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いつかのための詩集

140
どこかで酒と出会うための詩集。
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2020.4.25 初夏田園に逝く

2020.4.25 初夏田園に逝く

でんえんに響くプルタブの音、おと

つちをいじる 粗さ 愛で方も知らず

風にまじっている黒ラベル

すりーふぁいぶ フィフティー

同じくらいの背丈を道に並べる

水死体の午後 悠然と

「これだけだよ 飲んでいいのは」

先生はよく笑う

日がかたむく前に見ておくのだ

ホワイトスリーブから

かおるものを

(水死体だけにかおるものを)

からっとした目の前の水田

ぼくたちがうかぶすいでん

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隅の詩

隅の詩

がすんがすんと突進して
何か悟った気になって
日が暮れればヴェールがはげる
若くして中年のお姫様 お日柄よろしゅう
ダンスステップでゆく街並みは
半テンポずれて見える
―どちらが
ととえていればステップなど
今日は酒が美味しいな
生卵が固まる前に
僕はきみの前髪を撫でる
固まったらきみを抱く
―好きかい、好きかい
ミスター・サニイサイドアップ
紳士たちをここに招いてくれ
今日のネオンは一段ときれい

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湖面と、あと残ったなにか

湖面と、あと残ったなにか

卵黄が沈む湖をみて
息を凍らせながらまばたきをする
誰もここにはいない
失われることのないからきしの凪

指先から また 別の
五本揃って そのあとの
黒髪を弦にして
水面に波紋が響き始める

た たた たた た
たたたた た たた
た た た たたた
たた たた たたた

木々が葉を散らす
食いちぎって深緑の中に
新緑をむき出しにする
香りまでもが までもが

たんに反響するのではなく
一音一音

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怪獣の群れ 怪獣の群れ

怪獣の群れ 怪獣の群れ

はあ 怪獣の群れ 3匹の
闇夜に差す光 調光の最低
オレンジ色の寝息を嗅ぐ
それは自分にどこか似ていると

今日は中庭に月が浮かぶ
昨日は雲だけが
影を追う散歩はおわって
砂をいじる きみの手を拾う

殴らない殴り合いの
いや 殴らないということが殴ってくる
そんな日々にあって
バランスの悪い関係だよ 果物をあげるよ

月が 照らされ 照らすのに 飽きる 頃に
ちっこい右手が わたしの脇腹に
  

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くらい街のテクスト

くらい街のテクスト

酒をもって街に溶ける
きみはくらい街のテクスト
はらりと剥がれていく
冷たい大気から 足元から

凍える夜のサワー
しゅわりと夏の記憶
ことん と
軽くくずれる氷の余韻

真紅と濃紺のコントラストが
アスファルトが
ささやかな喉の音が
ローファーのエッジが

コンビニでまちあわせ
青いしあわせ 缶の形
とか詰め込まれていて
まつげは星星のひだ 躯

明滅するくらい街のテクスト
千鳥足を逆手に取り

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殴ってはいません わたしたち

殴ってはいません わたしたち

春の嵐が
ふきあれる夜に
ひっそりと
殴り合いをしています

殴り合いをしています
殴り合いを
髪の先をなでます
殴り合いをしています

夕飯の献立が
ああだろうと こうだろうと
どうでもいいのですが
殴り合いをしています

生協でも 西友でも
構わないのですが
殴り合いをしています
殴り合いをしています

殴った先っぽから
蜜が溢れて
それは夢を見させます
垣間みる先の先の先の

イメージを殴り

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自らと肉に過剰なY氏の一日

自らと肉に過剰なY氏の一日

余ってしまった
おなかの肉を
眺めながら
思い出すことなど

余分がなかった頃
思いは一杯で
まさに 余裕はなく
あなたが大好きでした

余ってしまった
おなかの肉を
眺めながら
思い出すことなど

腹が欲と釣り合うことはなく
歩くのが大変でした
欲は大きくなった
好きだ

余ってしまった
おなかの肉を
眺めながら
思い出すことなど

人生において
用がないと思ってた
XLのパンツを買って
赤面し

