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Book(Movie) Review-3:Moom ムーム

【みずうみにすてられたガラクタ】

ほんとうに かなしいことは、
ほんとうに しあわせなことと にている。

ブック(Movie)レビュー 3rd
「Moom ムーム」
原作:著/川村元気
   絵/益子悠紀
映画:監督/ Robert Kondo, Daisuke Tsutsumi

5年前、"The dam keeper"と言う短編アニメが、米アカデミー賞にノミネートされて話題になった。製作したのは、元Pixerの日本人と日系アメリカ人の2人だった。原作の絵本は、映画プロデューサーの川村元気が執筆し、アカデミー後に映画としての製作を依頼したという。

人間が捨てたモノに宿っている"思い出"が存在する世界。モノに宿った思い出は、準備ができると空へ解き放たれる。しかしムームは解き放たれずに留まっている。ある日、ムームは同じ境遇の女の子"ルミン"に出会う。ルミンも空へ解き放たれず、いつもずっと泣いていた。彼女はある靴に宿る思い出で、ムームは彼女のために花火や音楽を使って励まし、彼女は徐々に感化されて、靴を履いて踊る。ムームはそんなルミンに恋をして、2人は心を通わせる。しかし、まもなく彼女は微笑みとともに空へ消えた。ルミンは靴の持ち主の惜別か、夭折した悲しみの象徴かもしれない。彼女を送り出したムームは、別れと孤独の悲しみで夜通し泣いていたが、朝日とともに凛とした姿で歩き出した。

Pixerが"インサイド・ヘッド (Insideout)"を同年に公開したが、キャラクター化した"喜び"と"悲しみ"が、一つの思い出となってヒロインの記憶に刻まれるシーンがある。伝えたいメッセージは同じだろう。悲しみも人生には必要で、それを乗り越えた時、人は大きく成長し、共有して繋がった絆はかけがえのない"モノ"になる。

20数個を超える映画賞を総ナメにした名作で、絵本と映画を姪っ子にあげたが、映画はまた買って手元に置いた。とても繊細な映画で、暗い映画でもある。だから共感度合いが強い。

性格にある繊細さは、生きててとても不便で苦労が多いし、デリカシーのない性格の方が人生のコスパが良いと思う時もある。でも、やっぱりこう思う。この映画のように、誰かと悲しみをシェアできて、もしくは一緒に乗り越えられる共感性と向上心を持って生きて行きたいと。


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