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教育における「評価」の意義

 今回は教育における「評価」の意義について考えていきたいと思います。
  皆さんは、「評価」と聞くとどのようなイメージを持つでしょうか。学校における評価で最も一般的な方法は、定期テスト、通知表による評価です。通知表はテストの点数だけでなく、授業態度や提出物によって行われ、いわゆる「まじめで良い子」にしていると評価が良くなる、といったイメージを持っている人も少なくないと思います。勉強が得意でない子にとって、「評価」はあまり良いイメージの言葉ではないと思います。

 今回は、評価は教育的にどのような意義があり、どのような効果があるのか考えていきたいと思います。

1.評価の目的

 学校では様々な方法で評価が行われますが、評価にはどのような目的があるのでしょうか。
 評価は生徒の学力を数値化し、可視化することで、保護者に学習状況を伝達することが目的だと考える方が多いと思います。しかし私は、保護者に子どもの学習状況を伝達することは評価の目的ではなく「手段」であると考えます。
 テストの点数や学習状況を評価する理由は、生徒本人や保護者にそれらを伝達することで、学習方法、生活習慣の改善を図り、学力を向上させるためであると考えます。つまり、評価は、生徒がよりよい学習を行うための手段として機能しなくてはなりません

2.現在の評価方法について

 現在の学校の評価は上記の目的を果たすための手段として機能しているのでしょうか。学校では主に定期テストと通知表によって評価を行っています。学校の先生は正しい評価を行うために、授業内のプリントや、小テスト、提出物等の成果物などを活用します。ここではこれらを授業内活動と呼びます。これらは、定期テストだけでは測ることのできない「関心、意欲、態度」や思考力、表現力を評価するうえで有効な活動であると考えられます。
 一方で、これらの評価方法には問題点も存在すると考えられます。それは、本来生徒の学力向上のための手段であるはずの小テストやレポート、ワークシートなどが、評価をするための手段として用いられてしまうということです

 図のように、小テストやワークシートといった授業内活動の目的が生徒の学力向上のためではなく、適切な評価を行うためになってしまいます。先生は評価に必要な要素を授業プリントやレポートに盛り込んで生徒を評価し、生徒も学習効果を高めるためではなく、それらによってよい評価を得るために活動を行います。これでは、授業内活動は、目的であるはずの学力向上に貢献することは難しいといえます。

授業内活動はもちろん評価を適切に行うためにも機能しますが、あくまで「生徒の学力向上」という目的のための手段であるということを忘れてはいけません。

 生徒の学力向上のための手段に「評価」や「授業内活動」があり、授業内活動は評価を適切に行うための手段としてもよく機能します。しかし、すべての活動は生徒の学力向上のための手段であるということが、何よりも大切です。教育活動の目的は評価のためではなく、学力向上のためにあります。

3.評価を学力向上につなげるには

 評価は生徒の学力向上のため手段であると述べましたが、そのために評価をどのように機能させればよいのでしょうか。
 まず、評価は勉強のモチベーションのための「外発的動機づけ」の役割を果たさなくてはいけません。評価によって勉強意欲が低下してしまうというのは本末転倒です。
 評価とは本来「価値を評する」ものであり、生徒の悪いところ、欠点を指摘し、修正や改善を促すものではありません。それでは生徒のモチベーションは低下し、評価の良くない科目は嫌いになり、苦手になっていきます。評価によって生徒のモチベーションを高めるためには、まず「どこまでは達成できたか」という良い面を評価します。評定が5段階で1の生徒も、少なからず達成できた点は存在します。それらをしっかり評価します。そして、もっとよくなるためにはどうすればよいかを考えるように促します
 ここで重要なのは、評価の数値に対して良い、悪いという感覚を持たないことです。「評定は1、2は悪く、5に近いほどいい」という考え方は学力が低い層の生徒のモチベーション低下につながるうえに、評価を目的として学習を行ってしまうため、評価されないものに対するモチベーション低下が発生する可能性があります。これをアンダーマイニング効果といいます。先生がこれは「成績に含まない」といったプリントや模試はやる気が低下した経験はあるのではないかと思います。数値で良し悪しを判断するのではなく、変化で考えることが大切です。例えば評定が1→2のようにあがったとしたら、評価の目的である学習方法の改善、学力向上のために機能しているため、「良い」と考えるべきです

4.まとめ

 今回は評価というテーマで考えていきましたが、私が思うポイントは以下の3点です。

・評価は「学力の向上」を目的とした教育活動の一環である。
・授業内活動は学力向上のため手段であり、評価を行うための手段ではない。
・評価を学力向上のために機能させるにはモチベーションを高めるための動機付けにならなくてはいけない。

お読みいただきありがとうございました。

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