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リアル・ミー/ザ・フー Real Me / The Who

高校の時はテニス部に所属していた。
同じ中学から一緒に高校に進学したY間君のお兄さんがそのテニス部に所属していて、彼は高校に入ったらテニス部に入ると決めていたようだった。
ちょうど入学前の中3の時、夕方からアニメの「エースをねらえ!」が毎日放送されていた。再放送だね。
それを観て、「花の高校生活を送るにはテニスだろ!」と勝手に盛り上がっていた自分としてはY間君と一緒に当然のようにテニス部を選んだ。

ところがそのテニス部の練習がきついのなんの。
毎日12km走らされ、ダッシュ100本、腹筋・腕立て400回なんてのはザラで、脱落者もかなり出た。
新入部員が30何人いて、部長は顧問から「半分にしろ」と言われていたらしい。
どうりでキツいわけだ。
当時は人工芝のコートなどある訳もなく、土のコートで毎日泥だらけになって球拾いとトレーニングをしていた。
1年生は打たせてもらえないし。
これはどこも一緒か。

あれ?おかしいな。
テニス王国西高の藤堂さんを目指していたはずだったのに。
Y間君と二人でダブルスを組んで、尾崎・藤堂組のような偉大なペアになるはずだったのに。
お蝶夫人や岡ひろみと仲良くなるはずだったのに。
この体のしんどさは何だ。
部活の休みは元旦だけだ。
ありえないだろ。
でも結構負けず嫌いな性格なので意地でも最後までやり通してやろうと思っていた。

でもバンドもやりたい。
土日の部活が終わってからバンドの練習に行くというハードスケジュール。
しかも体はバキバキだ。

ま、苦しい部活と違ってバンドは楽しいからいいんだけど。

バンドの練習の日はサックスブルーのボタンダウンシャツに紺色のレジメンタルネクタイ、ワインレッドのベスト、グレーのチノパンにローファーを履いて、紺色のダッフルコートを羽織ってギターを背負って行った。

田舎の高校生の精一杯のオシャレだ。
これ一着しかないけど。

弓道部のS村君が「さらば青春の光みたいだ」と言った。
彼はザ・フーの映画を封切りで見ていたのだ。
映画も見てなきゃザ・フーも聴いたことない田舎者の俺には、その時何を言っているのか皆目見当がつかなかったが、今思えば知らないうちにモッズファッションをしていたのだった。

それにしてもS村くんなかなかやるなあ。

ザ・フーはなんだか男臭くてクイーンとか聴いていた俺にはちょっと取っ付きにくいタイプのルックスだった。
髭とかボーボーだし。
特に音楽雑誌を見てるとドラムをぶっ壊したり、ホテルの窓からテレビを投げたとか隣のスティーブ・マックイーンの家にバイクで突っ込んだとかハチャメチャな奇行ぶりだけが取り上げられてて優等生の俺には縁がない音楽だと思っていた。

ザ・フーのカッコ良さに目覚めるのはまだ2~3年の時を待たなければならなかった。
ザ・フーのカッコ良さはある時突然わかるのだ。

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