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やさしさや思いやりが息を止めて沈むんだろうか

これは、くるりの「愛の太陽」という曲の歌詞の一節。



先日、この曲が主題歌となった映画「ちひろさん」を見た。

「ちひろさん」の主人公、お弁当屋さんで働く「ちひろさん」のお話を。



「ちひろさん」という人


この映画を見て、思ったこと。

それは、誰かにとっての幸せが、別の誰かにとっての幸せになることは無いということ。
幸せそうだな、いいな、と見えるものは確かにたくさんあるけれど、その立場を自分に置き換えたとき、または内側に入り込んだとき、幸せであるとは限らない。

そんなことを感じた一節。

みんなで食べた方が美味しいってよく言うけどさ、
みんなで食べても美味しくないものもあるし、
ひとりで食べても美味しいもんは美味しいよ。

家族でする食事の味がしないと嘆くオカジ(女子高生)に発したちひろさんの言葉

人によって、世界の見え方が大きく違うのだということを深く実感していたのがちひろさんだったのかもしれない。

そんな彼女だから、人との関係が深くなる前にその場を去り、彼女にとっての心地いい距離を保ったポイントで生きているのかな。

それは、私が今後の仕事を選ぶ基準のひとつに似ているかもしれない。
私は人と深く関わりすぎると心に支障が出てしまう。だから、いつでも引き返せるように、仕事として向き合うべき主となるものが人以外の方がきっと私は生きやすい。社会で生きていくうえで人と関わることは避けては通れないのだけど、ちょうど心地いいくらいの関わりでいられる場所にいたいな。


※※※



ふわふわしていて、きりっとしていて、掴みどころが無くて、どこか寂しそうで、流動的なちひろさんを捉えた印象的な一言。

ねえ、今から遠くに行こうとしてるでしょ?
遠くに行かなくても、あなたなら、どこでも孤独を手放さずにいられるよ

まるで猫のように、やっと形が整い始めた輪の中から消えようとするちひろさんを察した多恵さんという女性が発した言葉


「孤独を手放さない」
それがちひろさんを表す言葉として凄くしっくりくる。

ちひろさんはかつて出会った人の言葉として「僕たちはみんな人間という箱に入った宇宙人なんだ。みんな違う星から来ているのだから分かり合えなくて当然なんだ。」と言っている。
そんな彼女が、同じ『星』の人と表現している多恵さんの言葉だった。

経験として、稀に、同じ『星』の人だと思う人に出会うことがある。
もちろん、その人に近づきたくなるのだけど、「こわい」という気持ちが勝る。
すべて見透かされるのではないか、と思う。

それ故に自分から近づくことはまず、ない。

相手も同じことを考えているのだろうか。
その人と深く関わるということは起こらない。

だから、ちひろさんと多恵さんのように向き合える関係になれること、憧れだなあと思う。

※※※

描かれた世界が現実的か、どのシーンが要るか要らないか、ということよりも、私はとにかく「ちひろさん」の生き方が好きだった。





伝えきれない 言葉の端が
海の底に沈むんだろうな
やさしさや思いやりが
息を止めて沈むんだろうか
※※※
立ち上がれ涙ぐむ街
途を造れ 何処までも
途は続く ただそれだけで 
歩いて行ける 愛の太陽

愛の太陽-くるり

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