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小児の死因は国によって違うのか?

昨日は、最近の文献から、子どもの睡眠中の死亡についてのお話をしました。本日は最近の文献をご紹介するシリーズ2回目。アメリカにおける小児の死因統計を中心に国際比較もされた文献です。(N Engl J Med  2019, 379; 25: p2468-2475)

日本における小児の死因

7/17 の記事、「こどもはどうやって亡くなっているか?」で日本における小児の死因をご紹介しました。

順位を再掲すると、

ということになるのでした。

アメリカにおける小児の死亡順位

今回の文献は1-19歳についての統計です。
全体の順位は、1位 交通外傷、2位 銃火器(firearm)による傷害、3位 悪性腫瘍、4位 窒息、5位 溺水、6位 中毒、7位 先天異常、8位 熱中症、9位 火災・熱傷、10位 慢性下気道疾患 ということになります。

年齢別の死因は?

年齢別に見ると、下記のようになります。

1-4歳の溺水はプール、5-9歳はプール、川、湖での溺水で行動範囲の拡大に応じて溺水の場所が変わっています。また、小学校高学年から成人前ぐらいの年齢では、重火器による傷害や、窒息(Table 1から自殺が殆ど)が増えているのは、リスクを取った行動をするようになる、様々な仲間や両親の影響、元々の気質といった、社会性の発達に関わってと指摘されています。

特に10-19歳の年齢では暴力による死亡が増えることが特徴です。そのうち61%に銃火器が関わっているというのは衝撃的です。

アメリカのルイジアナ州で日本の高校生の留学生がハロウィンで誤って撃たれた際、それが陪審員制度によって「正当防衛」とされ、ご両親が銃撲滅を願って署名をクリントン大統領に届けたニュースは当時の私にとって衝撃的なものでしたが、今も変わらぬ状況でこども達が犠牲になっていることは大変辛いことだなあと感じます。

さらに銃火器による死亡は近年増えているんですね。。。

交通外傷と銃火器による死亡の国際比較

交通外傷と銃火器については国際比較が提示されています。青いグラフが交通外傷で、オレンジが銃火器による死亡です。

交通外傷が low-middle-Income countriesで増えるのは何でなんでしょうね。とはいえ、どの国でもそれなりに交通外傷が出ていること考えると、自動運転の車早く出ないかなーとも考えたりします。運転する楽しみが、、という声もあるでしょうが。。(このあたりビジネス的にはかなりおもしろいところですが)
それにしても、アメリカの銃火器による死亡の多さには本当に閉口します。

地域によって差があるか?

地域差による検討もされています。

交通外傷や溺水の田舎(rural)での死亡率の高さは、救急車の現場への現場到着時間や病院への搬送時間など、医療サービスへのアクセスに左右されているようです。多分に社会的な背景が影響します。日本でもここまで極端ではないにしても地域格差がありますね。

興味深いのは、銃火器による死亡は地域差がないように見えますが、地方に比べ都会のほうが、殺人は2.3倍、自殺は2.1倍高いそうで、社会背景、環境が大きく影響しているようです。

まとめと雑感

銃火器におもわず飛びついてしまいましたが、発達段階によって決まった死亡原因があるのはここでも原則通りです。一方で、死因には社会背景が多分に関わっており、地域の事情に合わせた対策が必要だということがいえますね。

【参考文献】
N Engl J Med  2019, 379; 25: p2468-2475

小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン