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【創作童話】アンドロメダの涙#4〈完〉

#4〜20分前〜
【最終話】

そのピストルは
明らかに
わたしを狙った。

大きな悪意が
わたしに向けられた。
わたしの叫びは
宙に弧を描いた。

わたしの
血が熱い。
クレマチスが預言した
きっかり2時間
クレマチスの預言は
的中したーー。

【20分前】

青い花畑では
ケプラーの音が鳴り響いていた。

芳しい香りと
青い光を放たれた空気は
朝のように
透明だ。

ガイドは
わたし達を
ゆっくり降ろすと
帰りのバスで困らないように
わたし達のことを
待っていてくれている。

青い花たちの
大合唱は
深く澄んでいて
ここが宇宙なのか
楽園なのかも分からない。

その一輪に
セイラが手を伸ばした時
花畑の中から
黒く輝く
何かがチラついた。

花畑に潜んだ
イアーゴー巡査は
狙いを定め
トリガーを引いた。

セイラは気付いていない。
セイラの体内から
一粒の涙が
それに向かっていく。

ブルーだ!

ブルーは
その銃弾に圧をかける。
擦れて擦れて
ブルーの体温は上がる。

やがて熱湯になった。

それでもブルーは
諦めない。

熱湯は飽和水になり
飽和蒸気となって
銃弾を押し返す。

セイラの目の前で
銃弾は
ポトンと下に落ちた。

「ブルー!!!」

セイラは叫んだ。
だが
イアーゴー巡査は
諦めなかった。
また狙いを定め
トリガーを引こうとした時

天から
巨大なペンタクルが
降ってきた。
宇宙預金だ!!

大きな悪意は
時に己に
戻ってくる。

イアーゴーは
巨大なペンタクルに潰され
もう身動きができない。

「ブルー!!!!」

セイラは何度も
何度も呼んだ。
だが
ブルーは消滅していた。
もう飽和蒸気となっていた。
セイラは
枯れるほど泣いた。
体内から流れた
150粒の涙が
セイラの周りに輝き
凄まじい光を放った。

アンドロメダ座だ!

『セイラ、ごめんなさいね。
イアーゴー!
やめなさい!!

私は決して
盗まれたんじゃない。
隠れたの。

人間はいつでも
空を見上げれば
我々星座が
いつも当たり前に
存在すると思っている。

なんてぞんざいな扱いなの。

そして人間達は
それを大切な人や
愛する人々にも向けている。

だから
懲らしめてやりたかったの。
いつも近くにあるものを
もっと大切に
扱ってほしいの。

星も大切な人達も
大切に扱わなければ
消えていくのよ。
だから
私はブルーが
セイラの体内に入った時
一緒に隠れたの。
人間の脳は
2つ同時には、
認識できないように
プログラミングされているからね。』

アンドロメダは
セイラに向かってウインクをした。

セイラの包んだ
手の中には
何かが光っている。

ブルーが蘇った。
「セイラ?ボク、どうしたんだろう」

セイラはブルーを
抱き締めた。
あたたかな青い花達が
唄う
この花畑で。

ーーーアンドロメダは
夜空に戻ることになった。
ブルーも一緒に。

「セイラ、ボク
君のこと忘れないよ。
君との時間を。」
「わたしもよ!
地球に帰っても忘れない。
空を見る度
きっと想い出すの。
あなたが
わたしを救ってくれたことを。」

晴れて、セイラは
アンドロメダ盗みの容疑から
不起訴され
無罪が確定した。

「ねぇ、クレマチス、
わたしが
2時間以内に死ぬっていう
預言があったけれど…」

「セイラ、
運命は変わりましたわ。

人間は
行動によって
運命を
変えることが
出来るんでしてよ。

ブルーの行動によって
アナタの運命は変わった。
そして
これからの未来も
人間は変えることが出来る。
そうですわ、
ぞんざいな扱いをせずに
大切に想う
気持ちがあれば
きっと。」

ノヴァーリスの花畑で
青い花達は
今日もケプラーの
作曲した唄を歌う。

あなたが大切な人を
失わないように。

いつでも
あなたが傍にいてくれるのは
奇跡で
出逢えたことも
抱き締めてくれるのも
奇跡。

星も、人も
永遠ではない時の中で
銀河を奏で
宇宙を唄う。

そう、わたしも
あなたの一番近くで
きっと。


【アンドロメダの涙】
〈完〉

by六花💌

お付き合い頂きまして
ありがとうございました!
出版社様
是非ぜひお目に留まりましたら
ご連絡下さい!
お待ちしてます!

次週は
「六花💌の独り言SP」
アンドロメダの涙の制作秘話を
ご紹介します!
次週も遊びに来てね!
by六花💌


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