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「仕事と育児のバランスは9:1くらい」なパパ経営者が、社員とその家族の分まで健康診断の費用を全額負担する理由


「イクメン」という言葉を、2000年以降くらいからよく聞くようになりました。

いまは全盛期ほど「イクメン」という言葉自体は耳にしなくなりましたが、そういった言葉にも後押しされて、「父親は子育てにたくさん労力を割いているほど素晴らしい」という風潮が強くなった側面は、少なからずあると思います。

しかし本来、家族の形は家族それぞれのはず。


今回登場してもらった、RingZero代表の根本 英明さんは「仕事と育児のバランスは、9:1くらい。厳密に言うと、仕事が9よりもっと多いくらいかもしれない」とのこと。

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「事業と育児の両立についてパパ経営者に聞く」という、本連載のメインテーマに沿っていないのではないか?と、根本さんは心配されていたのですが、もちろんそんなことはありません。


世界中、すべての家族がロールモデル。

今回は根本さん一家の「家族の形」について、迫ります。

対談相手は、日本で唯一のベビーテック専門メディア「Baby Tech」の運営や、育児系IT商品サービス総合コンサルティング事業などを行う、パパスマイル代表の永田です。6歳の娘さんの育児にも、奮闘の日々。

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家族の形はもちろん、根本さんが経営されている会社の福利厚生や、避けては通れないお金の話まで、根本さんと永田によるパパ経営者対談の話題は、多岐に渡りました。

(インタビュアー:パパスマイルBLOG編集長 藤本けんたろう)


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根本 英明(ねもと ひであき)さん。1977年生まれ。東北大学大学院情報科学研究科卒業。NTTソフトやソニー株式会社、株式会社サイバーエージェントなどでの勤務を経て、株式会社NubeeTokyoではグローバルCTO、取締役を務めた後、ルートフォー株式会社を共同代表として設立。その後2018年11月にRingZero株式会社を設立。


家にいる時間は「子育て」よりも「妻のケア」

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藤本
早速なんですけど、根本さんは普段、事業と子育ての両立について、どういったバランスをとっていますか?

根本
時間配分でいうと、事業が9で育児が1くらいですかね。もしかしたら、もっと事業寄りかもしれないです。1日のなかで子どもに会うのは、朝起きてからオフィスに出社するまでの時間だけですね。

永田
となると、根本さんが帰宅されたタイミングでは、もうお子様は寝られてるんですか?

根本
そうですね。ぼくが家に着く時間が、だいたい早くても23時くらいなので、子どもはもう寝ています。

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藤本
奥様はいま、専業主婦ですか?

根本
そうです。ぼくが経営している会社の事務や広報などの仕事を、少し手伝ってもらってはいるんですけど、基本的にぼくは仕事のほうに注力して、育児は妻にお願いしている形です。ぼくは家では子育てに直接関わるというより、妻のケアのほうを意識していますね。

藤本
具体的には、奥様に対してどんなことをされているんですか?

根本
妻の話を聞くことです。ぼくが帰宅して妻がまだ起きているときは、ぼくにまだ仕事が残っていたとしても、たとえ1時間でもまずは妻の話を聞きます。たぶん、日中ひとりで育児や家事をするなかで、なにかしら溜まっているものはあると思うので。

そのときは、同僚やクライアントから仕事の連絡が来ていても、一旦全部無視します。まずは妻の話に集中して、溜まっているものを吐き出して寝室へ向かったら、ぼくはそこから仕事に戻ります。


「できる」のすれ違い

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藤本
永田さんも「奥様のケア」を意識していると、先日のインタビューでおっしゃっていましたけど、永田さんは具体的にどういったことをされているんですか?

永田
ぼくは「妻からのお願いは最優先に対応する」っていうことを、心がけています。たとえば妻から「電球を交換できる?」って聞かれたときは、”能力的に”できるかどうかを聞かれているんじゃなくて、”いますぐ”できるかどうかを聞かれているんですよね。

ここでよくあるすれ違いは、頼んだ側は”いますぐ可能?”の意味で「できる?」と聞いているのに、頼まれた側は”能力的に可能”の意味で「できるよ」と答えてしまうことです。そこですれ違うと、頼んだ側が別の用事をして戻ってきたら、「まだ電球を交換してないじゃん!」となってしまうことになります。「できるよ」と返事をする場合、ぼくは妻からのお願いは最優先で対応するようにしていますね。

