見出し画像

【新疆ウイグル旅行記】#1 鉄路移動&新疆の洗礼

2023年12月27日、西安に降り立った私はコロナ前に訪問した際の記憶を頼りに、鐘楼に向かった。
本シリーズでは35mm単焦点ををぶら下げ、西安から鉄路でトルファン・ウルムチを徘徊した記録を書き連ねる。
第一回の本記事では、西安からトルファンまで2500kmを鉄路で移動した際の出来事、公安警察との攻防についてお伝えする。

カメラはNikon Z6にレンズはNIKKOR Z35mm f/1.8での撮影。このレンズはf1.8という平凡なスペックに対し、価格が10万円と高いため、ネットではやや不評だ。
自分がよく使う画角は35-50mm周辺だ。できることなら35 mmと50mmの単焦点を両方持っていきたい。しかし、旅行というのはどんどん増えていく荷物との闘いである。当然重いレンズを何本も持っていくわけにはいかない。
そこで私は邪道だが、35mmで撮影した画像をトリミングすることにしている。このレンズは画角の隅々まで本当によく映るため、トリミングしても問題の無いように撮影ができる。(結果としてレンズを何本も持っていくことなく、荷物を減らせている。)


旅の出発地、西安

西安鐘楼(漢服をまとった女子が大量に居た)

西安のタクシーから見える夜景は流れるように美しく、コロナ前の記憶通りで安心した。大通りの両脇に立っている街頭や城壁側面にあしらわれた伝統が美しい。
「0度なのにやけに寒いな」鐘楼でタクシーから降りた私はそう思いながら回民街を徘徊した。回民街とは名ばかりで、実質的には漢民族が多く、典型的な中国的観光地である。(以前来た際はビャンビャン麺と鲜榨果汁を楽しんだ。)
屋台で中国式ハンバーガーの肉夾饃を購入し、鐘楼近くのユースホステルにチェックインした。頭がクラっとしたので、体温を測ったところ、38.6度だった。ドミトリーに体温計の音が響き渡り、不穏な雰囲気になった。
(日本出発時に鼻水が出ていたので体温計を持参していた。また、関空でパブロンを買っていた。自分を称えたい。)

西安回民街(22時頃到着したので食事系の店は店じまいムード)

大学時代からシルクロードに憧れ、個人の小規模配信者がアップロードした旅行動画・ブログ記事を漁ってきた。特にこちらの動画は再生回数7万回(2024年3月時点)のうち300回ほどはおそらく私だ。旅情の塊のような動画なのでぜひおすすめしたい。

早朝の西安駅

頓服薬とパブロン(市販薬の中で最も効くと思っている)を飲んで寝たおかげか、翌朝の体温は36.4度まで下がっていた。
西安から先は初めての土地だったが、幸いにも中国は過去に何度も訪問しており生活の勝手がわかっていることに加え、鉄道で1日過ごすうちに具合も良くなるだろうと想定し、旅を続行する判断を下した。

早朝の西安駅(前回工事中だったところの見栄えが改善していた。)

病み上がりの体に初っ端から事件が発生する。靴が無い。確かにユースの下駄箱に収納したはずが、翌朝下駄箱を開けると無くなっていた。(中国では偽物が出回るほど人気の)New Balanceとは言え、ボロボロのスニーカーを盗む人がいるだろうか。誰かが間違えて持っていったのだろう。
新疆で履く予定だったスノーブーツを着用し、宿を出た。靴を2足持っていた自分を褒めたい。

列車の出発時刻は8時半だったが、1時間半ほど前の7時頃には駅に到着した。急いで旅路の食料を購入し、安全検査に向かった。(「旅路の食料」と言っても、車内販売や停車駅の売店でも食料は買えるので、朝ご飯の肉まんと大量の水くらいしか買っていない。)
一般に、中国で鉄道に乗る際には、まず切符の交換をしなくてはならない。これが長蛇の列である。筆者は深圳にて、30分並んだ窓口が担当者の退勤に伴い閉じてしまい、一から並び直しになったことがある。こんな経験があったため、駅には早めに向かうようにしている。
中国人は並ばない」という批判を日本でよく耳にする。しかし中国にいると、「並ぶべき場所がわからない」「並んだ時間が無駄になる」など、並ぶ価値がないと思わされる場面が多い。高鉄のホームには乗車ドアの位置表記がひと昔前までなかったし、上記の様な並んでいた時間が無駄になる経験を踏まえると、並ぶことがアホらしく思えてきた。中国という国で生きていくのに最適化されたのが中国人なのだ。

