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和菓子職人、アメリカで暮らす。vol.3〜どら焼きってpancakeじゃなかったっけ?!〜

アメリカはテキサス、ヒューストンにて居を構える私は、和菓子作りに着手しはじめました。
はじめに、材料のリサーチと、餡子が炊けるかどうかを検証していました。前回のお話では、餡子が無事にたけることがわかり、商品として完成した物を生み出すべく、取りかかったのはどら焼き作り。
渡米前から、「どら焼きってほぼpancakeだからすぐ焼けるでしょ。」とこれまたたかを括っておりました。今こうして文章を書いていると、尽く予想を外している自分が情けなく感じてくるのですが、その時はそこまで深く考えていないのです。経験則と言いますか、感覚的に失敗なかろうと思えていたのです。結果から言いますと、まぁやっぱりレシピ完成まで時間がかかりました。
まず、どら焼きの生地の材料から簡単に述べますと、卵、砂糖、小麦粉、蜂蜜に重曹。ミリンや油を入れたレシピもありますが、私のレシピは至ってシンプルなもので作っています。
どの材料も日本と当然のようにアメリカのスーパーで並んでいます。強いて言えば、材料のメーカーが多過ぎてどのブランドにするのか?というところで悩むかな、と思っていました。手始めに、砂糖から・・・とWebで確認すると、まず甜菜糖は無く、さらには上白糖が無いという事実を知りました。上白糖は和菓子ではよく使い、コクを出したりしっとりとさせたりするためにグラニュー糖と使い分けておりました。まず、砂糖問題が大きく立ち上がってきました。今までの私のレシピは上白糖で仕上げているものも多くあり、その中で、どら焼きは100%上白糖。ただ、日系スーパーで1k約$7(高い!)で手には入るのでまずは、砂糖の検証は後回しにしました。
次に、小麦粉。そう、ここから小麦粉沼が始まりました。(正確に言えば、沼に入ってるのを途中で気づくわけです。)もちろん、日本みたいに小袋タイプは存在せず、1kオーバー且つ平均的に有名なメーカーの小麦粉の袋を4,5個買いこみ、最小ロットでどら焼きを焼いてみることにしました。
すると、生地の仕上がりがどうにも重たく、固い。初めは「メーカーの差か?」なんて悠長に思っていましたが、4つ目くらいから「そもそも違う気がする」と気づきました。

買いなおして試作としての小麦粉なのにこの量・・・

そうですね、ご存知の方はこの振りが長かったかもしれませんが、アメリカで一般的に売られている小麦粉、All purpose Flourは中力粉なのです。うどんとかお好み焼きとかはいいやつですね。で、私が使うべき薄力粉は、Cake flourと明記されているものだったのです。なぜ、予めネットで下調べしなかったのか、店先でCake flourとは何かをチェックしていたら・・・と固くなったどら焼きの皮を目の前にして反省をしました。なんと無く、Cake flourというとパンケーキミックス的なイメージが私の中であったのだと思います。とほほ、と誰にいうわけでも無く呟き、どら焼き向きの小麦粉探しをリスタートしました。最終的には、日本のどら焼きと同じ仕上がりというよりは、その小麦粉にあったレシピに調整する形で落ち着きました。日本で私が作ってるものを再現する、というよりは、ここで手に入る材料を活かして自分が納得する形にするということがやはり大事なのでした。グラニュー糖でもどら焼きは焼けますが、「どら焼き感」が薄いように感じたので、上白糖とブレンドして使うことに。ベーキングパウダーでも作れますが、重曹を使うことで、どら焼きの持つどことなく感じる苦味を残せます。今まで何気なく使ってきた材料の特徴・役割みたいなものを改めて考える時間にもなりました。

材料と同じくらい大事なのが、道具。日本では、どら焼き専門に焼けるガス式の鉄板を使用していました。高温でサッと焼けて安定的に作れるのです。ただ、もちろん運び込んでいないため、アメリカで手に入るものでするしかありません。
 ここで、渡米前の仮説。「BBQ文化だからBBQ用のポータブル鉄板でどら焼きも焼けるでしょう。」と。確かに、BBQやパンケーキが焼ける鉄板は売っていました。で実際に、買ってみて、見た目もサイズ感もちょうど良い。ただ、ただ、焦げ付いてしまう結果に。いいお肉だったらなんの問題もないんだけどな・・・というところ。では、最終的に何で焼いているのか、というとホットプレートです。結果的に。

これがリターンとなったBBQ鉄板。見た目はよかったのですが・・・。


正直、ホットプレートを道具として用いることに抵抗がありました。求める火力、生地の仕上がりに差が出るのと、数が焼けないということ。ただそこでもやっぱり私を推し進めたのは、「目の前にあるものでベストを尽くし、食べてもらえる和菓子を作る。」という思いでした。せっかく私がアメリカにいるのだから、ここで出会う人に和菓子を食べてもらいたいという思いが段々と育っていました。ホットプレートの癖を見ながら、レシピを調整して・・・という作業を経て、やっとどら焼きの生地が仕上がりました。
 紆余曲折をただ書き連ねただけになりましたが、誰かの楽しみになれたら嬉しいです。
さて、次は、「Mochi-Ice」が私を救う!です。お楽しみに。

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