藤本
同じ言葉でも人によってニュアンスが全然変わるのは、日本語の難しいところでもありますね。。

永田
もちろん、大前提として「妻からのお願いはできるだけ早く応えたい」という気持ちがあります。その上で、良好な関係を築くうえでのテクニック的な面としても、「妻からのお願い最優先に対応する」ことに、デメリットはないなと思います。

根本
ぼくが妻に対してよく言ってるのは「自分はコスパが高いことをやるようにする」っていうことです。たとえばぼくがあんまり得意じゃない家事を手伝ったときって、無駄に時間がかかるうえに、妻の普段やっている手順と違うやり方で、妻から「これは違う」と言われることもあって、お互いにとってメリットがないんですよね。

だから、ぼくにとってはそれほど手間に感じないけど、妻には喜んでもらえる家事をしたり、妻の体調が悪いときにはいつも以上に家事や子育てを手伝ったりしています。

藤本
自分の感じている労力以上に、相手に喜んでもらえることやタイミングで意識的に時間を割くことが、「コスパの高いことをやる」ってことなんですね。

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根本
あとは他にも、週末は家族のなかでぼくが最初にご飯を食べ終わることが多いので、そういうときは食器を台所へ持っていって、そのまま自分の使った食器を洗っています。そうすると、食べ終わった妻や子どもが食器を持ってくるので、そのまま家族全員の食器を洗ってしまいますね。

藤本
食器1人分も4人分も、洗い始めてしまえばそれほど変わらないですもんね。

根本
全員分やったとしても、30分もかからないです。ここでコスパよくポイントを稼いで、このあとの3時間、仕事に集中するための時間を買うというイメージですね(笑)


妻が体調を崩すと、会社が潰れる可能性だってある

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根本さんの経営されているRingZeroでは、インフルエンザの予防接種を全額負担したり、健康診断の受診費用にいたっては、本人だけでなく社員のご家族全員分の費用を補助されていたりすると伺いました。創業約1年のベンチャー企業としては、かなり思い切った制度だなと思うのですが、これにはどういった意図があるんですか?

根本
妻ともよく話すんですけど、結婚して家族ができると、それはもう「チーム」なんですよね。特にまだ子どもが小さいうちは、両親のうち少なくともどちらか1人は、子どもから目を離せません。

そこでたとえばぼくの場合だと、妻が体調を崩して子どもの世話をできなくなったら、極論すると会社が潰れる可能性だってあります。そうなったときは絶対に事業よりも子どもを優先して、必然的にぼくが会社に割ける時間が少なくなるので。

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藤本
家族はひとつのチームで、根本さんの場合、奥様が子どもの世話をしてくれているから、根本さんが事業に集中できるということですね。

根本
会社の制度に関しては、健康診断って、仕事を辞めると行く機会がなくなるんですよね。都や区の制度としてもあるにはあるんですけど、よっぽど健康に対する意識が高い人じゃないと、自発的にはなかなか行かないじゃないですか。

だったらRingZeroの制度が、ご家族の方々の「健康診断に行く新しいきっかけ」になったらないいなと思って。特にぼくたちが主にやっているソフトウェア開発の場合、会社にとっての財産ってもう「人」しかないんですよね。だったら、その財産である社員が働ける環境を作ってくれているご家族の方々にも、ぜひ健康診断を受けてもらいたいなと思いました。


生徒が学校に合わせる?

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藤本
普段の生活では、奥様が子育て、根本さんが事業に注力されているとのお話がありましたが、それとは別でお子様の習いごとや進学などの育児方針については、おふたりで話し合われるんですか?

根本
そうですね。それはふたりで相談して決めています。ただ基本的には、子ども本人のやりたいことがベースにあったうえで、決めるようにしていますね。もちろん、親側の金銭的な都合はありますけど...(笑)

永田
ぼくもこの前ちょうど、会社のフィナンシャルアドバイザーと経営計画や家庭の財政について話しているときに「永田さんって、個人としてこの時期までに、このくらいの資産を用意しておきたいっていう希望はあるの?」と聞かれました。

それで、来年から公立の小学校に入学する娘が3年生になるまでには、少なくとも個人として2,000万円くらいの学資は準備しておきたいと答えたんです。それくらいの体力がないと、自分の娘が中学受験するとなったときに、どうしてもそれなりのお金がかかってしまうので...。

