026 | 心のマイナーミュージアム ベスト6

マイベストを挙げるという、もらすとしずむさんの #マイベストnote 企画、また乗らせて頂きますー。今回は心のマイナーミュージアム。自分が訪れた、素敵なのにあんまり知られてない? という美術館や博物館を旅の記録風に挙げます。順位をつけつつ、魅力はそれぞれ無二のものがあります。中途半端ですが6箇所。




6位:地底の森ミュージアム(宮城県仙台市)

'88年、小学校建設予定地の地盤調査で発見された、2 万 年 前 の 氷 河 期 の 森 林 跡 を、床で塞がない建築で完全保存した、ある意味「それだけ?」的ストイックなミュージアム。
例えば東京汐留の遺跡発掘調査は5年?10年?と続きつつ、調査後は予定通りビルが林立し再開発は成されたけど、仙台市太白区の富沢遺跡と呼ばれるこの太古の森跡は、調査後も保存され、小学校の方を余所に建てた。

私が訪れたのは東京から自転車旅行で訪れた10年以上前だけど、辿り着いた時たまたま雨天の平日で、静まり返ったエントランスで入館料払って、そのメインホールの氷河期の森林跡を、ほぼ貸切状態で見た。楕円に抜き出された地下世界は、調査当時の関係者に「これは遺さなければ」と思わせたであろう只事じゃなさがあった。

なんでもこの2万年前の樹木をコーティングする為に、無色透明な特殊樹脂:ポリシロキサンER-007なる物質が開発された。仙台市教育委員会は本気だ そこはかとなく未来の遺跡や異星文明の神殿のようでもあり「スタートレック」U.S.S.ENTERPRISE号の乗組員になったような気分も味わえます。

www.city.sendai.jp/kyouiku/chiteinomori/





5位:海岸美術館(千葉県千倉町)

普通「海岸」と言えば最低でも海に近いエリアを指す。そこを海岸美術館は自転車で向かうのが難儀なくらい山の中にあった。
えらく大雑把な名称な上、事実詐称も甚だしいから、地域の名産品を即売する土産物屋に毛の生えたようなミュージアムかと思い、でも旅の思い出的にはそれも一興とチンタラ向かったら違った。

怪しげで威容のコンクリート打ちっ放しが、巨大なパンパスグラスに隠されるように建つ。これ絶対計画的に植えた上で管理されてるよなー。
ほぼ悪の秘密結社ショッカーのアジト、故 天本英世さんが悪魔的な研究で日々精進してそうな其処は、しかし写真家:浅 井 慎 平 氏の個人ミュージアムだった。で、そんな基本概要が入館料払って入館するまで分からないのだ、なぜっ!


(閉まる前にまずカフェで珈琲を所望、外との気温差でレンズ曇った)


(外観の怪しさに反し中は超素敵空間、作品に寄って撮らなければ撮影可)


小洒落たカフェ・コーナーだってあれば、ホールや回廊も備えた、浅井ファンにとっては聖地と言えそうな立派な写真ミュージアムだ。当然、同氏の往年のアール・ポップから、超有名な麦焼酎の広告写真から、近年の仕事まで網羅されている。そんな、壮大な名刺代わりのようなミュージアムに、なぜほんの一言「浅井」とか「写真」と館名に入れなかったのだろう? 怪しくないお庭もあって散策も楽しい。

http://www.chiba-web.com/chibahaku/11/  (探しても公式HPが無いのも謎過ぎる)





4位:伊豆アンモナイト博物館(静岡県伊豆高原)

残念ながら2016年3月現在、改装で 長 期 休 館 中
小さなミュージアムだけど、その館長がアンモナイトの研究者と言うか愛好家? がその仕事だか趣味だかが高じてミュージアムを構えるまでになってしまったようだ。建物の意匠からして螺旋のカタチをしている変態ミュージアム。

その館長さんがまた、基本お一人で番をしていたけど、話しかけるとアンモナイトに関する熱い想いが炸裂する、素敵過ぎ! 小さいミュージアムながら常設の他に企画展もあったし、また(これはあくまで私が初めて訪れた時の話だけど)展示スペースの台の下の床に、未整理のアンモナイトが箱で山ほど置かれてて、さながら神保町の古書屋みたいな重層感。アンモナイト好きには天国のような空間だ。

ミュージアム・ショップもあり(と言っても直接館長さんから買うのだけど・微笑)ガッツリ標本的なアンモナイトから、アクセサリー風に加工・研磨された小振りのお洒落アンモナイトまで品揃え豊富。研究用のサンプルに、また旅のお土産に最適だ。今検索で辿り着いたFacebookを確認したら、同ミュージアム勤務の人は現在女性であるらしい。人的にも動静があったのだろうか? リニューアルオープンが待たれます。

http://www.ammonite-museum.com





3位:大谷資料館(栃木県宇都宮市)

前述の陸奥自転車行脚の時、一泊目の宇都宮で訪れたミュージアム、以来幾度か訪れている。大谷石の採掘場跡を資料館として公開しているそれは、幾何学的に掘り抜かれた、もはや地下神殿。東映の変身ヒーローものなどでも時々ロケに使われる。ちなみに真夏でも風邪引きそうなくらい室温が低い(公式HPで “本日の館内気温” が確認できる)。

