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がん患者のシネマカルテ①入院生活にまさかの「jackass」

※この記事には下品な内容が含まれています。
※「マジメな映画」については記事の後段で触れています。
※いずれも個人の感想です。


 がんによる入院で気が滅入りそうな時は、米国の人気番組「ジャッカス」が効果的だと気付きました。意外ですが。

「とんま」

 あらためまして。

 ジャッカスというアメリカのケーブルテレビ発の人気番組をご存じでしょうか。ジョニー・ノックスビル率いるスタントパーソンらが、「アホや…」としか言いようがないパフォーマンスを繰り広げるお下劣な番組です。英語で書くと「jackass」。手元にある英和辞書によると、「とんま」という意味です。

 今回、ご紹介するのは映画版の「ジャッカス フォーエバー」。
 
 冒頭から、クリス・ポンティアスの陰部に緑色のペインティングをほどこした「怪獣」が出現。操り人形のように糸で操りながら、ミニチュアの高層ビルが建ち並ぶセットで大暴れさせます(その後、なぜかカミツキガメにクリスの「バット」をかませる)。
 
 一方、怪獣から逃げ惑う人々にふんしたスティーヴォーは、道端にあった仮設トイレ(工事現場でよく見かけるアレ)に身を隠しますが、上下にひっくり返されて汚物まみれに。

 開始からわずか3分で、下品の極み。作品への期待が高まる、、、ではなくて、行く末が心配になってきます。

 シーンが変わった後は、ジョニーが猛牛に突き飛ばされたり、地面に横たわったエレン・マクーギーの局部にホッピングで飛び乗ったりと、おなじみのメンバーによるムチャクチャのオンパレード。もちろん、新メンバーも出てきます。リーダーであるジョニーの後継候補の筆頭は、顔の前で自ら蛇をたきつけて、くちびるや鼻をかまれまくったプーピーズでしょうか。唯一の女性メンバーのレイチェル・ウルフソンも、スタンガンをなめたり、サソリに刺されたりと奮闘します。

 個人的には、全裸になったスティーヴォーの陰部に女王蜂をくくりつけ、大量の働き蜂をまとわりつかせたあたりで、笑い死にしそうになりました。リンパ腫以外で死ぬとは思いもしなかったです。

永遠に…

 ここまで読んで不快になった方もいらっしゃるかもしれません。ただ、出演者たちが時には命をかけて撮影に臨んでいることを想像すると、パフォーマンスを無事に乗り切った後に互いをたたえ合う姿には誰もが胸が熱くすることでしょう。たぶん。

 ジャッカスは学生時代から見てきましたが、世に出てから20年余りもたつんですね。映画の告知画像に「some people never learn」という一文が添えられていますが、彼らには「学習」なんかせず、永遠に、まじめに、アホをやり続けてほしいと心から願っています。

デトックス

 ここのところ、抗がん剤の副作用に怯えながらも入院したら血栓が見つかったり、ほぼ一日中ベッドの上で安静にして過ごさざるを得なくなったり、休職が長引くにつれて将来への不安が募ってきたりと、へこむことが相次いでいました、、、と書いていたら、明日の検査の追加案内が来ました。本日やった検査で何か見つかったのかな。

 話がそれますが、検査の追加って、動揺するんですよね。医者は「あくまで『念のため』です」って言いますが、「患者からすると、何かあるに違いない」と考えてしまいます。

 ま、病気が寛解しない限り、あるいは寛解してもこうした試練は続くのでしょう。だからこそ、時には自分自身もアホになってすべてを忘れる時間が欠かせないように思います。「デトックス」のように、良くても悪くても体内にある感情をいったん放出して、新鮮な気持ちで再び歩み出すイメージ。私にとっては、ジャッカスがそんなきっかけをもたらしてくれました。

 映画鑑賞や読書など、うまく入院生活に取り入れて、どんな状況にあっても前向きに生きる環境をつくりたいですね。

 とりあえず、子どもがくれたお守りを握りながら、サッカーワールドカップの日本対クロアチアの観戦に備えます。

【その他の鑑賞履歴】

<映画>

▶「アバウト・タイム~愛おしい時間について~」★★★

 21歳になり、過去をさかのぼれる力を持っていることに気付いた主人公が、人生を立て直す物語。自分だけでなく、家族や友人も助けるために奔走する姿が胸を打つ。過去にとらわれず、悲しみを抱えながらも日々の幸せをかみしめて生きていくことの大切さを説く。「ラブ・アクチュアリー」と同じように何回も見てしまう、隠れた名作。どちらの映画も監督はリチャード・カーティス。

▶「余命10年」★

(初)
 「肺動脈性肺高血圧症」という難病を患い、余命宣告された女性が、中学校の同窓会で出会った男性と恋に落ちる。葛藤を抱えながらも幸せを模索する女性と、生きる意味を見失いながらも女性に添い遂げて再起する男性が交錯する。

▶「コンスタンティン」

 キアヌ・リーブス主演。「悪魔払い」というキャラクター設定が好きで、暇な時についつい見返してしまう。レイチェル・ワイズやピーター・ストーメア(ミッキー・ロークと間違えて覚えていた、、、)、シャイア・ラブーフ、ジャイモン・フンスー、ティルダ・スウィントンら、実はキャストが豪華。

▶「グラン・トリノ」

(初)
 クリント・イーストウッド主演。ベトナム戦争を経験した偏屈な白人のお年寄りが、ギャングに狙われる隣家のアジア系住民を助けるため立ち上がる。

▶「最高の人生の見つけ方」★

 他人を蹴落としてのし上がった孤独な金持ち(ジャック・ニコルソン)と、誰からも愛される実直な自動車工(モーガン・フリーマン)という正反対の二人ががんを患い、同じ病室で出会う。ともに余命いくばくもないと知らされ、語り合ううちに意気投合。人生の最後を楽しむ旅に出る。

▶「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」★

 実話に基づく作品。若くして小切手詐欺に手を染めるフランク・アバグネイルをレオナルド・ディカプリオが、それを追い詰めるFBI捜査官のカール・ハンラティをトム・ハンクスが軽やかに演じる。

▶「ダークナイト」

 個人的には、「メメント」に続き、クリストファー・ノーラン監督の天才ぶりを実感させられた作品だが、初見時ほどの衝撃はなかった。深夜に眠い目をこすりながら見たからか。同じ監督作品であれば、「インセプション」や「インターステラー」の完成度の方が高いという印象。ただ、「バットマンの話かよ」と侮ることなかれ。名作であることは間違いありません。

▶「オースティン・パワーズ デラックス」

 特にコメントなし。ひたすら肩の力を抜いて楽しむお下劣作品。マイク・マイヤーズのコメディアンとしての才能に目を見張る。

<本>※いずれコメントを追記できれば。

▶小澤輝真、2019年、「余命3年 社長の夢」、あさ出版(手記)
▶稲空穂、2021年、「特別じゃない日」、実業之日本社(マンガ)
▶ランス・アームストロング、2000年、「ただマイヨ・ジョーヌのためでなく」、講談社

※2022年12月14日修正


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