根本
うちも長女がいま小学2年生で、公立の学校に通っているんですけど、中学からはもう少し自由にいろんなことができるようなところに、入れようかなと思っていて。やっぱり日本の教育って、基本的にすごく画一的だなと感じます。

すごく細かい例ですけど、子どもが仮に少し難しい漢字を知っていたとしても、まだ学校で習っていなかったら、テストで使ったらダメだって言われるんですね。

永田
ぼくの娘も本を読むのが好きなので、まだ小学校に入学してないですけど、読んだり書けたりする漢字もちょっとだけあるんですね。だから娘には「漢字が書けることはとても素晴らしいことだし、普段の生活ではどんどん使ってくれて構わないんだけど、これからの学校のテストでは、習った漢字だけ使ってね。学校のテストは、先生の教えた範囲がちゃんと身についてるかを知るためにあるから、学校に合わせてあげて」と言っています(笑)

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根本
それってもう、本来は勉強を教えてもらうはずの学校に対して、生徒側が合わせる形になってしまいますよね。

永田
そうですね。ただ、自分の経験もふまえて、小学校は公立のほうが良いと思う側面もあって。ぼく自身は中学から私立だったんですけど、公立の小学校って、いわば「社会の縮図」なんですよね。

根本
私立はどうしても、そこに集まる人にいろんな意味で偏りが出ますよね。

永田
ぼくが私立中学に入って一番驚いたのは、「話の前提条件」が変わったことです。言ってしまば、中学に入って集団の知識レベルが上がったんですね。たとえば、当時スペースシャトルの話をするときに、小学校では「そもそもスペースシャトルとは」という説明をしてからでないと、本題に入れませんでした。それが中学では、その前提を話さなくてもよくなったんです。これは子供心に、カルチャーの違いを感じましたね。

ただ、これがもし公立の小学校を経験していなかったら、前提条件を数段飛ばしていることが当たり前の会話しか経験できないので、人に物事を伝えるのが苦手になっていたかもしれないんですよね。そういう点で、公立の小学校を経験していて良かったなと思います。とは言え、進学に関しても子ども自身の意思が大事なのはもちろんですが。

根本
そうですね。子どもがなにかをやりたいって言ったときの選択肢を、できる限り用意してあげたいという意味で、お金の余裕は必要ですね。そのためにも、ぼくはもっと事業を頑張らないといけないです(笑)

永田
自分ももっと頑張ります(笑)

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対談の冒頭で根本さん、「自分は子育てにそこまでコミットできているわけではないから、この連載企画に向いてないのかもしれない」とポロッと漏らされていました。

しかしお話を伺うなかで、家族はひとつのチームだからこそ、それぞれが得意な領域で役割を果たしていて、根本さんの場合、それがたまたま「事業に集中する」という役割だっただけに過ぎないのだなと思いました。

ご家族やお子様のことを大切にしているからこそ、健康診断の受診料を社員のご家族の分まで負担する制度を設けているし、お子様にできる限り選択肢を提供するために、仕事に精を出されています。

今回、根本さんと永田の対談を聞かせてもらうなかで、改めて「家族の形」はそれぞれなのだなと思いました。


根本さんの経営されている、RingZero株式会社のHPはこちら↓


本連載企画を行う株式会社パパスマイルが運営中の、日本で唯一のベビーテック専門メディア「Baby Tech」のサイトも、ぜひ見てみてください!


▼これまでの対談記事一覧
第1回 【パパ兼経営者の二刀流ライフ】子育てして、親育てされて。父親になって、経営者としても成長できた
第2回 ロボット世界大会最年少出場で入賞、孫正義育英財団3期生の息子を育てたパパ経営者が、社会に描くビジョン
第3回 ベトナムで2人のお手伝いさんと共に3人の子育てをするパパ経営者からみた「ここがヘンだよ日本の子育て」
第4回 キャリアの専門家は、子育てもプロなのか?返ってきた答えは「たぶん上手くいかない(苦笑)」
第5回 みんなの魅力を発見し「プロデュース」!人の魅力を届けるため、YouTuberやECサイトを手がけるパパ経営者


執筆/写真:藤本 けんたろう

最後まで読んでいただきありがとうございます! コーポレートサイト( https://www.papasmile.jp/ )と メディア『Baby Tech( https://babytech.jp/ )』も、ご興味ある方はぜひ覗いみてください!