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【説教集×英語学習10】 悪を遠ざけ善を行う #220

2024年2月18日(大斎節第1主日)



説教集より

Certaine Sermons or Homilies 1547-1571, Rickey and Stroup, 2nd ed, 1993, II, p93.

… cease to do evil, learn to do well, seek to do right, relieve the oppressed,  be a right judge to the fatherless, defend the widow, break our bread to the hungry, bring the poor that wander into our house, clothe the naked, and despise not our brother which is our own flesh; 

「悪を為さずに善を為そうとし、正しいことを行おうと努めるべきです。虐げられた人を救い、父親のいない子どもに正しいことを行い、夫を亡くした女性を守り、飢えた人にはパンを分け与え、彷徨える貧しい人を家に招き、裸の人には服を着せましょう。わたしたちの肉親である兄弟を蔑ろにしてはいけません。」(第二説教集4章2部:全訳はこちら↓)


ヨハネのひとこと

「さあ、私の父に祝福された人たち、天地創造の時からあなたがたのために用意されている国を受け継ぎなさい。あなたがたは、私が飢えていたときに食べさせ、喉が渇いていたときに飲ませ、よそ者であったときに宿を貸し、裸のときに着せ、病気のときに世話をし、牢にいたときに訪ねてくれたからだ(マタイによる福音書 25章34~36節)。」

今回は聖書のこの有名な箇所にかかわる説教の一部を紹介しています。考えてみればこれらは人間として「当たり前のこと」です。わたしたちはこうした当たり前のことを思うほどできてはいません。しようと思うとき、何かが邪魔をしてしまうものです。その邪魔するものを打ち捨て、たとえ小さなことに見えても善を行おうとする意志を持って、また、それをしようとする勇気を持って、今週も毎日を送りましょう。


英文の解説

命令文のオンパレードです。この箇所に命令の動詞が10個あります。cease、learn、seek、relieve、be、defend、break、bring、clothe、despise の10個です。どれも基本動詞で、端正で力のある動詞ばかりです。音に出してみるとよくわかります。和訳するにあたって、命令文だからといってすべてを「~しなさい」「~してください」とすることは避けました。また、10個も動詞があってただ繋げて訳すのもどうかと思いますので、だいたいの大きな意味のまとまりで3つに分けました。

cease to do evil と learn to do well には evil と well の対比があります。その次の seek to do right までを一つのまとまりと考えました。悪を為さず、善を為そうとし、正しいことを行おうと努める。この具体的な事柄が次のまとまりです。10個の動詞でいえば relieve から clothe までがそれです。

このまとまりのなかには、いわゆる「the + 形容詞 = ~の人々」の形がいくつか見られています。the oppressed(虐げられた人々)、the fatherless(父親のいない人々)、the hungry(飢えた人々)、the poor(貧しい人々)、the naked(裸の人々)がそれです。

to be a right judge to the fatherless の judge は名詞で辞書的な意味としては「裁き手」となり、したがって直訳すれば「父のいない人(子)に対しての裁き手となれ」となりますが、ここは「保護する者」のニュアンスが大きいと思い、また、前後の命令文と調子を合わせて、「父親のいない子どもに正しいことを行う」としました。

bring the poor that wander into our house の箇所については、that が the poor を先行詞とする主格の関係代名詞、that wander の2語で形容詞節となっています。「彷徨える貧しい人を家に招く」と訳しました。

最後の命令の動詞 despise だけでひとつのまとまりとしました。ここは despise not となっており、現代英語では don't despise とするべきところです。目的語は our brother で、この brother は「同胞」「兄弟」の意味の集合名詞です。これを先行詞とする主格の関係代名詞が which ですが、who としていないのは、brother を「人格をもった人間」とではなく、「集合としての組織体」と考えているからでしょう。この which に導かれる形容詞節 which is our own flesh の flesh は「肉親」の意味です。したがって our brother 以降は「わたしたちの肉親である兄弟」となります。人類を神の子らと考え、そのうえで全人類を兄弟とみての表現です。

今回取り上げた説教集のこの箇所ですが、ぜひ音読をしてみてください。基本動詞の力強さと包含する意味の大きさや深さを軸に、言葉のダイナミズムを感じてほしいと思います。これが教会で自分の目の前で語られていることを想像するとき、クリスチャンとしてのこの世での使命を強く説かれていると思わずにはいられません。


英文の見取り図



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