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アメリカ留学大学生が大号泣した一夜

1-1で迎えた延長前半2分、ペナルティーエリア内でボールを持った相手選手がゴール前にいる味方にクロスを上げる。

ゴール中央でボールを受けた相手選手は、自チームのディフェンスのスライディングタックルを受けながらも、ダイレクトでシュートを放った。

ボールは、体を投げ出したゴールキーパーの下腹部に当たり、シュートコースは変わったものの、ポストをかすめながら、サイドネットを揺らした。

と同時に味方選手の多くは地面に崩れ落ちた。

スタンドには試合開始直後から、これまでに経験したことのないほどの声援を相手チームに送る、相手チームのファンがずらり。

シュートを決めた選手は一目散にスタンドに駆け寄った。

相手ベンチの選手とスタッフもコート内に入り乱れ、歓喜の輪を作っていた。

そこから先はあまり覚えていない。

というか涙があふれて見ることができなかった。


アメリカに留学に来て早7か月半が経とうとしている。

僕がアメリカに留学している理由の一つに、アメリカでサッカーがしたかったからというものがある。

そして、現在通っている大学のサッカー部に所属し、8月からシーズンが始まり、全15試合のリーグ戦を戦い、10月下旬に決勝トーナメントに進出した。

そして昨夜、準決勝が行われた。

タイトルと前述の内容からもわかるように、ファイナルスコア1-2と、僕のチームは準決勝で敗北を喫した

ここの敗北をもってシーズンはすべて終了となり、僕もあとは残りの授業を受けて、少し旅行をしたら帰国となる。


僕は5歳からサッカーをしているため、試合に負けて悔しいという思いは数えきれないくらいしてきた。

特にその中でも、この試合を最後にこのメンバーとプレーすることはもうこの先、一生ないという感情に襲われるということも、それぞれの最終学年での大会で突きつけられる現実として何度か経験してきた。

小学校6年生の最後の大会(名前は忘れました)、中学校3年生の高円宮杯、高校3年生の選手権、大学3年生のリーグ戦最終節、そして今回の準決勝での敗北。

アメリカに来て、この大学のメンバーと一緒にプレーをしたのはたったの4か月程度かもしれない。

でも、高校3年間を共に過ごしたメンバーとの最期を迎えた、高校3年生の最後の大会と同じくらい、僕は寂しさにあふれていた。

なかなか言語が伝わらないチームメイトとプレーしたからだろうか。

アメリカという新たな地でのサッカーだったからだろうか。

自分のミスでチームが負けたからだろうか。


サッカーはスポーツなので、トーナメント方式の試合であれば、チャンピオン以外のチームは負けて、チームとしての終わりを迎えることになるという、とても残酷な競技だ。

アメリカサッカーでは、90分で決着がつかず延長戦に突入すると、ゴールデンゴール方式と言って、延長戦内の20分間の中で先に点を決めたチームがその時点で勝利になるという、ルールを採用している。

今回の試合は1-1で90分を終え、延長戦に突入し、約2分後に失点、その瞬間に敗北が決定したのである。

このゴールの瞬間は、このメンバーで一緒にサッカーをすることの終了と、僕のアメリカサッカーの終了も同時に意味していた。


「自分のミスでチームが負けた」と上述したが、この試合、僕はフォワードとして、90分+延長の2分の92分間ほぼほぼフルで出場した。

そして、前半に同点ゴールを挙げたものの、後半だけでも3本のビックチャンスを迎え、キーパーのファインセーブ、ミスショット、クロスバーとすべてのチャンスを決めることができなかった。

サッカーのポジションで重要なポジションはミッドフィルダーと言われたり、フォワードと言われたり、キーパーだとも言われたりするが、フォワードというポジションは本当にプレッシャーの大きい、大事な役割だということを長年感じている。

フォワードは、自分がチャンスを決めればチームは勝つし、自分がチャンスを外せばチームは負ける

だから負け試合のほとんどは、フォワードに非があると言っても過言ではないくらいに責任が重い。
(フォワードにチャンスシーンが一度もなく負ける試合は論外)

決めればヒーロー、外せば戦犯というポジションがフォワードなのである。

これまでのサッカー人生を振り返っても、僕がチャンスシーンを外したことで負けた試合はもう数えきれない。

そのたび、周りに合わせる顔がないくらい情けなさを感じる。

今回の敗北もそうで、試合終了と同時に、チームメイトや監督、応援しに来てくれた友達にどういう顔をしたらいいか分からない。

周りは「お前はよくやったよ。」と言ってくれたりもするが、よくやっていたら勝っている。

よくやってないから負けている。

なかなか泣き止まない僕の元に多くのチームメイトやコーチ陣、スタッフが慰めの言葉をくれたが、慰められれば慰められるほど、涙があふれてくる。
(この気持ちを分かってくれる人は多いと思う笑)

結局一番最後まで泣き続け、もう帰っているチームメイトいた。(笑)

試合を見に来てくれた友達が、

ドイツワールドカップ後の中田英寿やる?」(ドイツワールドカップで試合に負けた元日本代表の中田英寿選手が、試合後しばらくの間、コートの真ん中で寝転がっていた件)

と冗談交じりに声をかけてくれ、この写真を撮った。

一応、本家の写真も載せておきます。↓

久しぶりにここまで悔しい経験をした。

でもその日の夜、いろいろ考えていると、これが僕がサッカーにここまで熱狂している理由なのかもしれないとも思った。

どんなにすばらしい選手でも、サッカー人生で負けるということや苦しい時期を過ごす経験は必ずある。

これまで大事な大会すべてで勝って、優勝していたらそれはそれで楽しいかもしれないけど、ここまで濃い経験はできていないように思う。

僕の場合は、この悔しいという経験こそが次の一歩への活力になっている気がすると思った。

負けるからこそ考えることは多いし、負けるからこそ次こそは、とモチベーションが高まる。

もう22歳と、学生サッカーとしては終わりに近づいている年齢だけど、本当にサッカーから学ぶことは多い。

この経験もこれからの僕の人生の一部として財産にしていきたい。

本当にアメリカでこの経験ができてよかったと思う、そんな一晩だった。


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