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苦しい夕べ きみがかわいくなる

苦しい夕べ きみがかわいくなる

かわいい
メリーゴーラウンドは回り続ける
華やかな都会の空気の中で
同じ香りを吸っているぼくがいる

銀杏並木を通り抜ける
低速で それは低速で
ぎら ぎら ぎら と
吐気になにか混ざる なにか

坂の多い街で
投げ捨てたもの
大きなかばん と
それにつめるものたち 

コップに星空が映る
今日も
きみに見えていて
ぼくには いや 見える よ

かわいい
メリーゴーラウンドは回り続ける
華やかな都

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それならあの木のしたで

それならあの木のしたで

踊りましょう
飲みましょう
忘れましょう
あとに残るのが愛情です

路地を通って帰っていた3月の夜
今日の面接は
マックの端っこのポテトみたいだった
固 塩

夕飯に味噌汁の香りなどはなかった
冷蔵庫は空だった
ぶ うぅううぅ ん
黄色いライトが照らすのは足りない指

もしここが
タイムスリップのディスコだったり
して きょとんとふたり これ
踊るだろうか 踊るだろう

できの悪いソファベッドにね

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ひっそりと春ひっそりと

ひっそりと春ひっそりと

川の流れる ただ川の流れる
花びらをちぎってくれてやろう
どこまでもいけばいい
わたしのいけないところまで

見えない微粒子とふれあいながら
くしゅんとキスをしたのは紫色の夜
ロマンティックのその前に
半額弁当がこよなく光る

アスファルトに星光る
吐息が結晶化して
マフラーを奪う
首元に雲たなびく

ヘッドライトをかわしては
街灯の下で踊る遊び
いつも通らない道を通って
退屈な退屈なアパートに帰

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一寸先は青 いつでも

一寸先は青 いつでも

湧いてくるソリッドな感情
深夜3時の松屋の前で
見た目冷たすぎる頬を触って
みためっぽう暖かかった

花見の場所取りは予定通りで
雪が降ったりおでんを買ったり
芝生芝生芝生芝生
凍る毛先を愛でる若さ

なんだろう
今より少し前の月日は
なにかしながら必死で
別の何かを考えていたり したか?

自動車学校の思い出話
をする あなた
友人 友人 知人 他人
一緒くたに嫌いにくくるぼくは ハートランド

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ジュヴドゥレオゥスィーアンヴァイユ・(ス?・)パケ・オ・ジャポン

ジュヴドゥレオゥスィーアンヴァイユ・(ス?・)パケ・オ・ジャポン

そしたら右手を取るのです
意図はあってもなくてもよくて
晴れた日に両手をかざして
血が香ったなら 今日は吉日

目が覚めて 身体が冷めて
夢から二度覚める青ざめる 空まで
毛布の感触がわざとらしくて
背骨と背骨を重ねて眠る

誰も訪ねないその場所に
?の羽で降り立った
スウェットとジーンズを出して
河川敷へゆく みんながゆく

目玉焼きと
昨晩の残りの惣菜とを
白米で食べて
無印良品へでかけて で

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今夜は雨か それならいいや

今夜は雨か それならいいや

もしも涙が鳥になったなら
今度こそ 届くだろう
長い間 長い間に
沈殿した砂 海の底 いきものの眼

まぶたの裏側には
霧雨が降る 霧雨が降る森
飛翔する 羽 空 青
誰に遠慮することもなく 雨

千切って 千切られるもの
争いごとの裂け目をなぞると
思いの外 流血している
蹴っている君のほうが

さあ ピクニックに行かなくては
水彩画に描かれた城
湖上の
渡れれば決して 虚像ではない

ネオンサ

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オフィスワーカーは思い出すのが仕事なのであった 途方もなく

オフィスワーカーは思い出すのが仕事なのであった 途方もなく

地球のうらがわから
来てくれますか
わらじとかで
焼ける野原で抱擁したいのです

告白します
エアコンもない教室で
ある夏の日
眺めていました 舐めるように

白い袖からでてくる うで
にしたたる
汗の向こうの赤いくちびるを
ごめんなさい

こうしてデスクワークをしていると
砂漠の真ん中の
いいえ
宇宙の真ん中のよう オアシスは

それでもわたし
眺めていたのです
扇風機すらない教室で
髪留めのそ

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