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パンドラ・イン・ジ・オーシャン -5-

「ワナ、ではないようだが」
「ワナだった方がまだマシね」

提示されたポイントは、端的に言ってあからさまな異変が生じていた。
おぼろげな暗闇の海底にぽっかりと1キロはあろう円形の海溝が空いており、底知れない虚無に満たされている。

問題なのはそこから時折あのブラック海坊主が湧き出ては周囲の海域へと散っていく事だ。距離を保って遠間から観察しているこちらには気づく様子は今の所ないが、この穴の底に何かがあるのは間違いがない。

「M・H、アレについて何か分かった事はないか?」
「残念ながら、既存の水生生物のいずれとも異なる性質を持つってことぐらいかしら。交戦時に得た断片も解析してみたけど、やっぱり私の手持ちの遺伝子情報とも合致しないし……もしかして、地球外生命体とか」
「地球外生命体にしてもここ最近活発になったのには何か因果があるはずだ。大昔からこんな海域一帯を死の海にしかけるような存在が活動していたなら、海の生き物は死滅していてもおかしくない」

あの謎としか言いようがない存在について議論を交わしていると、今までとは違った動きが見られた。出ていく時のソレとは比べ物にならないほど膨張したブラック海坊主が浮上してきた穴の方向へと向かっているのだ。

大型潜水艦張りに丸く太く膨れ上がったあの怪生物は、どうゆう事か内側から突き上げられているかの様に形を変えている。俺がいぶかしんだ直後にM・Hから推論がもたらされた。

「もしかして、魚達を捕獲して巣に持ち帰っているのかもしれない」

なるほど、あのブラック海坊主は働き蜂の様に巣穴へと獲物を運び込んでいるという解釈か。確かに手当たり次第捕食するだけなら、こうして拠点へと戻ってくる理由は考えにくい。であれば、大量の獲物を必要としている女王蜂とでも言うべき存在が穴の奥底に存在しているのだろう、余りお目にかかりたくないが。

「R・V、あの帰還したのが穴に入り込む前に撃破して魚達を解放してあげたいけど、いいかしら」
「ああ、そう言うと思った。穴からの増援にだけ注意してくれ」
「ええ」

俺の了承を得ると白鯨は頭部より高振動の音波を放って膨張ブラック海坊主の注意を引くよう試みた。試みはすんなり成功すると、穴へと向かっていた進路をこちらに向けて捕食に移る。

大物の白鯨をも捕食せんと膨張し複数の触腕を伸ばしてくるブラック海坊主へと速度を増して突っ込むと、抜刀した大太刀を天へ掲げるように突きあげれば最大速度でもって喉元に突き立て鍔元までねじ込んだ。

さらには刀を突きさしたままに後方へ伸びる本体へと加速。マグロをさばくかのように腹をかっさばいて内臓を開腹するも、やはり血液的な体液の分泌はない。そもそも生き物なのだろうかコレは?

斬り開かれた腹から解放されたマグロが次々と外へと飛び出してくる。やはりこの怪生物はマグロを運ぶための捕獲要員と言う訳だ。

「R・V!増援が来るわ!」
「了解!」

相変わらず昏い海底でもわかるほどのブラック海坊主の群れが湧き出しているのがこちらのカメラにも映った。その上この膨張ブラック海坊主もまだうごめいている。まったく厄介な相手だな!

【パンドラ・イン・ジ・オーシャン -5-:終わり:-6-へと続く

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