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ベトナムで2人のお手伝いさんと共に3人の子育てをするパパ経営者からみた「ここがヘンだよ日本の子育て」

幼児教育・保育の無償化が、2019年10月からスタートしました。

0~2歳児クラスは、一定の条件を満たした世帯、3~5歳児クラスはすべての世帯の幼稚園、保育所等の利用料が無償になります。

少しずつ子育てしやすい環境の整備は進んでいるものの、一方でまだまだ課題も多いです。

2019年4月時点での待機児童は、全国で1万6,772人となっており、2年連続で減少。

しかし、希望した認可保育所などに入れないにもかかわらず、国や自治体での待機児童のカウントに入っていない児童、いわゆる「隠れ待機児童」を合わせると、むしろ2019年は3%増の90,000人以上になっているのではないかという指摘もあります。

(参考:2020年春に向けた保活もいよいよ本番。東京近傍の主な自治体を対象に保育園に入りやすい街を調べた。


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こういった日本の現状に対して、ベトナムのホーチミンで3人のお子様を育てている、ICONIC(アイコニック)社代表の安倉 宏明(やすくら ひろあき)さんは、「日本は母親一人に子育てを任せすぎているのではないか」との疑問を呈します。

「パパ」と「経営者」2つの顔を持つパパ経営者にインタビューをして、子育てと事業の両立の秘訣などを伺う、パパスマイルBLOG連載企画第3回。

第1回:【パパ兼経営者の二刀流ライフ】子育てして、親育てされて。父親になって、経営者としても成長できた
第2回:ロボット世界大会最年少出場で入賞、孫正義育英財団3期生の息子を育てたパパ経営者が、社会に描くビジョン


今回登場してくださった安倉さんは、ベトナムのホーチミンにて人材紹介サービスを手がけるICONICを、2008年に創業。

現在はベトナム(ホーチミン、ハノイ)だけでなく、インドネシア、日本、マレーシア、シンガポールの5カ国6拠点にて事業を展開しています。

そして聞き手は、日本唯一のベビーテック専門メディア『Baby Tech』の運営や、育児系IT商品サービス総合コンサルティング事業などを行う、パパスマイル代表の永田。6歳の娘さんのパパでもあります。

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ベトナムを拠点として子育てを行い、仕事では東南アジア中を飛び回る安倉さんに、今回は外から見た日本の子育て事情について話してもらいました。


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安倉 宏明(やすくら ひろあき)さん。1980年愛知県生まれ。2004年に関西学院大学総合政策学部を卒業後、株式会社ベンチャー・リンクへ入社。その後、単身ベトナムに渡り、年間約500社のベトナム企業に営業・訪問をする。2008年、ICONICを創業。現在は100名以上のメンバーを抱え、人材紹介サービスだけでなく、組織人事コンサルティングや、メディア運営などの事業も展開中。


「子育て=母親がするもの」は新しい価値観?

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安倉
やっぱり、日本は「子育ては母親がするものだ」っていう先入観が強すぎると思います。ただ、ぼくの調べた限りでいうと、そういった価値観が日本に入ってきたのって、明治時代以降らしいんですね(参考:子育て事情 いま・むかし)。

だから、実はすごく歴史の浅い価値観なのに、あたかも奈良時代とか平安時代とかくらいから存在するような感覚を、ぼくたちは持ってしまっているじゃないですか。そこを冷静になって考えると、やっぱりいまの日本の子育て環境は、合理的じゃない側面があると思います。とは言え、いまの日本の税制や社会保障が、専業主婦がいる世帯にとって得になるような仕組みになってしまっていますよね…。

永田
「一億総活躍社会」や「男女共同参画社会」っていうビジョンがあっても、そこに向けた具体的な制度改革がないと、なかなか状況は変わりづらいですよね。結局、人は制度に最適化して動くようになるので。

