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シェイクスピア作品感想リスト

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シェイクスピア作品の感想をまとめました。気になる作品があれば、ぜひご覧ください。
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『終わりよければすべてよし』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『終わりよければすべてよし』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

この作品は1601年から1606年の間とされており、一般的にシェイクスピア作品のなかで「問題劇」と呼ばれる『トロイラスとクレシダ』及び『尺には尺を』などと共に括られています。三作どれもが、暗く苦い笑いと不愉快な人間関係を軸に描かれており、これはシェイクスピアの喜劇時代に執筆された『十二夜』や『お気に召すまま』のような幸福感が表現されている喜劇

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『ヴェローナの二紳士』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『ヴェローナの二紳士』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

ヴェローナの紳士であるヴァレンタインとプローテュースは、互いに固い友情を交わし、何事も隠し事のない強い絆で結ばれていました。しかし恋愛についての考え方は正反対で、ヴァレンタインはそのようなものに関心を持つことができず、見識を広めたいという思いからミラノ公爵のもとへと旅立ちます。反してプローテュースは恋人ジュリアのもとを離れる気が起きず、ヴェロ

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『タイタス・アンドロニカス』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『タイタス・アンドロニカス』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)は、劇作家として活躍する初期の1588年から1593年の間にこの劇を書いたと考えられています。『タイタス・アンドロニカス』は、彼の作品のなかで最も暴力的で血生臭い作品の一つであり、名誉の力と暴力の破壊的な性質を題材として描かれています。

執筆当時のエリザベス朝時代では、ラテン文学と称されるオウ

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『サー・トマス・モア』ウィリアム・シェイクスピア 他 感想

『サー・トマス・モア』ウィリアム・シェイクスピア 他 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

サー・トマス・モア(1478-1535)は十六世紀に法律家として活躍した思想家です。ロンドンの法律家のもとで生まれ、裕福な環境のなかで育てられました。オックスフォード大学で古典の哲学や文学を学びましたが、家業に倣って法律家を目指すため、法律学校へと移ります。法学を修めると、その才覚はすぐに芽生え、多くの人々の支持を得ます。その後、二十代にして

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『お気に召すまま』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『お気に召すまま』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

本作『お気に召すまま』の種本は、トマス・ロッジ『ロザリンド』(1590)と、作者不詳の物語詩『ギャミリン物語』(1400)が用いられています。両作品に描かれる残虐な死の場面や、淫蕩で不幸な場面などはシェイクスピアによって姿を消され、おかしみや機知に富んだ会話に溢れた作品へと変化されています。シェイクスピア作品のなかで、最も甘美で、最も幸福な物

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『アントニーとクレオパトラ』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『アントニーとクレオパトラ』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

本作『アントニーとクレオパトラ』は、『ジュリアス・シーザー』の後の舞台を描いており、これらを二部作と括る場合もあります。シェイクスピアは『ジュリアス・シーザー』を転換点として、その作風に強く深い悲劇性を帯びさせていき、『ハムレット』『オセロー』『マクベス』『リア王』の四大悲劇を生み出します。その後、『ジュリアス・シーザー』に呼応させるように、

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『ジュリアス・シーザー』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『ジュリアス・シーザー』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

プルターク英雄伝を概ねの種本として描かれた本作『ジュリアス・シーザー』は、シェイクスピアにとって絶頂期に差し掛かろうとする成長著しい時期に執筆されました。『空騒ぎ』『十二夜』などの喜劇、『ヘンリー四世』『ヘンリー五世』といった史劇を生み出していたなか、浮かび上がるこの悲劇は特徴的な立ち位置と言えます。喜劇でありながら強く浮かび上がった悲劇性を

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『リチャード三世』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『リチャード三世』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

1339〜1453年まで続いたプランタジネット家(イギリス)とヴァロワ家(フランス)によるフランス王位をめぐる実質的な領地争い「百年戦争」。この両諸侯による長い争いは、両国において封建領主の没落をもたらし、結果的に王権が強化されることになりました。国王のもとで統一的な国家機構(絶対王政)を構築し、主権国家となって領地と国民が紐付けられました。

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『間違いの喜劇』(間違いつづき)ウィリアム・シェイクスピア 感想

『間違いの喜劇』(間違いつづき)ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

本作『間違いの喜劇』(間違いつづき)はシェイクスピア作品の中でも初期に執筆された喜劇で、最も短い作品として知られています。古代ローマの喜劇作家プラウトゥスの「メナエクムス兄弟』という双子の人違いが引き起こす作品を種本として書かれ、これに双子をもう一組増やしてスラップスティックな印象を強めています。また中心となる双子アンティフォラス兄弟の父イー

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『じゃじゃ馬ならし』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『じゃじゃ馬ならし』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

執筆時期は修行時代末期に該当する1590年頃、ロンドンにおいてエリザベス朝演劇が隆盛する時期で、演劇の大きな波が押し寄せ、多くの劇団が組織され、多くの劇場が建てられていました。ウィリアム・シェイクスピアはこの波の中にあり、俳優として活動する傍らで演劇台本の執筆も多く書き上げていました。『ヘンリー六世三部作』を始めとして、悲劇も喜劇も書き上げる

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『ロミオとジュリエット』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『ロミオとジュリエット』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

執筆時期は明確には判明していませんが、『ヴェローナの二紳士』『夏の夜の夢』などと同時期と見られ、シェイクスピアが秀作を生み出していく成長時代に書かれたと見られています。主としての種本はマッテオ・バンデッロの『ロミアスとジュリエットの悲しき物語』というイタリア散文詩が用いられ、憎み合う二つの貴族があり、両家の子が互いに恋に落ち、悲しみの終幕を迎

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『ヴェニスの商人』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『ヴェニスの商人』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

種本として中世イタリアの物語集『イル・ペコローネ』(阿呆)の一つから取られており、借金、貿易、ユダヤ人、人肉担保、法学博士、求婚など、大筋の設定が活かされています。

当時のユダヤ人は、イギリス内での地位や富に関わらず、人間以下の扱いを受けて社会から排斥されていました。当時のキリスト教下において、ユダヤ人がイエス・キリストを磔刑に処したとされ

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『二人の貴公子』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『二人の貴公子』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回の作品はこちらです。

近年の研究により、ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)の執筆と認められる作品が増えています。シェイクスピアは国王一座の作家であったことから、演劇台本を書くことが仕事であり、役者が演じるために用意するものであったことから、署名の無い作品が多数存在していました。本作『二人の貴公子』も同様に正規作品と見做されていませんでしたが、初版のタ

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『エドワード三世』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『エドワード三世』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)は、エリザベス女王一世の統治下における宮内長官による劇団一座にて演劇台本の執筆を手掛け、数多くの作品を生み出しました。統治がジェイムズ一世となると、劇団はそのまま国王一座として受け継がれ、過去に書き上げられた作品も引き取られました。宮廷用の演劇台本として書かれた作品は匿名の状態で後世に継がれたた

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