西安駅前、小吃の店先(肉まんを購入した)

安全検査を終えて、コンコースで暇を潰し、人を掻き分けてプラットホームに降りた。そこには長大編成の客車列車が並んでいた。自分が24時間を共にする列車との対面は、旅行中で最も興奮することの一つである。

Z41次列車(別名シルクロード特快)西安駅にて

硬臥での出来事

生活模様

硬臥は三段ベットが向かい合う形で配置されており、男女関係なく席が割り当てられる。視線が気になるな、そう思うと向かいのお姉さんがジロジロとこちらを見て「外国人吗?」。中国語を勉強しておけばよかったと後悔した。カタコトの中国語で乗り切った。(乗り切れていない)

窓を見る硬臥の乗客(ここでスマホを充電する)

私は下段の寝台を予約していた。24時間をここで過ごしていくうちに寝台は体になじんでくるようになり、自分の城が築かれていくようで心地よかった。

24時間過ごした寝台(読めもしない新聞を買って持ち込んだ)

中国鉄路では二台の寝台車両につき一人の車掌さんが割り当てられていた。私が乗車した車両も含め、半分程は女性車掌。ゴミの回収から掃除まで衛生管理は徹底されていた。
爆発系のショート動画をSNS で何度も見たことがある。中国企業が作るモバイルバッテリーは品質が悪く、何もないのにも関わらず、爆発することがよくあるらしい。このため中国の鉄道はモバイルバッテリーの充電が禁止されている。
車掌はモバイルバッテリーの充電にも目を光らせる。いつも思うがモバイルバッテリーの充電を禁止するのではなく、品質の悪い製品を製造し続ける、自国メーカーを先に規制してほしい

蘭州駅停車時(外人の私にも出発時間を教えてくれた親切な車掌さん)

寝台列車に揺られるうち体調は良くなり、熱は下がった。後は喉の痛みだけ。昼過ぎ列車は蘭州駅に到着。蘭州駅では30分ほど停車時間があるため、多くの人がホームに繰り出し、タバコや、ストレッチなど思い思いに過ごしていた。

蘭州駅の物売りのおばちゃん(カップ麺と水を購入)

食堂車での事件

鉄路移動の楽しみの一つは食事である。
食堂者は編成の端近くに連結されており、どの車両からもアクセスが悪いためか、客はまばらだった。客よりも休憩している乗務員の方が多く、奥の座席には車両列車長の腕章をつけた知的そうな中年男性が1人とそのまわりに5名ほどの乗務員が座っており、公安の腕章をつけた制服警官らしき大男も2名スマホを睨みながらくつろいでいた。
客の少ない車内で少し視線を感じながら、椅子に座ってメニューを見た係員に注文した。
食堂車の座席には花が生けてあり、キレイに手入れされてある。

注文した品が届くのを待っていると、あろうことか列車長と2人の公安警察が「ちょっとこっちへ来い」と話しかけてきた。
私は食堂車の厨房とデッキの間のスペースに連れていかれ、根ほり葉ほりが始まった。降車駅について、「吐鲁番北站」と答えた瞬間、2人の目の色が変わり、根ほり葉ほりが始まった。
職業は何だ?工作許可証は持っているのか?新疆に何をしに来た?
鉄道が好きであること、観光で来たこと、出張ではないことを伝えると、「あまり余計な写真は撮るなよ」との捨て台詞とともに開放された。
席に戻るとすぐに注文していた料理が届き、様子をうかがいながら以下の写真を撮影した。上記の事件後だったものの、美味しかったことを覚えている。

根ほり葉ほりしてくる公安警察+列車長
中国鉄路 朝食セット(お粥と野菜炒め類と万頭、病み上がりの体に染みた)

自分の車両からは遠く、上記事件があったことから、その後食堂車にはいかなかった。昼夜は代わりに自分の寝台で食事をとった。

ウルムチのビール「乌苏啤酒」(病み上がりなので半分残した)

「西安⇒トルファン 鉄路移動編」はここまで。下記に続く。


この記事が参加している募集

ご当地グルメ

旅のフォトアルバム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?