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パンドラ・イン・ジ・オーシャン -20- #ppslgr

「しかし、報酬とかいいのかい?」
「報酬どころか、こっちは借りを返す立場だ」

「借り?」
「大昔から水難救助で何人も助けてくれた以上、それは人間にとって大きな借りさ。例え俺と縁がなくても」

そこまで言って、もしかしたら割と俺と近い縁に彼女達に救われた人物がいる可能性に思い当たった。もっとも、確証のない事なのでそれについては触れずにおく。

「ふふ、そっか。それじゃありがたく借りを返してもらう事にするよ」
「もういいかー?姫さんは俺達の方で送ってくぜ」
「俺の方は。M・Hは何かもらっておかなくていいのか?」

返ってくる回答はわかりきってはいたものの、一応確認しておく。

「ええ、マグロしんじつは解明できたし。魚達も守れたんだから充分ね」
「だよな」
「君達無欲なんだねぇ……わかった、代わりにいつでも遊びにきてよ。歓迎するから」
「じゃあな、二人共。縁があったらまた会おうぜ」

その言葉を最後に通信が途切れる。後は帰るだけだが……イクサの機体状況を確認すると、やはり無理が祟ったのか自力で飛べるように自己修復が完了するには時間がかかる事がコンソール上に示されていた。

「M・H 牽引 たのむ」
「ええ、構わないわ」

カルティマリナは身を翻してクラゲのドレスを一転アルビノイルカへと作り替えると俺が投げ放った鎖を噛み取りイクサ・プロウラを牽引していく。航行不能になった軍艦が友軍に曳航されるような感じに身を任せシートに脱力。

「そういえば」
「何かしら?」
「M・Hの出身海じゃ魚はしゃべらないんだな」

返事はない。冷静に考えてみれば、何も深海の知的生命体がオトヒメ達の集落だけとは限らない。海は広い。もう二三、未知の知性体が居てもおかしくないだろう。そう、例えば魚類をより効果的に使役する武闘派種族とかだ。

「普段魚を暗器にしてるのに、あの時なんで驚いたのかと考えたらそうなった。そりゃコミュニケーション取るのに人語が必要とは限らないしな」
「確かにあの時は驚いたのは事実だけど、仮に私があなたの言う通りに未知の深海知性体だとしたらどうするの?」
「別にどうもしないさ。聞いてみただけで」

散々死線を共にくぐっておいて手のひらを返すような不遜は俺はしない。抱えていた質問をぶつけるだけぶつけて気が済むと、俺はコクピットに放り込んでいた『出撃!始皇帝ロボ!』をダウンロードしておいた電子書籍端末を手に取る。

「そう、じゃあオトヒメを見習って『女は秘密が多いほど魅力的』って事にしておくわね」
「あいよ」

おざなりに返事を返してページを開く。次はそろそろ、もう少し常識的な敵が出てくるといいのだが……

【パンドラ・イン・ジ・オーシャン -20-:終わり】

作者注記

本作はNoteに投稿しているパルプスリンガーをモチーフに小説を書く、という企画の10作目だ。参加者は23人?いるので後13本だ、ガンバレ俺。

と言う訳で今回の主役はこちらの方。

無銘=サンです、凶器の魚介類が唸って飛ぶ!

キャラ立てはご本人様の作品からの特徴を立てて「穏やか武闘派お姉さん」な感じに、戦い方も特徴的なのでそのまま採用する形にしました。魚介類武器にするのはあまり見ないよねー。

ソウルアバター『カルティマリナ』のデザインニングにおいては、強い拘りを持つ海中での活動を拡充するような、水中の生物の能力を活用する機能を持った兵器として設定を肉付け、作中では出番がなかったけど多分マンボウになったりヤドカリとかカニとかマグロ形態もあるはず。

ちなみに『カルティマリナ』という名前は中世に存在したらしい海の魔物をまとめた奇書のタイトルをもじって付けました。

 以上、ご参加、ありがとうございました。

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