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【書評】ゾラ『オリヴィエ・ベカイユの死/呪われた家』ゾラは短編が面白い!

ロッシーです。

今回の書評は、エミール・ゾラの『ナンタス』という短編です。

この短編は、光文社古典新訳文庫の『オリヴィエ・ベカイユの死/呪われた家』というゾラの短編集に収められています。

全部で5つの短編がありますが、その中でも私が一番面白かったのは『ナンタス』でした。

『ナンタス』はバルザックの『ゴリオ爺さん』を意識して書かれおり、その続編的作品として読むこともできる思います。おそらくゾラもそれを念頭に書いたのではないかと勝手に想像します。


『ゴリオ爺さん』では、最後に、ラスティニャックがパリを見下ろして

「さあ今度は、おれとお前の勝負だ!」

と叫んで終わります。

さて、そのあとラスティニャックはどうなったのか?

それがこの『ナンタス』という作品に描かれていると捉えると面白く読めるわけです。


※以下、ネタバレがあるのでご注意ください。



あらすじをざっくりと説明すると、以下のとおりです。

  • ナンタスという若者は、成功を求めるあくなき野心をもちパリにやってきた

  • しかし、齢30にして極貧生活であり、いまだ何者にもなっていない自分を苛む生活を送っている

  • 絶望した彼は、「自分のこの身を売ってもいい!」と考える

  • すると、とある老嬢が現れ「重要な仕事」の話があるという

  • その内容は、「裕福な若い女性(しかし、亭主持ちと不倫して妊娠中)と形式的な結婚をしてほしい」という取引の提案だった

  • ナンタスはその取引に応じることにした

  • 10年後、彼は猛烈な努力の結果、将来の財務大臣候補とされるまでに出世した

  • しかし、ナンタスは幸せではなかった。なぜなら、結婚相手であるフラヴィを愛するようになったが、彼女はナンタスのことを一顧だにしなかったから

  • 1年半後、財務大臣になったナンタスは、超人的な仕事をこなすことで気を紛らわしていたが、ナンタスはフラヴィを愛するがあまり、彼女が不倫をしているのではないかと疑うようになる・・・そして・・・

ナンタスは果たして幸せになれるのか?
フラヴィとの関係はどうなるのか?

ラストについてはここではあえて書きませんでした。
書いてくれという希望が多ければ書きます(笑)。


ナンタスのように仕事でいくら出世したとしても、愛されなければ本当の満足は得られないのだろうなと思います。

世界最高の投資家であるウォーレンバフェットはこう言っています。

「どれだけの人に愛されているかで私は成功を測る。」

ウォーレン・バフェット

「成功」という言葉が氾濫していますが、本当の成功とは何なのか?

それを考えるのに本書はうってつけだと思います。

自分が愛されたいと思う人が、自分のことを愛してくれること。

結婚している人は、それを当たり前と思っているかもしれませんが、これってほとんど奇跡に近いことなのかもしれません。

そんなパートナーに恵まれた人も、恵まれていない人も、ナンタスの生きざまから、何か得られるものがあるように思います。

とかく若い頃は、仕事を頑張って、人よりも金と権力を手に入れてやるぜ!

という風に考えがちなものです(今の若い人はどうか知りませんが)。

それはそれでいいと思います。

ただ、そのような価値観を持ちながらも、愛すること、愛されることの大切さを忘れないようにしていきたいなと本書を読んで改めて思いました。


まあ、愛もお金も両方あれば一番良いのですけどね(笑)。

そして勇気も。

「人生で必要なものは、愛と勇気といくらかのお金だ」

チャールズ・チャップリン


他の短編も面白かったので、ぜひ興味のある方は手に取ってみてください。

ゾラといえば長編の『居酒屋』が有名ですが、私は以前チャレンジして玉砕しました(笑)。

今度こそ読んでみようと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。

Thank you for reading!


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