これは国だけじゃなくて会社も同じで、ぼくも一人の経営者として、決められた法律のなかで、いかに従業員のためになるような制度を用意していけるのかということに、頭を働かせています。特にいまは、そうしないともう人材が来てくれない時代になっているので。

パパスマイルの場合は、「ベビーテック」や「父親の育児参加」、「家族のQoL向上」といったことを掲げているので、パパスマイル自体が超ホワイト企業じゃないと、社内外問わずみなさんが付いてきてくださらないよねって思います。だから当然、育休や産休は男女問わず従業員みなさんにとってもらいたいし、来年度以降の体制としては、会社として1日の実労働時間を4時間かつリモートも可能にしながら、いかに業績を上げていけるかを目指していますね。


いかに「1回目」のハードルを超えられるか

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安倉
いま、ベトナムの家ではお手伝いさんを2人雇っていて、子育てや料理を手伝ってもらってるんですけど、日本だとまだまだお手伝いさんやベビーシッターに対する抵抗が強いですよね。別にフルタイムでお手伝いさんに来てもらわなくても、例えば1日3時間、育児や家事から解放されるだけで、父親や母親の精神的負担はだいぶ軽減されるはずです。ワンオペ育児は負担が大きすぎて、1日やるだけでも、本当にクタクタになってしまいますよ。

たぶん、日本でまだまだベビーシッターの普及が進まない背景のひとつに「ベビーシッターに任せて事故や怪我が起こったらどうするんですか」っていう不安があると思うんですけど、それって極端に言えば「交通事故にあうのが怖いから家から出ない」みたいな話と同じじゃないですか。もちろん、子どもを安心して任せられるような目配りや仕組みの導入は大事なんですけど、なにかしらのリターンを得るためなら、やっぱり多少のリスクは取るべきだなと思います

永田
やっぱり、パパに限らずですが、経営者の方にお話を伺っていると、リスクテイクに対する見通しがちゃんと立っていますね。リターンを得るためには、ちゃんとリスクを取らないといけないよねっていう。

そして、チームビルディング的な側面で、家族がちゃんとチームとして機能しているなとも思います。家族それぞれにやれること、やれないことといった個性があるんですけど、それらを含めてお互いにリスペクトしあえているなと。

安倉
みんながベビーシッターを活用するようになったら、個々の家庭だけじゃなくて、社会全体にとっても絶対に良いと思うんですよね。いまって大半の世帯で、家事や育児を母親が全部担ってしまっていることによって、それらが地下経済のような状態になっているじゃないですか。これをお手伝いさんやベビーシッターに頼めば、それは事業所得として計算されるので、GDP(国内総生産)にも組み込まれます。あとはそうやって育児や家事の手伝いを通してお金が回るようになるので、景気も良くなるはずです。

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永田
日本でもシッターサービスはいくつかありますね。パパスマイルがそういったサービスの取材を続けるなかでも、「1回目を使うハードルが高い」という傾向があります。逆に1回使ってもらいさえすれば、ほぼすべての人がリピーターになりますね。もう「使ってよかったー!」っていう感想しか聞かないです笑。

ただ、先ほど安倉さんがおっしゃった「何かあったらどうするんですか」という心情は自分もわかるので、そこの担保としてはナニーカム(シッティング中の様子を写すカメラ)のようなものが使われることで、心理的ハードルが下がるといいな、と思います。

安倉
本当にもう、ベビーシッター利用券をプレゼントしたいくらいです。家に帰って部屋がきれいだったり、料理が作ってあったりすることって、すごく良いですよ。テンションが上がります。あと同時に、お手伝いさんやベビーシッターさんに家事や育児をお願いすることで、妻が社会に出て、世間とつながり、家以外の居場所があるっていうことがとても大事で。

極論ですけど、妻が外で働いて10万円を稼いで、その10万円をそのままベビーシッターに払って育児してもらうでもいいくらいです。金額的にはプラマイ0ですけど、その過程で妻が自分のやりたいことをして、自己実現を進めていきながら、お金を稼げているっていう事実が、夫婦関係とか家庭環境とかをすごく良くします。

