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性虐待は、こどものせいで起きるのではない/通告は親も救う件

▼2019年5月21日付の朝日新聞に載った、山田不二子氏のインタビュー記事がよく練られた紙面だった(山内深紗子記者)。

前号では「こどもから性虐待を打ち明けられた大人が、守るべき5つのこと」の一覧表を紹介した。

▼記事全体の冒頭。

〈事件や裁判などで、注目が集まる家庭内での子どもへの性虐待。初期段階での対応が重要です。今、悩んでいる子どもたちは、どうすればいいのか。被害を聞いた大人はどう対応すればいいのか。多くの虐待相談を受けてきた医師の山田不二子さんに聞きました。〉

▼見出しは

〈いやだな、へんだな・・・それは性虐待(せいぎゃくたい)/医師の山田不二子さんに聞く〉

〈なやんでいる子へ 勇気を出し相談しよう〉

〈聞いた大人へ 話信じて。通告は親も救う〉

▼明快な見出しだ。前半の〈なやんでいる子へ〉は、実際にこどもに対して語りかける文体になっている。漢字も少ない。

〈なんかいやだったり、へんだなと感じたりする。でも、お世話しているだけ? 好きだからなのかな? と迷う時もあるかもしれません。

 例えば、パパが私や僕の下着を下げる。3歳のトイレ訓練なら問題はありません。でも、あなたがひとりでトイレができるなら、虐待です。

 洋服の上から胸や性器のあたりを触られて、なんかへんだなと感じたら、虐待です。(中略)

こういう被害は、私だけなの? と思って言い出しにくい。でもあなただけじゃないの。残念ながら起こりうること。でも、あなたのせいではないんだよ。(後略)〉

▼大人に対しては、以下の指摘が重要だ。

〈子どもが嫌がっていないケースもあるし、児相に通告することで、「家庭を壊すのでは」とためらう人も多いでしょう。ですが、性虐待の事実そのものが、家庭機能のはたん(破綻)を意味するのです。(中略)通告は、子も親も救うのです。〉

▼この記事は19面に載ったが、新聞は「一日だけのベストセラー」だから、すぐに通り過ぎていく。日本人は、新聞によって相当多くの情報を得ることができる環境にあることを、あらためて感じる。(つづく)

(2019年5月23日)

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