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映画『日日是好日』感想

予告編
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過去の感想文を投稿する記事【65】

 本日、WOWOWにて放送予定の本作。……昨日のうちに投稿しといた方が良かったかしら。でも7月3日(月)にも放送予定らしいので、まぁ良いかと。

 ちなみに、本作のネタバレではないのでタグは付けていませんが、本項ではフェデリコ・フェリーニ監督の映画『道』(感想文リンク)のネタバレが含まれていますので、ご注意ください。公開当時に書いた感想文(いつもより短め)ですが、よければどうぞー。


 あと、本作の原作本である森下典子さんの同名エッセイも素敵でした


五感で味わう


 本作の主人公・典子(黒木華)にとって、フェデリコ・フェリーニの『道』はとても思い入れのある映画らしい。子供の頃に観た時(「ディズニーが観たい」と言う小学生の娘に、かの『道』を見せた彼女の両親の感覚もなかなか面白いというか何というか笑)には何とも思えなかったのが、大人になって改めて観直した際に、随分と感動したんだそうな(まあ、大学生になって初めて『道』を観た自分には当時の彼女の気持ちを正確に知る由も無いのですが、言わんとすることはわかっている……つもりです)。

 当然、原作のエッセイにも引き合いに出されていた話ではあるのですが、原作には無い形で『道』へのオマージュ、或いはリスペクトを思わせるシーンがあったのは、映画作品である本作ならではの魅力だったんじゃないかと思います。


 ——「お茶」って『道』みたいだから——典子が「お茶」に対して感じたことを『道』を引き合いに出して、何とか言葉にして美智子(多部未華子)に伝えようとしたシーン。或いは父(鶴見辰吾)に伝えられなかった感謝の気持ちを夢の中で叫ぶシーンなどで、海岸を舞台に選んでいるところなんかまさにって感じですよね。居なくなってしまったからこそその存在の大きさを痛感した彼女の姿と、『道』の中でジェルソミーナを失ったザンパノの姿を重ねていたんじゃないかとも勘繰ってしまいます。(勿論、フェデリコ・フェリーニの『道』は良い映画だと思いますが、観ていようが観ていまいが本作は十分に楽しめるのでご安心を)



 モノローグがいくつもある本作ですが、決して説明的なわけではなく、何より最も大切な、大事なことだけは敢えてモノローグにしないでくれているように感じられたのもとても良かったです。それは言葉にしてしまっては絶対に意味が無いもの。気付く喜び、知る、見つける楽しみを重んじる精神がちゃんと活きている。それは、本作の中でも描かれていた「お茶」とも相通ずる部分。「あ」と言いたくなる間があり、その後に典子の心の声が漏れる、、、そんなモノローグなんです。

 約25年、茶道教室に通った経験について記した森下典子さんのエッセイが原作の本作は、決して特別な仕掛けがあるわけじゃない。映像が飛び出す3D、迫力の大画面のIMAX、立体感ある多次元的音響ドルビーアトモス、ましてや最新の体感型4DX、MX4Dなんて仰々しいものではありません。でも観客は、まるで自身の五感全てを用いて味わっているような感覚になれる、そんな素敵な映画です。


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