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詩をかく

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自作の詩です。
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記事一覧

腰痛にささげる詩

腰痛にささげる詩

「腰いたし
つわものどもが
夢の跡」

「柿くえば
腰が痛むぞ
法隆寺」

「腰痛や
月は東に
日は西に」

ああ、俺の死が目の前に!
腰が壊れ、体は壊れ!
死、死!
そして地獄!

逆立ち人間にささげる詩

逆立ち人間にささげる詩

僕は逆立ち人間
いつでも逆立ちをしているぞ

朝目覚めたら
まずは右手をベッドから出して床に降り立つぞ
お次は左手
ビシっと立ち上がり、足を空中に持ち上げるぞ

家の外に出るときは靴を両手に履くぞ
スタスタと華麗に歩く
公園まで行ったら僕はお友達とサッカーをする
もちろん逆立ちしたまま
僕は手でボールを打つぞ

生きていることに意味はないぞ
逆立ち人間はマイノリティ
どこの店に行っても入店を断られ

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想像力にささげる詩

想像力にささげる詩

僕は想像力くんがかわいそうだ
想像力くんはいつも泣いている
「おれは人を攻撃したいわけじゃないのに」

想像力くんはいまや人を殴るための武器になっている
人は言葉のリボルバーに想像力くんを装填する
激しく興奮しながらスマートフォンをタップし
そこに文字を並べ立て
引き金、すなわちツイートボタンを押す
さあ発射!

「僕は想像力を軽視する人がきらいですね
どうして画面の向こうに人がいると想像できない

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透明人間にささげる詩

透明人間にささげる詩

僕は透明人間
まったく誰からも見えない
教室の黒板の前にいても
とまっている車のボンネットのうえに立っていても
見えやしない
全身ガラスのような透き通った存在

誰にも気づかれなくて嬉しいな
光でさえ僕を無視して素通りしていく

ほら僕はここにいるんだよ
あ、見えないんだね、君
やれやれ、情けないやつだな
透明人間じゃないやつはまるで愚かだな
烏合の衆だよ

でも本当は違う
屈折率があるから
周囲

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オポンチキ・カフェにささげる詩

オポンチキ・カフェにささげる詩

やあ

オポンチキ・カフェへようこそ
ここは桃源郷
あなたを打つ者などありはしない

まずはアイスコーヒーを頼むといい
喉の渇きをいやして、落ち着くのだ
それから僕があなたの話を聞こう

あなたは追いかけられている
帽子とスーツを身につけた、ぶきみな大男に
その者は強く、追跡は執拗だ
でもだいじょうぶ
彼はここに立ち入ることはできない
僕がふしぎな力で護っているから

さあ、このケーキをお食べ

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エシカンテにささげる詩

エシカンテにささげる詩

エシカンテは独身の中年カピバラ
彼は今日もひとりでランチをつくる
野菜も魚も
なんでもフライパンにぶちこんでは炒める
はい、できあがり!
うまいぜ、ちくしょう

ランチ後はダンスを踊る
すばやい足の動き
その腰のひねりのすばらしさ
誰もがエシカンテの踊りに見惚れてたたずむ
「でもあの人、まだ独身なんですってね」

汗をシャワーで流したあとは家に帰る
スプラトゥーンでイキる
バシバシ敵を撃ち殺してイ

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ブロッコリー犬にささげる詩

ブロッコリー犬にささげる詩

ブロッコリー犬はブロッコリーを茹でる
マヨネーズをかける
そして食す

彼らはつねにテーブルマナーに厳しい
ナイフとフォークを持って
一口ごとにブロッコリーを切り分けて食べる
ああ、美味い

ブロッコリー犬はブロッコリーしか食べない
骨を投げても、飛びついて食いつかないし
高級なドッグフードにも興味をしめさない
俺は毎日新鮮なブロッコリーを買いに八百屋に行く
あるいはスーパーマーケットにいく
イオ

