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未知の恐怖、既知の平穏。

同居人?いや先住民か。

 地方移住に際して、ある程度の覚悟をしなければならないのが虫の多さだ。自然が身近にあるメリットは、人間に限らず、虫にとっても同じである。

 ムシキング世代にかすっている身で、相応な虫知識はあるものの、都市化社会の中で育っている影響もあり、いわゆる都会っ子のステレオタイプにありがちな虫耐性のなさは健在で、正体を知るまでは普通にビビる。

 そんなある日の夜、照明をつけたら視界にそこそこ大きな物体が壁に留まっていた。目が悪いため、裸眼では至近距離まで近付く必要があるため、メガネを掛けるために一時後退する。

 矯正視力となって、まじまじと見た瞬間、私は安堵した。「軍曹〜!」Gの敵、人間の味方、正義のアシダカグモだった。見た目こそイカツイものの臆病者かつキレイ好きの益虫で、糸を張らずにGをはじめとする害虫を消毒、捕食し、半年程度で群れを全滅させると、新たな餌を求めて家を去る漢の中の漢である。

 とはいえ、成虫が足を広げると、人間の手のひら位の大きさになるのに対して、まだ握り拳にも満たない。恐らく子どもだろう。とにかく大きくて、不気味なビジュアルから反射的に追い出してしまう人は多いが、夜行性のため、日中に視界に入る場所にはほぼ居ない。

 そんなアシダカグモと共存できると、G対策をする必要がなく、そもそもGを見かけることも激減する。だから私はアシダカグモを見つけたら、できるだけ屋内に居続けて貰えるように飼い慣らす。

 その意味で、ペット不可物件では禁じ手の、ある種の同居人ではあるが、私が入居する前から棲みついていた、人類の味方である軍曹を、無理やり追い出すほど私は冷酷ではない。

正しく知れば、過度に恐れずに済む。

 恐らく都会っ子の虫嫌いは、自然が身近にないことから、虫の生態を知る機会がなく、得体の知れないものに対する、恐怖心から来る嫌悪感なのだろう。それらは知識があることで、ある程度軽減することができる。

 私はアシダカ軍曹に日頃の感謝を込めて、Gを見つけたらあえて半殺しにして、差し入れるようにしているが、一般には理解されない。飼っているヘビの餌にマウスを差し出すのと、構図は全く同じだと思うが、まだ後者の方が理解されるような気がする。

 我々が普段なら防戦一方のGが、軍曹に捕食される様子も、シラフだとキツいが、アルコールで頭を悪くしている状態だと、案外まじまじと見れるものである。大事なことなので何度も記すが、私に虫耐性はない。あくまでも本能から来ている嫌な感覚を、理性で上書きしているに過ぎない。

 これは虫に限らず、食わず嫌い全般に言えることで、日本人の場合は、投資もこの感覚に近いのではないだろうか。

 NISA口座を開設している人は、2021年のデータだと1,000万ちょっとと、国民の1割にも満たないらしい。その中で運用している口座は6割程度に留まる。

 NISAで株式投資をしている日本人が、全体の6%程度だと考えると、いかに日本人の金融リテラシーが低くて、株式投資を誤解しているかが窺える。

 今や株を始めるのに大金は必要ではなく、数百円、数千円で始められる。大損する可能性はゼロではないが、現物取引に留めていれば、有限責任だから投資したお金がゼロになることはあり得ても、借金が残ることはない。

 世界経済が今、凄まじいインフレに頭を抱えている状況下で、預金一辺倒では実質的な価値が目減りする一方で、リスクを取らない選択にも、少なからずリスクが伴っているが、知識がないとそれに気付けない。

 老後資金不足問題も、標準的な家庭像として、ひとりがサラリーマン、もうひとりが専業主婦(夫)で、平均的な収入から算出した年金収入と、平均的な家計支出で収支を計算し、平均寿命まで生きた場合で算出しているが、算出根拠となる条件そのものが、参考にならない人の方が恐らく多く、数字だけが独り歩きした感が否めない。

 正しく知ることが、過度に恐れることなく、漠然とした不安を抱えないための、最良な手段である。

リテラシー向上が、より良い社会を創る。

 最近だと、生成AIに漠然と恐怖心を抱いているのがマジョリティで、興味本位で試しているのがアーリーアダプターと言ったところだろうか。私もnoteのアイディア出しに使ってみたが、肌感覚として、正しく入力しないと、欲しい答えが返ってこない。

 つまり全知全能の神様でも何でもなくて、扱う人間によって、脅威にもなるし、ポンコツにもなる。その意味で、現状のAIは入力者の写し鏡的な側面が強いと感じた。

 もちろん、膨大な入力データによって、時間経過とともに人間が欲しい答えとなるように、調整しながら精度が上がっていくのだろう。2023年6月時点ではまだその段階ではなく、過渡期に他ならない。

 これらは試しに使ってみれば、別に大学でデータサイエンスを履修していなくても肌感覚が掴める。

 何も知らずに漠然と反対して、他人の足を引っ張る前に、やれることがあるのではないかと思うが、そう思わない人が多数派だからこそ、低成長な30年間を維持し続けている。そんな国でイノベーションなど起きるはずがない。

 マイナンバーカードひとつとっても、あらゆる個人情報が集約、統合されることで行政側の管理コストが削減できたり、保有資産を捕捉することで、年金や医療保険がなくても困らない人への支援を調整することもできるだろう。

 あらゆる情報が可視化されることによって、支援を必要としている人に、これまでよりも多くのリソースを振り分けられる可能性があることを理解していれば、何も紙の保険証にこだわる必要はなく、廃止で問題が生じたら、都度対策を考えれば良いだけの話である。

 各々がリテラシーを高めることが、未来により良い社会を創る何よりの秘訣なのかも知れない。


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