栗原心愛さんの死(7) 疲弊する児相の現場

▼児相の矛盾を抱えている現場についての記事も増えてきた。2019年2月6日配信の産経新聞記事から。

〈(今回の児相の)対応のまずさは免れないが、全国的に児相は疲弊している。厚生労働省によると、虐待対応件数は29年度は13万件を超え、職員は慢性的に不足。職員1人あたりが抱える案件は平均50件ほどだとする児相もある。ある児相の関係者は「仕事の切れ目がなく、追いまくられている」と訴える。〉

▼2019年2月9日付の各紙(全国紙以外)には、共同通信の記事が掲載されていた。見出しは、

〈虐待根絶「看板ありき」/首相、緊急対策を指示/点検1カ月で 詳細項目未定/現場 ハードル高く〉

〈児童相談所などの不手際が相次ぎ発覚した千葉県野田市の小4女児死亡事件。政府は深刻な虐待事件の連鎖を断とうと、虐待事案の1カ月以内の緊急点検や守秘義務の徹底、児相の体制強化の前倒しを柱とする緊急対策を打ち出した。安倍晋三首相は8日の関係閣僚会議で「やれることは全てやる」と力を込めたが、現場にはハードルの高い「看板ありき」の対策に映り、実効性は未知数だ。〉

〈きちんと業務をこなしている児相であれば、安全確認に時間はかからないとの見方もあるが、日本社会事業大の有村大士准教授は「1人で200件以上の案件を担当する職員もいる。夜に訪問しないと子どもに会えない家庭も多い。大きな負担になるのではないか」と危惧している。(中略)

 柴山昌彦文相が「具体的なやり方は、この後しっかり詰めたい」と述べたように、詳細な調査項目は「ほとんど決まっていない」(同省幹部)のが実情。(中略)

 子どもの人権問題に詳しい村中貴之弁護士は「政府として取り組む姿勢を見せようとしたのだろうが、威圧的な保護者には弁護士による対応を徹底するなど、もっと実効性のある対策こそが必要ではないか」と話した。〉

▼50件の案件を抱えていれば、1つ1つに十分に対応できないのは無理もない、と言わざるを得ない。ましてや、1人で200件なんて。

今回の千葉県柏児童相談所の杜撰(ずさん)としかいいようのない対応が、こうした構造的な問題なのかどうかは、別なのだが。

▼連日連夜、栗原心愛さんの死の報道が流れ続けることが全国の児相の人々に強烈なストレスをかけていることは、容易に想像がつく。

前回紹介した、山脇由貴子氏の提案のように、

子どもの保護を担当する「初動チーム」と、親との信頼関係づくりに徹する「指導チーム」に分ける案がうまくいくのかどうかはわからないが、間違いないことは、「構造的な欠陥」がわかっていることが、対策のスタートになる、ということだ。

だから、この「こどもを守る」VS「親の信頼」という児相の矛盾は、マスメディアにとって、何度でも指摘する必要があると筆者は考える。

(2019年2月11日)

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