永田
そうですよね。ひとりの人間として、家庭だけが世界のすべてになってしまうのはもったいないと、強く感じます。家の外でも自分の価値を感じられることや、ときには家事や子育てでたまった疲れを息抜きできる場所があることは、自己肯定感や承認欲求に対してすごく大事なんですよね。


子育てのカギは「夫婦関係」

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安倉
結局、子育てにおいて一番大事なのって「愛情」だと思うんですけど、それってつまり「夫婦関係が良好であること」だと思っています。夫婦関係が安定していると、家庭に安心・安全を提供できるので、それが子どもの自己肯定感にもつながってくるんじゃないかなと。

最近はぼくの東京にいる時間が長くて、ベトナムの家にいないことも多いんですけど、だからこそベトナムにいるときは、子ども3人の世話はお手伝いさんにお願いして、妻と2人でよくご飯に行きます。たぶん、週に1~2回は行ってるんじゃないですかね。

逆に、夫婦関係とか家庭環境とかがあんまり良くないんだよっていう知り合いの話を聞いていると、例えば奥さんが旦那さんのいないところで、子どもに対して旦那さんの悪口を言ってるみたいなことがあるんですよ。そうすると、自然と子どもは父親のことが嫌いになってしまいますよね…。

ぼくにはいま6歳の娘がいて、ぼくのことを大好きって言ってくれるんですけど、もう年齢的にはお父さんのことを避けがちになってもおかしくないじゃないですか。でも好きでいてくれるのは、たぶんぼくのいないところで、妻が娘に対してぼくのことを、良いように言ってくれてるからなんだろうなって思います。

永田
同感です。ぼくも同じくちょうど6歳の娘がいるんですけど、すごくぼくのことを好きでいてくれてますね。スタートアップの経営者をやってヘコみ続けていて、ボロボロになっているぼくのことを、妻は我慢して許してくれていて…。

逆にぼくも、妻のことを気にかけていて、もしなにかあったときはケアをできるだけする、と心がけています。できているかは、妻のみぞ知る…ですが 笑。これでもし、実は裏では母親が父親の悪口を娘に言っているみたいなことがあれば、それはすぐに娘の態度から分かるじゃないですか。でもそういったことが一切ないので、妻には感謝してますね。

安倉
子育てを家族のなかだけで閉じるんじゃなくて、ちゃんと社会全体で育てていくっていう考え方が大事なのかなと思います。例えば日本で小さい子ども3人を連れてレストランに行って、少しでも騒がしくしてたら注意されちゃうんですけど、逆にベトナムだと店員さんがあやしてくれますからね。だから、ものすごく子育てが楽です。

でも、日本も国全体としてすごく良い国だなと、他の国を見てきたうえで思います。日本は子育ての面に関しては不便なところもあるんですけど、逆にそこは伸びしろだなと。そこが改善されて、いつかは日本でも家庭生活を送れたらいいなと思っています。


編集後記

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インタビュー中に出てきた、安倉さんの「いまの日本の子育ての価値観は、明治時代以降に入ってきたもの」という話に興味を持って、インタビュー後にいろいろと調べてみました。

すると「良妻賢母」という言葉は明治時代に浸透したもので、江戸時代は「家の跡継ぎ」という背景から、むしろ父親が育児のリーダーシップをとっていた、なんて情報も。

いますでにある考え方に固執するのではなく、自らの頭で、いまの時代や個人それぞれの状況に合わせた最適なやり方を模索していくことが大事だなと、改めて感じました。

(編集後記 参考①:ワンオペ育児の始まりは明治時代!? )
(編集後記 参考②:江戸時代、子育ては母親の主たる役割でなかった。


今回お話いただいた安倉さんが代表を務める、ICONIC社のHPはコチラ!↓


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執筆/写真:パパスマイルBLOG編集長 藤本けんたろう


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