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#17 池田省三氏が夢見た世界と今の介護保険制度、そして沖縄の現状と。

 介護保険制度の次期改正に向けての議論が始まっている。僕ら介護事業者にとって制度改正はゲームのルールチェンジそのもの。ちゃんとキャッチアップしておかないと痛い目にあう。

 で、最近上がってきている改正案を眺めていて思うのは、やっぱり池田省三氏の『介護保険論』(2011)で述べられている通りの流れで順調に(!?)議論が進んでいるということ。

 ということで今回は制度改正の方向性と、国は何を考えているのかを、池田氏の『介護保険論』の内容に沿って書いてみたいと思う。※池田氏の『介護保険論』については過去のブログにまとめてるので合わせて読んでほしい。

 まず初めに、通所系サービスの介護報酬は今後も「見直し」「適正化」が基本だろうね。ちなみに見直しとか適正化とかセコイ言い方がされているけど要するに減額するという意味だ。

 見直しの背景にあるのはもちろん「増大する社会保障費の抑制」や「持続可能な制度の維持」なんだけれども、もうちょっと掘り下げてみたい。

 2000年に施行された介護保険制度以前の介護サービスは、措置制度として行政の判断により必要な人に必要なものが提供されていた。今の生活保護と同じくくりの「公助」の意味合いが強かった。つまり高齢者自身に介護サービスの選択の自由は無く、受けられるかどうかも予算次第みたいな感じだった。

 それを要介護状態になっても「必要な介護サービスを自分で選択する権利」を持つことで、尊厳ある世界に変えようとしたのが介護保険制度の根底にある思想だ。
 具体的には、税金で賄われていた「公助」から40歳以上の国民が介護保険料を負担して財源にあてる「共助」の仕組みに転換された。そして、高齢者自らの選択を促すために介護サービスを市場に開放した!ここは医療制度とは異なる部分である。そうして池田省三氏が描いた “矜持ある晩年” が迎えられる理想の世界が、介護保険制度のもとで広がるはずだった。

制度は出来たが、根底にある思想が国民に浸透していない

 制度がスタートして約20年が経過した今、介護保険制度はたぶん、彼の描いたような使われ方はされていない。池田氏も『介護保険論』でそのことを憂いていて、このままでは制度の持続すら難しいと言い切っている。

 その要因の一つはモラルハザードなんだろうと思う。例えば訪問介護の生活支援サービスの使われ方である。訪問介護の生活支援はやっていることは家事代行サービスに近いが(当事者からの反論はあるだろうが少なくともそう見られてしまっている)、それを自己負担数百円とかで頼めるわけだから非常に便利で、だからこそ一度利用するとその先もずぅーっと使い続けることになる。介護サービスは医療と違ってこの不可逆性が強いゆえに給付が爆発的に増えてしまう構造になっている。(病気が治っているのに治療し続ける人はいないが介護サービスは一度使うと無くてはならないものになりがち)その上、使う側も提供する側も利用を抑制する動機が無いために歯止めが効かない。そりゃあ財源なんてなんぼあっても足らんわ。

 もう一つ忘れてはいけないのは、介護保険制度は「共助」のシステムなので、給付が増えれば負担も増える。つまり、年金やお給料から毎月天引きされる介護保険料はどんどん上がってその分手取りが減っていく。僕は思うんだけれど、そもそもこの因果関係すら理解している人も多くなくて、それが一番根深い問題なんじゃないかなと。僕たち自身の当事者意識の低さよね。

みんな知ってる?沖縄の介護保険の現状

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平成 28 年度 介護給付費等実態調査の概況より

 実は沖縄県って介護サービスの一人当たりの給付額が全国トップなの。日本で一番、1人当たりに掛けてる介護費用が高いってこと。なので沖縄県は働く世代の平均所得は全国でも低い部類なんだけど、所得から天引きされる介護保険料も全国一高いのだ!社会保険料も上がってるし、手取り、無くなっちゃうよ。まぁそれでも中々関心は高まらないだろうから、介護サービスは今後もどんどんと使われ、保険料はまだまだ引き上げられ、僕らの手取りはますます減っていくんだと思う。

今の制度改正議論で叫ばれていること

 こうした状況を放っておくと介護保険制度は持続できないので、国としてはルールチェンジして、国民がどう思っていようがもう関係なく、本来のちゃんとした使い方をするしかないように強制(&矯正)していくだろう。

 それは、「自助」「互助」が前提にあっての「共助」としての介護保険サービスなんだという軸を明確にし、まずは自助努力で出来ることはやって、次に互助として地域で支え合えることは地域でやろうということである。

 国は、自助や互助で対応できそうなことにまで介護保険サービスが利用されていることに対して何とかしたいと思っている。それは、池田氏が本で繰り返し主張していたことだ。例えば、先にも述べたが訪問介護の生活支援サービスだったり、要介護2までの訪問介護と通所介護などだ。
 言い方を変えると、専門性が必要なサービスは介護保険(共助)で対応し、そこまでの専門性が必要ないものは地域住民やボランティア(互助)で支えていく、そういう線引きで国は仕分けしていくというわけだ。

 この考え方自体はまぁ分からんでも無いが、要介護2が素人のボランティアで対応できる程の軽度だという国(財務省)の認識には僕は賛成出来ない。だって要介護2は軽度じゃないでしょ?

じゃあどうする?

 今後も共助(介護保険)のシステムの中で事業を続けていくなら専門性を高めていくしかない。「あなたがやってるそれ、ボランティアでもできませんかね?」と言われたらアウト。互助(地域支援事業)へと仕分けされてしまうだろう。

 通所介護であれば、通所介護における専門性とは何か?何をする場所なのか?を明確に定義した上で高めていかないといけない。弊社は来年1月にリハビックス読谷店、そして夏にはリハビックス南風原店をOPEN予定である。リハビックスも9店舗体制になるが、引き続き通所介護の専門性を突き詰めた事業所を運営し、一人でも多くの「その人らしく生きる」を実現していきたい。

 さて、こんな長いブログを最後まで読んでワクワクした人は、向いているので一緒に働きましょう。

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