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逆立ち人間にささげる詩
僕は逆立ち人間
いつでも逆立ちをしているぞ
朝目覚めたら
まずは右手をベッドから出して床に降り立つぞ
お次は左手
ビシっと立ち上がり、足を空中に持ち上げるぞ
家の外に出るときは靴を両手に履くぞ
スタスタと華麗に歩く
公園まで行ったら僕はお友達とサッカーをする
もちろん逆立ちしたまま
僕は手でボールを打つぞ
生きていることに意味はないぞ
逆立ち人間はマイノリティ
どこの店に行っても入店を断られ
オポンチキ・カフェにささげる詩
やあ
オポンチキ・カフェへようこそ
ここは桃源郷
あなたを打つ者などありはしない
まずはアイスコーヒーを頼むといい
喉の渇きをいやして、落ち着くのだ
それから僕があなたの話を聞こう
あなたは追いかけられている
帽子とスーツを身につけた、ぶきみな大男に
その者は強く、追跡は執拗だ
でもだいじょうぶ
彼はここに立ち入ることはできない
僕がふしぎな力で護っているから
さあ、このケーキをお食べ
こ
エシカンテにささげる詩
エシカンテは独身の中年カピバラ
彼は今日もひとりでランチをつくる
野菜も魚も
なんでもフライパンにぶちこんでは炒める
はい、できあがり!
うまいぜ、ちくしょう
ランチ後はダンスを踊る
すばやい足の動き
その腰のひねりのすばらしさ
誰もがエシカンテの踊りに見惚れてたたずむ
「でもあの人、まだ独身なんですってね」
汗をシャワーで流したあとは家に帰る
スプラトゥーンでイキる
バシバシ敵を撃ち殺してイ
モロコフにささげる詩
僕は死体泥棒
墓をひっくりかえして死体をぬすむ
新鮮なやつを
女の子のからだを何体も掘り出して もちかえる
気に入った顔だけをきりはなし
大きな胸のどうたいだけをきりはなし
ほっそりした手足だけをきりはなし
僕はそれらを接合して 一体の女の子をつくる
心臓をいれかえて完成だ
起き上がった女の子と僕はあいさつする
はじめまして
彼女は僕を抱きしめて くちびるを押し付けてくる
でも冷たい
死体なの
ミールドットにささげる詩
生きていることに意味はない
いいから はやく死にたい
ミールドットはちいさな国だ
でも よく戦争をする
たくさんの人が死に 仕事場へおくられてくる
僕はおくられてきた遺骸のきずをなおす
僕がきずぐちをなでるだけで 死体はきれいになる
おだやかな死に顔
特別な能力
ただし このちからは命のない体にしか効果がない
だから ある意味においては僕はとても役に立つし
ある意味においてはまったく役立たない
トーツンクーにささげる詩
霧につつまれた町
トーツンクーを僕はたずねる
そこにはもうひとりの僕がいる
いつもは影法師の役におさまっているそいつも
トーツンクーではバーの椅子に腰かけて 酒をのんでいる
自由になって
おいしい料理に舌鼓をうつ
バーの壁には ひびわれた鏡がかかっている
血で汚れたそれを覗きこむと 中から
もうひとりの僕が出てくる
僕らは「やあ」と挨拶してわかれる
鏡像は売春宿へ
僕はホテルの自室でひとやすみ