見出し画像

【実録】立ち上げ間もないスタートアップがいきなりのコロナ禍で大ピンチに陥った話

「起業しよう!」「事業を立ち上げよう!」そう考えたことのある人は少なくないはずです。
ましてビジネススクールに通った人間ならなおのことでしょう。

私とビジネススクールのクラスメートもそう考えました。
2019年晩秋のことです。
当時、ビジネススクール1年生だった私たちは、事業アイデアを持ち寄り、共感する者たちでチームビルディングし、会社設立後軌道に乗るまでをシミュレートするという授業を受けていました。

今回は、あくまで模擬的にすぎなかった授業を通して実際に新事業を立ち上げるも、予想外の出来事に遭遇しピンチに陥りながらも立て直していくまでを描きます。


当初のビジネスプラン


そのクラスメート:沖川さんは、入試の最優秀合格者ということで、入学当初から目立っていました。授業でも積極的に発言し、IT関連のプロジェクトマネージメントにも長けていました。

(左側が沖川、右側が私:米山です)

彼が出したビジネスプランは、子育て、介護、自身の療養などの制約があり、働きたいのに働けない人を雇用して、テレワーク、在宅ワークで働いてもらおうというものです。コロナ前、テレワークという言葉は現在ほど普及していませんでした。

当時もこうした事業を手掛ける会社は存在していましたが、そのほとんどは働く人を雇用するではなく個人請負してもらう形式でした。(ウーバーイーツなどと同じですね)
雇用という形式だと企業側のリスクが大きいため、個人請負を選択するのは企業にとって無理のないことです。

しかし、今後労働人口が減少していくことは明白なので、有能な人材は積極的に雇用し会社への帰属心を高めた方が良いというのが私たちの考えでした。雇用されることで安心感を得る人も多いですしね。

新事業立ち上げを決意


沖川さんのビジネスプランは、私たちグループの基本理念「多様な人たちが働いて楽しい」にも合致していますし、考え方も合いそうです。そう考えた私は彼とチームビルディングして、事業計画を立てることにしました。

しかし、ここまではあくまでシミュレーションです。リアルなものではありませんでした。

ところがシミュレーションを進めるうちに、「これ、できるんじゃない?」と思うようになり、「これ、やったほうが良くない?」→「これ、やるしかないでしょ」に変わりました。
結果、熱に浮かされていた面もあったかもしれませんが、リアルに立ち上げることを決意します。

私たちの通うビジネススクールは社会人向けで、ほぼ全員が働きながら学んでいました。新事業を立ち上げるためには、副業として始めるか、雇用されている場合は会社を辞めなければなりません。

ということで、沖川さんは当時勤めていた会社が副業を認めていなかったこともあり、その某有名企業を退社し、当社グループにジョインすることになったのです。

コロナ禍で暗転


ところが、着々と事業を立ち上げを進めていた2020年初頭から、少しずつ未知のウイルスが話題になりはじめ、あっという間に緊急事態宣言で世の中の人流が止められました。

当初のプランでは、リモートワーク者に割り振る仕事は、ざまざまな企業から請け負うことにしていました。そのための営業活動を本格稼働させようという矢先に緊急事態宣言です。
人と交わることが悪になってしまったのです。

唾を付けていた営業先から「訪問なんてとんでもない!」と拒絶され、途方に暮れました。
平日昼間にも関わらず沖川さんと私の他にほとんど人影もない広島駅で、店も営業していないため、あてもなく立ち話で打ち合わせしていたことを思い出します。

要は、仕事が受注できない、だから人も雇えない。事業は立ち上げたものの開店休業状態となりました。

捨てる神あれば拾う神あり。


しかし、そんな途方に暮れている私たちへ救いの手が差し伸べられました。
声をかけてくれたのは同じくクラスメートだったYさんです。彼は、農業関連部署で働く公務員なのですが、農業の生産現場でDXが進んでいないこと、それ故に農業生産者の収入が向上しないことに問題意識を持っていました。

Yさんは、こう言っては失礼ですが、やる気に溢れる公務員らしからぬ公務員です。色々な農家さんに紹介してくれては、抱えている課題を教えてくれました。本当に持つべきものは友だと思います。

農業生産の現場はカオスでした。
受発注の際に飛び交う手書きFAX、数値化されない貴重なデータ、暗黙のまま可視化されない経験、個人の頭の中にだけ存在し共有されない生育状況…

「ああ、これって偏頭痛クラスの問題の宝庫だ」
「あったらいいな程度ではない偏頭痛クラスの問題を探せ」とよくスタートアップ界隈では言われます。
それに行き当たったなと感じました。

どんなことをやって、どう持続可能性を高めるのか


ではこの偏頭痛クラスの問題に対してどう対処するのか。

まず、カオスな業務にITツールを導入し効率化を図る必要があります。そのための情報システム開発、しかもITリテラシーが高くない人でもとっつきやすいシステム開発が求められます。
いわゆる「スマート農業」という分野の一つですね。

しかし、初期の開発費用を全て自己負担するのはあまりにもリスクが大きい。ということで、自治体や国のプロジェクトに参画したり、大手企業とパートナーシップを結んで実証プロジェクトに参画することで新しいスマート農業事業をスタートさせました。
ちなみに現在も実証を重ねながら開発を進めています。
( ↓ 広島県の実証プロジェクトへの参画実績です。持続未来株式会社の旧社名:三栄産業株式会社で記載されています)

ただ、これで農業生産者を便利にするだけでは、目的として不十分です。
農業生産者にある課題で最大のものは、多くの事業者の収入が低いということです。
ですから私たちは利便性向上にとどまらず、業務効率を向上させて、収入を引き上げることを事業目的としなければなりません。


今も事業立ち上げは続く


というわけで、当初のプランからスマート農業へ大幅にピボットしたのですが、まだ事業立ち上げは続いており、スタートアップ段階と言えます。

なぜかと言えば、まだ実証を重ねている段階だからです。
実証で終わらせず、これからは作り上げたサービスを一般にリリースし普及させる段階に入ります。
しかし、これも視野に入ってきたと言えます。

今後のサービスリリースに当たっては、より多くのエンジニア人材が必要になってきます。
農業はかなり面白い舞台です。やる気のある若い生産者さんたちと交流すると、農業の大きな可能性を感じられます。
また、当社の事業部はまだスタートアップ段階なので、苦労も多いぶん面白みが尽きません。この段階でないと体験できないことが満載です。スタートアップの醍醐味ですね。

これから一緒に面白がってくれる新しい仲間、一緒につくり上げていく新しい仲間を待っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?