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朝井リョウ / もういちど生まれる・どうしても生きてる

育休期間って読書し放題だよね!なんて思われるかもしれませんが、
実際、全くそんな時間が無いんですね。。
自分も育休に入る前は、1日のスケジュールをあらかじめしっかり決めて、
どこかしらには自分と妻それぞれの、自分のための時間を作ろう、
なんて思っていたんですが、

んなん無理です。

基本的には何かしら事件が起こる状態が常に続くので、
13時〜14時は自由時間!みたいなことはありえません。
13時に子供が寝たから、、少し時間ができたけど、、
でもいつ起こるか分からないから、、どうしよう、何しよう、
あぁでも夕飯の買い物も行かなくちゃ。。

みたいな感じなので、何かの作業を本腰を入れてじっくり行う、とか、
集中して何かに向き合い、の類は不可能です。

じゃあTwitterはできるんかいって言うと、

Twitterはできます。

いやー改めてTwitterはありがたい。
ちょっとした時間に、ちょっと見るだけで色々な情報を得られたり、
なんか発信したかったらちょちょっと打ち込めば発信できるし。
何なら寝かしつけしながらでもできる。
で結局Twitter沼にハマってしまうわけですね。

いや今回Twitterの話じゃねぇわ。

読書です。
読書の話。
自分にとって大切な趣味である読書が、今なかなかできない。
上で書いた通り、まとまった時間が取れないわけです。
なので、あまり読書に時間が割けない育休期間に読んでいるのが、
短編集やエッセイ。
これらは短めに区切られているので、突発的な事件が起こった時にも、
読書を中断しやすいわけです。
では本題。(長々とすみません。)

朝井リョウ / もういちど生まれる

朝井リョウと言えば、『何者』
そこで描かれた就活生の苦悩と葛藤のリアルさ。
そしてTwitterを巧みに利用した表現は、初めて読んだ当時かなり衝撃でした。
それから朝井リョウにどハマりしたわけですが、
この育休期間にチョイスしたのが短編作品『もういちど生まれる』でした。

今作では、19歳から20歳になる若者を、これも素晴らしくリアルに描いています。
大学生、予備校生、専門学校生…就活生のそれとはまた違う、何者にもなれないその瞬間。
解説の西加奈子様(豪華!)が
『「瑞々しさ」は、それが失われ始める瞬間に、もっとも瑞々しい』
と素晴らしい表現をされてました。
それなんだよ…それ。
さすがだよ西加奈子。
そう、朝井リョウはその「瑞々しさ」を描くのがうますぎるんだ。
『桐島、部活やめるってよ』に代表される、高校生の全開の「瑞々しさ」も、
『何者』や『何様』で描かれた就活生の「瑞々しさ」が失われた後も、
そして本作の、20歳の「瑞々しさ」が失われ始める瞬間も。

あと彼は、とにかく「何者にもなれない人間の苦しさ」を分かりすぎている。
自分はまさに「何者にもなれない」人間で、
「でも何者かになれると思っていた」人間でもある。
だから、とにかく刺さる。痛くて痛くて、血を吐きそうになるくらいに刺さる。
いつも朝井リョウの作品は、吐血しながら読んでます。

本作に関しては、20歳になる、またはなったばかりの若者たちの、
まさに「若さ」ゆえの「苦悩」だったり「瑞々しさ」が描かれていて、
それは自分にとっては「懐かしいなぁ」とか、「羨ましいなぁ」とか、
どこか他人事にも感じられる距離感で楽しむことができました。
全部で5編。連作短編集になっているので、
それぞれの繋がりも含めて楽しんでいただければと。

にしても自分の20歳。大学2年生か。

単位を落としたら即留年の『数学演習2』
2ヶ月に1回は故障する右膝。
結果が出るまで帰れない物理実験。
5,000m17分切らないと出られない箱根予選会。
テストの後、教授に土下座しに行くかを友達と本気で相談した理学部棟の屋上。
実験を終えて向かう、もう誰もいない部室。

…戻りたくないわ。

朝井リョウ / どうしても生きてる

そしてもう1作品。
『もういちど生まれる』の続編ではないのですが、
同シリーズ的な立ち位置でしょうか。
『もういちど生まれる』で描かれる若者たちの苦悩は、
決して暗いものではなく、
キラキラしていたりドロドロしていたり、
時には眩しくも感じるものでした。

しかし本作の主人公たちは、30代半ばから40代。
本作を読んでいて感じるのは、
「生」への強い渇望では無く、
ある年齢を過ぎたあたりから生まれてくる、
「生」への諦めに似た覚悟。

「生きたい」ではなく、「生きなければいけない」
「それでも、生きていなかければいけない」

主人公たちがそれぞれの物語の最後に抱く”覚悟”は、
年齢の近い自分にとても生々しく刺さってくる。
それが分かるか分からないかで言ったら、ハッキリと分かってしまう。
なので全6編、読んでいて苦しかったです。
とても苦しかった。

きっと20代の頃に読んでも何も感じなかったかもしれない。
無敵だったあの頃とは違い、
先が見えず生きづらい環境で、
色々なものを背負ったり、捨てたりしながら、
それでも、どうしても、生きてる。
生きていかなければいけないからこそ、
とてつもなく共感をし、前を向けたような気がしました。

こちらは連作ではないので、6編それぞれで、
それぞれの異なる”覚悟”を受け止めてみてください。


いやー、しかし結構なダメージを受けたな。。
『正欲』がそれはまぁなかなかのダメージだったので(褒め言葉)
『時をかけるゆとり』で口直しをしたんですが、
またダメージを受けたので、『風と共にゆとりぬ』でもう一回リカバリーしようと思います。

この人、エッセイと小説のギャップが凄すぎるんだよなぁ。。

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