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【創作童話】ストライプの雨#1

世界から、星が消える時。
それは雨の日でした。

そして僕は雨の日みたいな鳥。
色がないのです。
七つの海も探してみたけれど
僕の羽根は透明でした。

空高く飛んで、青空に羽根を透かしても

それは僕の色じゃない。

空の色を借りただけ。
僕はなんて無力で、哀れな鳥なんだろう。

それでも、消える事も出来ないのです。
僕は透明でも、存在しているのです。

雨宿りをしていた僕は
大木の枝に羽根を透かせて
思い詰めていました。

僕なんて
いなくなっても誰も気付かない。

だから、消えてしまえばいいのに。

大木から、僕は落ちました。
そして
地面に打ち付けられると思っていたのです。

すると、クッションのように
水たまりが僕を受け止めたのです。

僕はビックリして、

「僕が見えたの?」

と尋ねました。

水たまりは痛そうに
「あの枝に止まっているお嬢さんが
言ったんです。
どこから声がするんだろう?」

水たまりに浮かんだ僕が
そちらの方を向くと
美しい羽根のお嬢さんがこちらを
優しく見つめて
天使のように微笑みました。

僕の胸は張り裂けそうなくらい
はかはかして
一瞬で恋に落ちてしまったのです。

「鳥はね、星座になるために飛ぶの」

お嬢さんは、
何か唇を動かして
音も立てずに飛んで行きました。

僕はうっかりしていたのです。
どちらの方角に飛んで行ったのか
覚えていないのです。

僕は、お嬢さんを探し始めました。

色んな木や
シロツメクサの花畑や
黄色の野原。

お嬢さんに似合いそうな花冠を
見つけた時
胸がざわっとしたくらいです。

せめて
方角が分かれば…

渡り鳥だったのかもしれない。
でも、方角が分かれば

風のように追いかける事が出来るのです。

沈んでいる僕に、
あの水たまりが話し掛けました。

「俺と同じだな。
その雨粒じゃなきゃ駄目なんだ。
どれでも良い訳じゃない。

どんな雨粒でも良かったのに
それじゃなきゃ駄目になる。

大切なものは みんなそう。」

雨が空から星を盗った
静かな夜でした。

僕はせめて、あの日お嬢さんが
言った何かを知りたいと思いました。

僕のことを、お嬢さんが
受け止めてくれるかは分からない。

だってこんな透明だもの。

でも、その言葉を知ることが出来たら
僕は死んだっていいのです。

キロキロと叫んで上へ上へと飛びました。

死んだって、いいのです。
最初から
いなかったようなものなのです。

僕は、僕が消えていくような
気がしました。

いいえ、僕は、初めから
いなかったのかもしれません。

あの子の手掛かりすらなく
名も知らず
僕は消えるのか…

僕は思いました。それでいいと。

僕は自分が、
ずっと嫌いだったのです。

色のない鳥だと思っていたから。

僕は目を閉じました。

その色かもしれない。

瞼の裏に、その色がありました。

「僕に、色があった!」

微かに、羽根に、その色がついたのです。
ずっとずっと、探していた色。

こんなに近くにあったなんて。

僕は高く高く鳴きました。
あたらしく生まれたような気分だったのです。

自分を、愛している。
僕はそうじゃなかったから、
色がなかったのです。

人を愛する前に、
自分を愛するべきだったのです。

「僕は、僕を愛するんだ!」

そう叫んで僕は飛びました。
どこまでも、どこまでも。


【予告】
僕が辿り着いたのはまさかの⁈

次回【ストライプの雨#2】
〜ブラック・スワン〜

来週水曜日をお楽しみに!
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六花💌

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