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「サービスデザインの教科書」を読んでみた感想。 part1

こんにちは。長谷川リョウヘイです。

日々サービスデザイナーとして働く中で、「サービスデザインとは何か」を自分の中での咀嚼したり、協業する同僚に理解してもらうことに、結構な労力を使っているなと感じています。

UXデザインとの違いや、具体的にどういう理論、成り立ちで出来ているのかを説明できないと、信頼してサービスデザインを任されることは必然的に少なくなります。そもそもサービスエコシステムや体験を可視化して、サービス開発の共通言語を作ったり、共創生んでいくはずのサービスデザイナーがそれではまずいですよね。

そこで、武山政直氏の「サービスデザインの教科書」を読んで、基礎や成り立ちをしっかり読んで、誰にでも「サービスデザインとは何か」ということを簡潔にわかりやすく説明できるようになろうと考えたので、ついでに書評っぽく読んだ内容と、日々の学びを連結させてみようという記事です。

いくつかのパートに分けて、書評っぽい感想を書いていこうと思います。

G-DロジックとS-Dロジックから読み解ける共創の価値

まず最初に、そもそものサービス開発・提供の視点には2つのロジックがあるのだということを、著者は述べています。

その2つのロジックである、G-Dロジック(グッズ・ドミナント・ロジック)と、S-Dロジック(サービス・ドミナント・ロジック)の違いについては、

G-Dロジックは「企業が価値を生み、それを消費者に与える」

ものであるのに対し、

S-Dロジックは、「消費者が財を使用することによって生み出される価値の方に焦点を当てる」

ものであるという言及があります。
さらに、S-Dロジックの文脈で、こうも武山氏は述べています。


ユーザーが財を使用することで生み出される価値とは…(略)…カフェを例にすると、それはコーヒー1杯がいくらで売れているかではなく、カフェを訪れた客がコーヒーを飲んだ時に感じる味わいやくつろぎ、お洒落なカフェでコーヒーを飲んでいる自分の好ましいイメージの実感といった価値

これは、濱口秀司さんの言う「機能・デザイン・ストーリー」の3レイヤーの話であると理解できます。


まとめてみると下記のような画像になります。
(自己解釈で、濱口さんの言うデザインは、「体験」に置き換えた方がわかりやすいと考えています。また、アイコンも体験とストーリーのアイコンを逆にしています。これについては、また別の回で記事にします。)

サービスデザイン研究 (2)

「機能〜体験」までは、G-Dロジックの文脈でも注目されていた視点だと思います。それは、基本的に機能は企業が定義し、提供するものであり、「機能に乗っかった体験」もある程度までは企業が設計できるものだからです。

しかし、「機能〜ストーリー」においては、企業が定義するのではなく、消費者が一連の流れを評価するものです。そのため、S-Dロジックの範疇と言えます。

そして、 S-Dロジックベースでサービス開発するには、下記の画像のような流れが筋がいいのではと考えています。

サービスデザイン研究 (1)

ユーザーはサービスに触れるとき、「機能→体験→ストーリー」の順番でそのサービスの価値を享受します。機能を触って、それが体験を生み、一連の体験がストーリーを生む。ということです。

しかし、サービスを設計・開発する際(サービスデザイン)の際には、真逆の手法で行う必要があります。ユーザーに感じてほしいストーリーを定義し、そのストーリーに必要な体験を定義し、、といった具合です。

そして、サービスデザイナーはその価値の共創を助ける存在であるべきだということも、ここから読み取れそうです。

生産者のできることは、あくまでそのような使用価値を提案し、際の提供を通じて使用価値の実現に貢献することにとどまる。しかし、その消費者も、その財なくしては使用価値を生み出すことはできず…

つまり、ユーザーの視点も持ち、サービス提供側の視点も持ち、その両者を繋いで共創を生む。ことが、「良い機能、良い体験、良いストーリー」をつくることにつながりそうです。そして、まさにサービスデザイナーがその役割を現代では果たしていくことになりそうです。

逆に言えば、「なぜサービスデザイナーはユーザー視点と、サービス提供側の視点を持ち、共創を生む必要があるのか」ということの深い理解につながりました。それはある意味、サービスデザイナーとは多種多様な音色を指揮する、オーケストラの指揮者のような存在であるべきことを意味するのではないでしょうか。

文字数も2000字を超えそうなので、S-Dロジックへのさらなる感想は、次回に回したいと思います。

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