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「姫」になる始まり【0〜5歳編】①

※なるべく時系列で書いています。過去投稿を一読していただければ伝わりやすいかと存じます。



過保護と甘やかし。


祖母について。


祖母は世間体を何より気にする人でした。
他所様には優しく親切な良い人でしたが、身内には怪物でした。
とにかく言葉がキツく、攻撃的で、人を貶すのに躊躇がありません。そして価値観が古く、頑固で、論理性に欠けていて、感情が常に剥き出しでした。
母を言葉の暴力で責め立て、父とは毎日のように怒鳴り合いの喧嘩をしていました。

そんな人に、私は育てられました。
育てられたと言うより、ペットの様に愛玩されていました。
父は育児に参加しませんし、母は家事と姉の面倒を見るのでいっぱいで、私と祖母がセットになるのは自然なことでした。

後に、母は
「姫ちゃんがお婆ちゃんに懐いちゃって悔しかった。あーあ、盗られちゃったなぁ、と思った。」
と私に語りましたが、
決して盗られたのではありません。
母がやらねばならないタスクが許容量を遥かに超えていたから、私を放棄しただけです。

過去を振り返っても、現在の母を見ても、彼女に未就学児2人を同時に育てる技量はありません。
祖母に私の面倒を丸投げしたのが事実です。



祖母は私を猫可愛がりする一方で、母の悪口を吹き込んだり、私が何か失敗すれば感情のまま怒鳴りつけました。私は耐えられず身を隠し、静かに泣いていました。
流石に良心が痛んだのか、毎度隠れられて面倒になったのか、祖母は次第に怒鳴らなくなっていきましたが、私への行動自体が減り、気がつけばただ一緒にいるだけとなりました。毎日、薄暗い居間でぼんやりテレビを眺めていることが多かったです。私は怒鳴られるよりはマシだと思っていたので特に疑問や不満はありませんでした。
今思うことは、何て勿体なく孤独で空虚な時間だったろうと無念で仕方ありません。
幼少期、最も身近に居た大人なのにコレと言った思い出が浮かびません。
私の情緒が育つようなコミュニケーションはありませんでした。
「大好きなはずなのに嫌な存在」という不思議な人でした。


私を猫可愛がる大人たちと差別される姉。


私は父に似てパッチリとした二重の大きな目で、外国人やハーフによく間違えられました。
ただ単に縄文顔で濃いだけなのですが、それを可愛い美しいと褒められてきました。
祖母だけでなく両親も、特に父は自分の遺伝子を強く感じるためか絶賛していました。
おかげで、ナルシストでパッチリ二重主義というしょうもない価値観を長いこと抱える羽目になりました。
実際の私は豚鼻の醜女です。

私がチヤホヤされている間、姉は黙っていました。
姉は一重の薄味な顔で、私が覚えている限り特に褒められることはありませんでした。
そのうえ母は、姉に厳しく、私に甘く接していました。明らかに私に非があることでも、姉を叱りました。姉に家事手伝いをさせても私にはさせませんでした。
姉はよく生意気なことを言って、両親、特に母を怒らせていました。
姉が泣いて謝り倒しているのを遠巻きに眺めて
「かわいそう」
「また怒られてる馬鹿だな」
「何でこんなに怒鳴られなきゃいけないんだろ」
「私はあんなことしない」
と思っていました。
だから私は、失敗はしても悪いことはしない、大人しい「良い子」でした。
母も私に「良い子」のレッテルを貼っていました。私の中身を見ようともせずに。
何と愚かで恐ろしいことでしょう。

姉にとって私は邪魔な存在だったはずです。
甘やかされ、楽をしていると思ったことでしょう。
実際は、必要な経験を得られず、自立を阻まれ、痛みを自力で克服する学習に失敗し、異常な程に傷付きやすい心身虚弱な人間が着実に出来上がりつつある状態でした。しかも「結果的に何とかなる、希望は叶う」「私は美しい」「ありのままを愛されるはず」という妄執を植え付けられていました。
健全な自己愛の発達を阻害され、将来、自分の機嫌一つろくに取れない大人になるとは誰も思っていなかったのが怖いところです。

思えば姉も不憫です。
姉の人格形成にも悪影響な環境でした。
幼少期の姉との思い出は意地悪されたことばかりで、正直、私も姉を疎ましく思っていました。姉が何かする度、両親は怒鳴り散らすので私も怖くて辛かったです。
両親が姉妹を差別しなければ姉は捻くれずに済みました。
生意気、揚げ足取りだと非難された姉の言葉もほとんどは大した事のないものだと、今なら分かります。
何故、あんな仕打ちを受けなくてはならなかったのか。
何故、私たちはあんなにも非力だったのか。
何故、両親は子どもの人格を尊重してくれなかったのか。
ただただ悔しくて悲しくて仕方ありません。
私たち姉妹の苦悩は生まれ落ちたその場所から始まっていて、私の「普通」は異常な事ばかりです。

さらに、弟が生まれることで私の世界は狂います。

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