見出し画像

【ドラマ考】5年の空白を埋める未開封の手紙 3/10(日)「さよならマエストロ」第9話

今回のさよならマエストロ。
最終回前にして、最高に家族愛を訴えかける作品であった。

音楽家の娘としての苦悩。
音楽という、定量的には測りがたい芸術がゆえに、「父親のコネあるしいいよね」といわれのない妬みに苦しむ。
文句の付きようがない完璧な演奏をする。そして、コンクールで優勝してパパと共演する。それだけが目標になり、寝る間も惜しんで練習に取り組む。
気付けば、何かを表現することや音楽・音を楽しむことができなくなっていた。

そんな中、5年前のコンクール準決勝、ついに練習の成果が実を結び、自分なりに最高の演奏ができた。
賞賛する母と喜ぶ響。もちろん、楽屋から仕事場に向かう父はしっかりと褒めてくれた。そんな幸せな空気の中、ファイナルを控えた響に、父の愛あるアドバイスが響を意図せず追い詰めた。
もがき苦しんで今最高の演奏ができた響にとって、もっと良い演奏ができるためのアドバイスは、まだ足りないところがあることを突き付けるものであった。

父と娘、音楽との別れ
響は苦しみ、ファイナルの前に会場を抜け出し、そして事故に遭った。
病院に駆け付けた父に対して響が放った言葉。「パパのせいで音楽が嫌いになったんだよ」。この言葉が父を指揮者生活から離れる決意をさせた。

空白を埋める、未開封の手紙。
それから日本とドイツで別居した父と娘。その間、父は5年の間、愛娘に対して手紙を出し続けた。
5年越しに封を開ける響。中には、"音楽が嫌いになった"響に向けて、季節ごとの話題に響との思い出、そして上手とは言い難いイラストに、父がへたくそでも娘を笑顔にしたい、という気持ちがうかがわれる。


「あの人」から「パパ」へ
手紙を読んで父の愛に触れた娘は、父に切り出す。
父と娘の間の約束。ひとつは日本の焼き栗をたべさせてくれること、そしてもう一つ、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲第2楽章を一緒に奏でること。
ヴァイオリンを手にした響に、父載るアノに着く。母なる海のような三拍子で豊かなピアノの前奏に、響の甘美なヴァイオリンが登場する。
音楽の共演こそが言葉以上に二人の心をつなぐ、なぜなら二人は音楽家だから。



この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?