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共通テスト(旧センター試験)/国語

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2023共通テスト/国語/第4問(漢文)

2023共通テスト/国語/第4問(漢文)

【2023共通テスト/国語/第4問(漢文)/解答解説】

出典は白居易『白氏文集』。白居易(字は楽天)は中唐を代表する詩人で、「長恨歌」など日本でも馴染み深い。
漢文は、中国文語を日本語の古語で訓読したものである。古代以来、わが国のエリート層に広く親しまれ、大陸的な世界観や合理的なものの見方は、日本人の思想形成に大きな影響を与えてきた。そうした観点から、現在の国語教育においても、漢文は「古典」の一

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2023共通テスト/国語/第3問(古文)

2023共通テスト/国語/第3問(古文)

【2023共通テスト/国語/第3問(古文)/解答解説】

出典は源俊頼による平安後期の歌論『俊頼髄脳』。
前書きに「殿上人たちが、皇后寛子のために、寛子の父・藤原頼道の邸内で船遊びをしようとするところから始まる」とある。
一般に、古文の読解においても、一文を正確に解釈する力とともに、全文の大意を素早くつかむ力が求められる。大意をつかむ上での着眼点は以下の通り。
①場面を把握する。②「を・に・ば・ど

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2023共通テスト/国語/第2問(小説)

2023共通テスト/国語/第2問(小説)

【2023共通テスト/国語/第2問(小説)/解答解説】

出典は梅崎春生「飢えの季節」(1948年発表)。近年のセンター試験・共通テストの第2問では、戦中から戦後にかけて書かれた小説が頻出している(2019上林暁「花の精」(1940)、2020原民喜「翳」(1948))。また2019年以降、「私」の内面を掘り下げる型の小説が続いている。前書きに「第二次世界大戦の終結直後、食糧難の東京が舞台である。

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2023共通テスト/国語/第1問(評論)

2023共通テスト/国語/第1問(評論)

【2023共通テスト/国語/第1問(評論)/解答解説】

共通テストも3年目となりサンプルが出揃ってきました。形式の複雑性という点では昨年レベル。第1問では、昨年同様、複数テクストからの出題で、共通テストに顕著な「くらべる(類比/対比)」「まとめる(抽象/還元/帰納)」「ひろげる(具体/敷衍/演繹)」といった主体的な思考力、判断力が試されました。ただ各々のテキストに向かい合う姿勢は変わることなく、

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2022共通テスト/国語/第4問(漢文)

2022共通テスト/国語/第4問(漢文)

【2022共通テスト 国語 第4問(漢文) 解答解説】

出典は阮元『揅経室集』。漢詩とその序文からの出題であった。漢詩の出題は3年連続である。
漢文は、中国文語を日本語の古語で訓読したものである。古代以来、わが国のエリート層に広く親しまれ、大陸的な世界観や合理的なものの見方は、日本人の思想形成に大きな影響を与えてきた。そうした観点から、現在の国語教育においても、漢文は「古典」の一つとして、語学的

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2022共通テスト/国語/第3問(古文)

2022共通テスト/国語/第3問(古文)

【2022 共通テスト 国語 第3問(古文) 解答解説】

出典は『増鏡』(【文章 Ⅰ 】)と『とはずがたり』(【文章 Ⅱ 】)。『増鏡』は南北朝期の成立で「四境」の最後に位置する歴史物語。『とはずがたり』は鎌倉期の成立で後深草院に仕えた二条による日記。前書きに「どちらの文章も、後深草院(本文では「院」)が異母妹である前斎宮(本文では「斎宮」)に恋慕する場面を描いたものであり、【文章 Ⅰ 】の内容

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2022共通テスト/国語/第2問(小説)

2022共通テスト/国語/第2問(小説)

【2022 共通テスト 国語 第2問 解答解説】

出典は黒井千次「庭の男」(1991)。黒井千次は「内向の世代」の代表的な作家(京大で頻出する。2016黒井千次「聖産業週間」、2018古井由吉「影」、2020小川国夫「体験と告白」)。私小説の形をとるが、「私」以外の人物の登場の場面が極めて少なく「隣の少年」の偶発的なやり取り以外は、立て看板に描かれた「男」の存在を触媒に「私」の内面がひたすら掘り