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椅子にささげる詩

椅子にささげる詩

フカザミン
そう、不可座民について僕は考える

日本のカーストの最下層

彼らはつねに男であり
座ること、横たわることを許されていない
生まれた時に赤紙がとどいて
彼らは不可座民に任命される
椅子もベッドも彼らには必要ない
ずっと立ってすごすから
座ったり横たわったりすれば
首につけられた爆弾が爆発するから

不可座民は日夜立ちつづける
学校へいったら立ったまま授業を受ける
「先生! やすひろくん

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2022年にささげる詩

2022年にささげる詩

2が3つ並んでいる年
2022年

ロシアがウクライナに侵攻し
日本がワールドカップで強豪国に勝利し
スプラトゥーン3が発売され
僕という人間が自殺しないことに成功した年

とくになんのかわりもない年

遠い地のひとたちが無残な暴力に殺されても
新型コロナの流行が終結しなくても
博衣こよりちゃんがどれだけ可愛くても
僕にはけっきょく関係のないことだ
いっさいは通り過ぎるから
すべての人間は僕とは無

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リートリッドにささげる詩

リートリッドにささげる詩

僕は一日二十時間ぐらい寝ている
ほとんどを夢の中ですごす

夢でドアがノックされる
開くとそこには顔のない女性が立っている
僕は招き
コーヒーを淹れて出す
女性はおいしそうにそれを飲み それから立ち去る
彼女が座っていた椅子には白いたまごが残される

たまごを掌のうえに載せるとそれは輝く
ひびがはいって割れる
出てきたひよこを僕は飼う
でも百日たっても ひよこはまったく大きくならない
掌サイズのま

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モロコフにささげる詩

モロコフにささげる詩

僕は死体泥棒
墓をひっくりかえして死体をぬすむ
新鮮なやつを
女の子のからだを何体も掘り出して もちかえる

気に入った顔だけをきりはなし
大きな胸のどうたいだけをきりはなし
ほっそりした手足だけをきりはなし
僕はそれらを接合して 一体の女の子をつくる
心臓をいれかえて完成だ

起き上がった女の子と僕はあいさつする
はじめまして
彼女は僕を抱きしめて くちびるを押し付けてくる
でも冷たい
死体なの

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スターバックスにささげる詩

スターバックスにささげる詩

あんまり おいしくない
メニューにいろいろ並んでいるけれど
僕が満足しているのは アイスのカフェアメリカーノだけだ

でも どこにでも店があるのがいい
居心地がいいのが 僕には嬉しい
内装や店員の態度がいいというだけで
金を払うにあたいする

スターバックス

僕に生きている意味はない
友達もいないし 恋人もいない
話し相手になってくれる人もいなければ
仕事にやりがいも存在しない

でもスターバッ

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ミールドットにささげる詩

ミールドットにささげる詩

生きていることに意味はない
いいから はやく死にたい

ミールドットはちいさな国だ
でも よく戦争をする
たくさんの人が死に 仕事場へおくられてくる
僕はおくられてきた遺骸のきずをなおす
僕がきずぐちをなでるだけで 死体はきれいになる
おだやかな死に顔
特別な能力

ただし このちからは命のない体にしか効果がない
だから ある意味においては僕はとても役に立つし
ある意味においてはまったく役立たない

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トーツンクーにささげる詩

トーツンクーにささげる詩

霧につつまれた町
トーツンクーを僕はたずねる

そこにはもうひとりの僕がいる
いつもは影法師の役におさまっているそいつも
トーツンクーではバーの椅子に腰かけて 酒をのんでいる
自由になって
おいしい料理に舌鼓をうつ

バーの壁には ひびわれた鏡がかかっている
血で汚れたそれを覗きこむと 中から
もうひとりの僕が出てくる
僕らは「やあ」と挨拶してわかれる
鏡像は売春宿へ
僕はホテルの自室でひとやすみ

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