現在も大谷石は採掘されていますが、ここは所謂廃坑で、しかし此処ほどの規模の坑は他にそう無く、その地下空間の歴史も古い。戦時中に空襲を避けるため旧中島飛行機の工廠にもあてられたそうだ。また現代では、'80年代に山本寛斎がファッションショーを催したり、お能が打たれたりした。
近年では坑の音響効果を狙い、アニメ映画「イノセンス」のサントラが録音されたり、一般にイベントスペースとしても貸し出され「地下の教会」なる雛形があり “幻想的な雰囲気の中で思い出に残る結婚式” も挙がったりするそうだ。

広大なソリッド空間は冷気と共に、ジェリー・アンダーソンの「SPECE1999」のMoonbase Alpha隊員になったような寂寥も味わえます。ちなみに大谷石は、現在愛知県の明治村に移築されている旧帝国ホテルにも使われた、ガサガサっとた風合いの石で加工がしやすく、素朴な質感が日本的とされている。

http://www.oya909.co.jp





2位:資生堂企業資料館(静岡県掛川市)

珍しく自転車じゃなくて人間の友人との旅で寄った、資生堂の企業ミュージアム。広告ポスターから、CM映像から、パッケージデザインから、創業当初から現在まで、資料や製品サンプルが一同に集められ、保存&体系的に展示されている。

日本のデザイン史の一端を俯瞰できて見応えありまくり。誰もが知るポスター、CM、商品パッケージや紙器を、時代と共に資生堂という企業戦略の流れから確認できる。
見学無料だけど、これが都市部にあったら、入館料1200円くらいでも見たがる人は少なくないだろう、つか都現美あたりの企画展でそのまま通用する(移設はたぶん不可能だけど)。同社のデザイン戦略を学びたければ東京銀座ではなく、掛 川 に 行 こ う !

ちょっと離れた別棟の「資生堂アートハウス」は所謂美術館スタイルでアート作品を展示してて、所蔵品や今旬な企画展が良い。ちなみに、なんで掛川?かと言うと、同社は掛川に工場(国内外で販売される口紅の大半を生産しているそうだ)があり、その敷地の一部が整理された際、2つの施設は置かれました。

http://www.shiseidogroup.jp/corporate-museum/





1位:クロイスターズ(ニューヨーク市マンハッタン区)

私のようなおノボリがNY観光するなら、マンハッタン島の中心部=セントラルパークと、その公園に接する自然史博物館や、グッケンハイム美術館や、メトロポリタン美術館辺りは見学候補に入れる(実際見たし、素晴らしかったし)。

が、そのメトロポリタン美術館の分館であるクロイスターズを私は知らなかった。渡航前に買ったガイドブックに小さく載ってたけどそれだけじゃ、向かわなかっただろう。
けど幸いにも私は、世界各地を旅慣れている友人の「NY行くならクロイスターズに寄るといい」なる助言を賜っていた。クロイスターズ、なにそれ? と思いつつ、私の趣味性も理解するところの旅の先輩が言うのだから、何かが必ず素晴らしい筈だ! と、空路輪行で持ち込んだ折りたたみでマンハッタン島をグルグル走りつつ、ちょいと北上して向かった、クロイスターズがあるフォート・トライオン・パークに(地下鉄だとメトロポリタンから30分くらい、メトロポリタンの半券があると同日なら割引サービスがあった気がする)。

・・・素晴らしかった。

クロイスターズは1930年代に建てられた、その外観は中世ヨーロッパの修道院なんかを模して今やハコ自体に歴史を宿しながら、そこに 中 世 の 宗 教 美 術 がみっしり詰め込まれている。
私は信仰者ではないけど、そのキリスト教を人生の糧として信じていた古(いにしえ)の人たちの想いが胸を打った。修道院の中庭のような、二重円柱の思索回廊も素敵過ぎ。

展示されてる中世の宗教美術は、ルネサンス以前の絵画や壁画や彫刻や宝飾や、大小のモニュメント。それらは乱暴に言ってしまうとヘタウマです、ルネサンス以後の美術に比べると。でもだからこそ味わい深い。
造られる時に漉き込まれたであろう想いを、美術品たちが思い出すようにポツポツ伝えてくれます。携わった絵描きや職人たちは、技法や見栄えも考えはしただろうけど、神様やその眷属への想いから、やむにやまれず描いたり造ったりしたんだろうなー。

画像は殆ど撮らなかった。作品から、時空を超えて見る側に照射される情報が多くて、それらをピクセルデータより目や記憶に焼き付けたくて、自然と “観る事” に徹するかたちになった。
まぁ幾らかはデジカメ作動させた、クロスターズの外観とかエントランスとか回廊とか。しかし実は私はそのNY観光で持ち込んだ自転車の他にも調子に乗ったせいで事故り、その余波で主だった荷をデジカメごと紛失、画像記録は残っていない(財布とパスポートと自転車と二束三文のお土産は無事、帰国後肩の骨折が発覚・苦笑)。
多少トホホな目に遭いニューヨークの人にご迷惑も掛けたけど、その反省と共にクロイスターズはまた訪れたい心のミュージアムとして、燦然と光り輝いている。

http://www.metmuseum.org/visit/met-cloisters



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