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ガイズ・ミーツ・怪獣 -3-

 長く白すぎて距離感が損なわれる廊下を駆けて悲鳴の元までたどり着いた俺達が目撃したのは、スカムに沈むパリピ男だった。

 いや、ここは屋内であり、開けっ放しの化学器具が散乱する部屋に人一人が沈む深さの床などあるわけがない。すなわち、この男は『消化』されているのだ。

 事実、沈みゆくように溶けるパリピ男は既に完全にこと切れており、こちらが手を出すよりも早く、ケミカル油膜発光をまとうスカムだまりへと見る見る飲み込まれて消えた。十畳大ほどの実験室には、他に人間は一人としていない。俺達以外には。

「遅かった……!」
「T・D、やるぞ」

 この消化速度を鑑みるにこのスカムスライムとでも称するべき存在は恐ろしく貪欲であり、また殺傷能力も高い。気の毒だが、先客の連中は肝試しの場所選びを誤ったのだ。

 ハリネズミの様に身体に括り付けた武装のうち、既に抜刀していたロングマチェットとククリソードを構える俺の横で、T・Dは一般的な武術の型には当てはまらない風変りなファイティングポーズを取る。

 鎌首もたげる蛇めいてスカムが隆起すると、そのまま食らいつくようにスカムが向かってくる。T・Dの前に出ては迫るスカム物体に対し両手の刀剣でもってクシが交差するようにみじん切り、更には剣圧をもってスカムを壁に叩きつける。汚泥に染まる白い壁。

 一般的には、国民的RPGの影響でスライムは大したことない生き物のイメージが定着している。しかし今俺達の前にいるスライムには、そういったイメージには一切該当しない。

 おおよそ高度な生物に存在する急所がないどころか、通常の物理干渉ではろくにダメージを与えられない上に先ほどの消化力。コイツが街に流出すればゾンビパニックどころの騒ぎではすまないだろう。

 事実、先ほどの攻撃の影響などなかったかの様にスカムスライムは沸き立ち隆起すれば、今度は三つ首の汚竜の如くその首を突き出される槍めいて伸ばす。

「ここは僕が!」

 今度はT・Dが俺の前に立てば、大きく霧を払う動作にも似て右腕でもって前の空間を薙いだ。スカムの寸前を腕が通過した直後に超自然の翠炎がまほろばの如く部屋を埋める。

「……!……!?」

 炎に巻かれて暴れ狂うスカムの塊。こちらを巻き込まんと幾重にも伸ばされる触腕を俺は食虫植物高速伐採機の様に高速で斬りはらった。翠炎が燃え盛り、伸ばす触腕を切裂かれるほどにスカム塊は小さく縮んでいき、最後には燃料が燃え尽きたかの如く消失。

「思ってたよりも遥かに物騒なのが出て来たもんだ」

 スカムの撃退と同時に俺が握っていた二本の刀剣は、スカムがもたらす腐食によってひび割れ、鋼の刀身は砕けて散った。焼けこげた床に金属の破片が散らばる。

 ろくに何も残っていない床を凝視するT・Dに習って、略式念仏を唱えた。例えどの様な死に方であれ、死人が生き返る事はない。それが軽い気持ちで始めたお遊びが原因であってもだ。

「いこう、T・D。コイツがたまたまここに居ただけの殺人スライムってのは考えにくいからな」
「ああ」

 周囲に最大限の注意を払いつつ、部屋に背を向ける。これは手早く解決しなければなるまい。

【ガイズ・ミーツ・怪獣 -3-:終わり:-4-へ続く

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