期作で、本当は自信が監督までやりたかったらしいが、結局は『トップガン』などを手がけた、トニー・スコットが監督を手がけた。音楽はハンス・ジマー。ザ・ハリウッドといった布陣だ。大味も大味な映画になりそうだけれど、そこはやはりタランティーノが良い仕事をしている。見事なまでに。

 うだつの上がらない若者と元コールガールが巻き込まれる、クライム青春ラブストーリーなロードムービー。洒脱な会話に適度なバイオレンス。脇を固める俳優がいちいち豪華で気が利いている。デニス・ホッパー、ブラッド・ピット、ゲイリー・オールドマン、サミュエル・L・ジャクソン、ヴァル・キルマー、などなど。

 良い映画を観終わったあとには、その満足感と裏腹の『さみしさ』みたいなものを感じてしまうときがある。有体に言えばヘコむのだ。何故かは判らないけれど、きっと『もう終わってしまうのか……』といったさみしさなんだと思う。

 この映画もそうなんだけれど、ひとつだけ違うのは、この映画は完璧だから、ちゃんとハッピーエンドで終わる。めでたしめでたし、というわけだ。完璧な映画は、やっぱりちょっとつまらない。

 あと、多少酔っていたとはいえ、本当にこの映画をキャバクラ嬢に勧めたのは、どうだったのだろう。でも、観て損はないはず。

この記事が参加している募集

映画が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?