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「一つ終わると、待っている」

ようやく手の皸も良くなって、ハンドクリームを刷り込む頻度が

減ってきた。

机の片隅にひっそりと置かれている、ニュートロジーナ。

あなたを使い切ることなく、季節が一つ終わってしまった。

手指を独特のベールで守ってくれたから、感謝の気持ちしかなく、

また来年って言う前に、使い切ろうと思う赤ヤップの憎いやつ。

まだまだ油断ができないので、セーターは仕舞えない。

毛羽だった毛布だって、現役選手のまま頑張ってくれている。

季節の変わり目に、よく体調を崩していたのは気のせいなのか、

外の空気に触れる機会が減ったから、マスクをしているから、

汚れた空気を吸わなくなったから、風邪を引かなくなったのは確か。

一つの季節が終わる度に、何かが役目を果たす時期がやってくる。

他にも役目を果たす予備軍はいる、パイル生地のソックスも、

厚手のブーツも、もう履かないようになって久しい。

ツイードのジャケットは着る機会が少なく、仮眠状態が続く中、

一つ季節が終わってしまった。


春風に吹かれて、公園のベンチに腰掛けて本でも読もうかと、

ポケットに手を突っ込むと、また小銭がポロポロと出てきた。


喉が渇いた、自然な欲求に応えようと思った。

誰にも気遣いなく、渇きを潤すのも悪くはない。

ずっと自由なのだから、この先も自由なのだから、

好きにすればいいのだから。




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