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2022共通テスト/国語/第1問(評論)

2022共通テスト/国語/第1問(評論)

【2022 共通テスト国語 第1問 解答解説】

共通テスト2年目となり、評論と古文で複数テキストの組み合わせ問題が出題されるなど、昨年と比べセンター試験からの移行が一段進んだ感じがします。ただ現代文において各々のテキストに向かい合う姿勢は変わることなく、引き続き厳しい時間的な制約の中で客観的に本文を読解し、それに基づき正しい答えを導くことが求められます。
ところで「客観的に読む」とはどういうこと

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2021共通テスト国語/第2問(小説)

2021共通テスト国語/第2問(小説)

【2021共通テスト国語 第2問(小説) 解説講義】

出典は加能作次郎「羽織と時計」(1918年発表)。前書きに、「「私」と同じ出版社で働くW君は、妻子と従妹と暮らしていたが、生活は苦しかった。そのW君が病で休職している期間、「私」は何度か彼を訪れ、同僚から集めた見舞金を届けたことがある」とある。

1️⃣(16行目まで)春になって、陽気がだんだん暖かになると、W君の病気も次第に快くなって、五月

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2021共通テスト国語/第1問(評論)

2021共通テスト国語/第1問(評論)

【2021 共通テスト 国語 第1問(評論) 解説講義】

センター試験から共通テストへ移行しましたが、穏当なものに収まった印象です。第1問の論理的文章については単独テキストで、問5((ⅰ)〜(ⅲ))の読後ノートを使った空所補充問題のみ新傾向でした。引き続き、厳しい時間的な制約の中で客観的に本文を読解し、それに基づき正しい答えを導くことが求められます。
ところで「客観的に読む」とはどういうことか。

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2020センター国語 第4問(漢文)

2020センター国語 第4問(漢文)

【2020センター国語 第4問(漢文) 解説講義】

出典は『文選』(蕭統 撰)。六朝時代の詩人 謝霊運による五言古詩からの出題である。
漢文は、中国文語を日本語の古語で訓読したものである。古代以来、わが国のエリート層に広く親しまれ、大陸的な世界観や合理的なものの見方は、日本人の思想形成に大きな影響を与えてきた。そうした観点から、現在の国語教育においても、漢文は「古典」の一つとして、語学的に、かつ

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2020センター国語 第3問(古文)

2020センター国語 第3問(古文)

【2020センター国語 第3問(古文) 解説講義】 #センター試験 #センター国語 #古文 #小夜衣

出典は『小夜衣』、中世の擬古物語である。擬古物語というのは、平安時代の王朝文学に擬(なぞら)えて作られた物語である。平安後期の院政時代以降、藤原時代を頂点とした風雅な朝廷・貴族文化が衰退する中で、その時代を懐かしむ歴史物語や新しい時代に焦点を移した軍記物語が多く残される。さらに時代が下って、実態

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2020センター国語 第2問(小説)

2020センター国語 第2問(小説)

【2020センター国語 第2問(小説) 解説講義】

出典は原民喜「翳」(1948年発表)。
1️⃣(12行目まで) 私は1944年の秋に妻を喪ったが、少数の知己へ送った死亡通知のほかに、満洲にいる魚芳にも端書を差出しておいた。妻を喪った私は悔み状が来るたびに、丁寧に読み返し仏壇のほとりに供えておいた。紋切型の悔み状であっても、喪にいるものの心を鎮めてくれるものがあった。本土空襲も漸く切迫しかかっ

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2020センター国語 第1問(評論)

2020センター国語 第1問(評論)

【2020センター試験 国語 第1問(評論) 解説講義】 #センター試験 #センター国語 #河野哲也 #境界の現象学

2012東大国語/第一問/河野哲也『意識は実在しない』
https://note.com/pinkmoon721/n/n1f6d77af2f59

出典は河野哲也『境界の現象学』。
センター試験では、厳しい時間的な制約の中で客観的に本文を読解し、それに基づき正しい答えを導くこと

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