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推敲の本当の価値とは

文章を書き上げたあとに、さらに文章を磨いて仕上げていく作業を「推敲」と呼びます。

推敲とは、いわば文章を自分というフィルターで「ろ過」する作業です。

推敲をまったくしていない書きっぱなしの文章には、不純物が混じっています。

そのため、書いてあることがまっすぐ伝わらず、わかるような、わからないような中途半端な伝わり方をしてしまう。

推敲しきれていないということは、書き手自身が書きたいことを本当の意味で認識できていないということなので、それ相応の伝わり方をするといったほうが正確でしょうか。

「書く人」は、推敲することによって自分のフィルターで何度も「ろ過」した透明な水を目にすることができる。それによって、自分が表現したかったことをはっきり認識できるようになる。

推敲という負荷のかかるプロセスを経ることによって、書いた人自身が

「ああ、私が言いたかったのは こういうことだったのか!」
「私があのときこう感じたのは、これを大切にしていたからか!」

と、自分自身を発見することができるのです。

文章を書く前に「ここに着地するだろうな」と思っていたゴールと、まったく違うゴールにたどり着くこともあるでしょう。

そんな意外な発見も、推敲がもたらしてくれるプレゼントです。

あらゆる方向から吟味し、推敲された文章は、不純物のない透明な水のように読む人の頭と心にすーっと溶け込みます。

「ああ、この文章は読みやすいな」
「書いてあることがまっすぐ心に伝わってくるな」

そういう文章は、書き手が自分と対峙して、何度も何度も文章を「ろ過」し、純度を高めた結果なのだと思います(得られるものは透明な水なので、そこに至るまでの苦労は見えにくいですが)。

私が文章を推敲するときのプロセス

「推敲」とひと言で言っても、人によって具体的なやり方はきっと違いますよね。

一般化されているものではないので、私が実際に文章を書くプロセスを基にして言語化にトライしてみます。

私の場合、まず「あ、これを書こう」というテーマがパッと頭に浮かびます。

この段階では文章になっていません。

感覚を伴ったイメージのようなもので、論理構成もされていない状態です。

とりあえず、「書くスイッチが入った」状態といいますか。

そんな感じで書くスイッチが入ったら、次に「浮かんだイメージを文章に変換する」プロセスに入ります。

「目に見えないイメージ」を「目に見える文章」にするにあたり、部品として適切な言葉を自分の語彙の中からピックアップし、組み合わせていきます。

この段階では、とにかく「言葉にして外に出す」ことを心がけています。

イメージと合致していなくても、カオス状態でも気にしない、気にしない!(言葉にする時点ですでに何かを捨てているので、結局100%合致することはない)

文章を組み立てるための部品になりそうな言葉や文章の断片を、なるべくたくさんそろえます。

そして、ある程度部品が出そろったなと思ったら、それらをさまざまなパターンで組み合わせながら、文章の流れをつくっていきます。

言葉の組み合わせ方、どちらの文章を先にするか、後にするかによって、読んだときの感情の流れやリズムが変わってきます。

ああでもない、こうでもないと言葉のブロックを組み替えながら、「自分のイメージや感覚にフィットするかどうか」を精査していきます。

違和感のある言葉を見つけては捨て、流れが悪いところに余計な言葉を見つけては捨て、誇張している部分を見つけては捨て、自分の感覚、リズムにフィットするよう整えていきます。

こうやって捨てる作業をしていくと、「加えたほうがいいな」という言葉や文章が見えてくるので、それらを加えながらさらにブラッシュアップしていきます。

最終的には、それこそ一文字単位で細かく捨て、細かく加える。

このプロセスが、私にとっての「推敲」です。
(編集者として原稿を編集する際も、かなり綿密に推敲を行います)

自分の文章にダメ出しをしながら進めるので負荷がかかりますし、忍耐力も必要です。

文章を自分から引きはがし、客観的に見る「メタ的な視点」も必要になります(これがまた難易度高い)。

ときに投げ出したくなりますし、「これでいいや」と、できたことにしたくなります。

しかし、ここで「どこまで踏ん張れるか」が勝負です(編集者はこのあたりのサポートをしているわけですが)。

思えば、人生何事も負荷がかかることのほうが、結果的に自分の血肉になっていたりしますよね。

文章を書くこと、推敲すること、書き続けることは大変ではありますが、最終的には自分のためになります。

負荷がかかるからこそ恩恵も大きい。
文章を書いて発信すると、何より自分のためになる。

地道で根気のいる作業ですが、一緒に続けていきましょうね!

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